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第二章 色々やってみよう

王子様が不機嫌な理由がわかった件

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その後も騎士団宿舎で、一般人が入って差し障りない場所、食堂や休憩室など見せて貰った。

妖術の事は指導者を探してくれるそうなので、お任せした。

しかしまぁ妖術ねぇ……。
魔物が使うのが魔法だとか言ってたけど、別に分けなくても良くない?
と思うのは、この世界の住民じゃないからなのか、字面の胡散臭さを感じるせいなのか……。


*****


その夜も東館で王家の皆さんと一緒に夕食。
今日は王様も一緒だ。

食後の一服タイムに王様と話をする。

「スイから聞いたが、妖術を使いこなしたいそうだな」
「使いこなすと言いますか、妖術など使った事有りません。
元の世界では妖術や魔法などありませんでしたから、どう言ったものかも分かりませんので、一から教えていただければなと」

「英雄なのに妖術も使えないのか」
会話を聞いていたカイ王子が、吐き捨てる様に小声で呟いた。

僕は何だか嫌われてる様だなぁ、と思っただけだけど、王子の隣に座っていた王妃様は嗜める様に
「なんて事を言っているのですか、謝りなさい」
と少し厳しい声を出す。

「でも母様、英雄なのに妖術も使えないなど聞いた事有りません!
大体祝福を分けて貰う為に召喚したのに、妖精を説得も出来ないなんて……」

「カイ!」

僕はルル姫から王様の寿命を延ばす為に……と言う召喚理由を聞いていたから、禁呪まで使ったのに思うように行かなかった事が腹立たしいのかなとか、子供だからな、など軽く聞き流していたんだけど、王様は怒気を含んだ声でカイ王子の言葉を止めた。

「…お前が私の為を思って禁呪を使った事は聞いた。
しかし妖精の祝福とは、頼んだからと言って、どうなるものでは無いとルルから聞かなかったか?

しかもウチ様には一切関係ない事なのに、お前……いや私達家族の為に、元の世界にも戻れなくなったのだぞ。
戻れないから、家族にも二度と会えないのだぞ。
お前がある日突然、私達家族から引き離されたらどう思う?

いつも言っているだろう、相手の立場に立って物事は考えろと」

王様の言葉を聞き王子が俯く。
まだ小学校低学年程の子供には難しいのではないかとは思うけど、家庭の教育はそれぞれだし、将来国王を継ぐ事を考えれば、小さいからと、なあなあで済ませられないんだろうな。

「…………ませ……」
「聞こえないぞ」
小さく漏らした王子の言葉に王様がダメ出しをする。
すると王子はキッと僕を睨んで
「申し訳ありませんでした!」

誤っていると言うより、言わせられた感が勝ってるけど、自発的に謝ると言う事は王様の話を理解したと言う事だよな。

頭では理解しても、心では納得できないのであろうけど、子供なんだし……と僕は謝罪を受け入れようとしたのに、今度はルル姫が声を上げる。

「お兄様、それは謝ったと言いません!
言葉だけでは謝罪になりません!」

おおっと、結構ハッキリ言うなぁ。
もっとおっとりしてるかと思ってた。

「…ルル……」
「私もそう思いますわね」
「母様……」
女性二人に責めらせたカイ王子はキュッと唇噛む。

居たたまれなくなって口を挟んでしまったのは仕方ないよね。

「王妃様、ルル姫様、僕はカイ王子の謝罪を受け入れます。
きっと王子も分かっていても、心が追いつかないだけかと思われます。

それでも王子が、自分から謝った事を尊重したいと思います。
……子供の教育に口を出してしまい、申し訳ありません」
最後は王様に向かっての言葉だ。

僕の言い分に王妃様とルル姫は、顔を見合わせてにっこり微笑んだ。
頭の上のケモミミがピクピクしている。

王様も
「ウチ様がそれで良いのなら、この話は終わりにしましょう」
と話が纏まりかけた時、カイ王子、今度は王妃様とルル姫に向かって顔を赤くしながら、爆弾投下。

「母様、ルル!何故お二人はこの方に好意を持っているのですか!」

はい⁈何ですって⁈
言われた二人は顔を少し赤らめてそっぽを向く。
いやいやいやいや、何ですかその反応⁈
何?修羅場突入?

「お二人共ミミがずっとこの方を意識しています!」

ミミ?

確かにご飯の時も、一服中の今も、ミミはこちらに向いているけど、それがなに?
言葉を聞き漏らさない為とかじゃないの?

カイ王子の言ってる事も分からないし、何かに巻き込まれているのに、自分には身に覚えが無いしで対応が分からず、オロオロと王様を見ると、王様は苦笑いを浮かべていた。

「カイ、そこは仕方ない事らしいから大目に見てやれ」
「何を仰っているのですか⁈
母様達が他の男に興味を持っているのですよ⁈」
え?本当に何を仰っているのですか、王様。

「マキやスイから報告を受けておる。
どうも魔物の血がウチ様に反応するそうなのだから、レニ達が不貞を働いているわけでは無い」
不貞……って…、いやそれより魔物の血が反応?

王様の話によると、王妃様達のミミが僕に意識を向けてしまうのも、皆がやたら抱っこしたがるのも、厩舎で馬が寄って来たり、妖精による過剰祝福も、全て僕の体質によるものだった。

……僕の体質…そう、動物にやたらめったら好かれる、と言う体質に反応してしまうそうなのだ。

………え?と言う事は、これからも続くのか?抱っこ塗れ。

しかも体質だとすると、幼児体形の時は未だしも、身体が育っても……?
男女関係なく、魔物やハーフの人達から………………怖っ‼︎



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