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第二章 色々やってみよう

騎士団を訪ねてみた

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騎士団の宿舎に併設された鍛錬場には数人の騎士が鍛錬中だ。
かなり広いスペースだ。

しかしこうして見てみると、城に厩舎、放牧場、騎士団宿舎、鍛錬場と城のスペースはかなり広い。
城壁で囲まれている範囲だけでどれくらいあるんだろう。

この広大な場所を守ってるのが騎士団か。
端から端まで、歩くだけでも大変そう。

そしてその外は、更に広い重臣達の居住区と城下町。

戦争が無いとは言え、治安の為に見回ったりする軍人さんも大変だ。
元の世界では治安とか意識した事無いけど、見知らぬ世界だと考えちゃうよな。

だってここって、魔獣とか言う物騒な生き物や、猛獣や野生動物とか居るんだろ?
本来の姿でも争い事は苦手なのに、こんな幼児体形だと、100%守ってもらわないといけないんだよな。

……今からでも自己防衛に、最低限の護身術くらい身につけた方が良いかなぁ。

などなど鍛錬している騎士を見ながら考えていると、こちらに気づいた一人が寄って来た。
あの黒髪は確か、騎士団長だったっけ。

「こんにちは、召喚された方。
騎士団の見学ですか?」
膝をつき目線を合わせてくれた。

「こんにちは。
僕の事はウチと呼んでください。
本名は東堂内柊一郎ですけど、こちらでは長い名前はおかしいそうなので」
「ウチ様ですか。
私はオダ・ラト・ネイです。
父のオダ・モト・ラトが軍務大臣をさせて頂いている関係で、若輩の身ながら騎士団長をさせて頂いております」

優雅に頭を下げる団長さん。
小田かな?尾田かな?それとも……。

「ご謙遜を、コネなどで騎士団の団長になれるはずないでしょう。
血筋も有るでしょうけど、実力ですからね」
前半は団長に向けて、後半は僕に向かってスイが言う。

「実力で言うならドラゴンハーフの貴方こそ、何故騎士団に入らないのか。
団員は皆不思議がっていますよ」
「私は祖父の跡継ぎですからね、何せ父が……」

スイの言葉に、「ああ」と苦笑する団長。

今サラッとドラゴンハーフとか言わなかったか?
何それ、カッコよくないか?
それと、父親に何か問題も有るのか?

聞きたいけど失礼だよなぁ。

「フフフ、知りたそうな顔をされてますね。
別に隠している事では無いのですよ。
私の父は祖父の跡を継ぐのを嫌い、旅人になりました。
その旅の途中で出会ったドラゴンとの間に出来たのが私です」

角を見れば分かるでしょう?と言われたけど、ドラゴンの角なんて知らないし、ドラゴンってデカイだろうに、人とドラゴンってサイズ的にどうよ?とか旅人って何?とかとかとか……
突っ込みたい事が増える一方だよ。

「ドラゴンの血統は強いのに、執事など宝の持ち腐れですよね?」
団長が言うけど、知らないし。
でもイメージ的にはドラゴンの血が流れてるって聞くと強いんだろうな、とは思う。

「私など、折角の母親の血は薄くて人を操る力も弱いですし、リイは逆に母親の血が強すぎて落ち着きが無いですからね」
「母親の血ですか?」
「ええ、私の母親は吸血鬼です。
リイ…ウチ様のご案内をした金髪のエル・スウ・リイは狼男と狗神のハーフでして、犬の血が強く落ち着きが無いのですよ」

えー?落ち着きがないなんて、そんな風に見えなかったけどなぁ。
それに騎士団長は鳥の魔物って聞いてたのに、吸血鬼って……コウモリって言いたかったのか?
吸血鬼とコウモリって、一緒にして良いのか?

などと頭の中で考えながら話を聞く。

「そうですね。特に夜になると…」
スイも大きく頷いている。
それは是非夜に会ってみたいな。

あ、そうだ、さっき思いついた事尋ねてみよう。

「あの、多少の護身術を身に付けたいと思うのですが、お願いできますか?
それとも、そう言う事は軍の方の方に頼むのが良いですか?」
僕の言葉に二人の視線が集まる。

「護身術ですか?そんなにお小さいのに?」

スイは言うけど、とにかく多少なりとも力をつけて、この状態を打破したい……この抱っこ状態を…。
そう、まだ抱っこされたままなんだよねぇ…。

視線を合わせて会話が出来るのは良いけど、このまま抱っこがデフォになるのは避けたい。
なので全然一人で大丈夫だと周りに分かってもらうためにも体力付けたいのだ。

「それは軍より騎士団の方が良いと思いますよ。
軍は大所帯ですし、一応身元は確認していますけど、どういった経歴の持ち主かはっきりしない方も多々居ますから」

具体的にどんなのだろう……機会があれば聞いても良いかな。

「でもまだ身体が出来ていないので、身を守るのなら、まずは妖術から覚えられるのはいかがですか?」

団長が提案してきたけど、妖術って魔法みたいなもんなんだよな。

【魔法】って聞くと【ファンタジー】って感じだけど、【妖術】って言われるとなんとなく怪しく感じてくる。
こう……蝦蟇の上で巻物咥えてるとか、水の上を走るとか……そんなイメージが…………。

「それって誰でも使えるもんなんですか?」
胡散臭げだなぁ、と言うのが滲み出てたのか、スイが
「一度説明したと思いますが、妖精の祝福を受ける事で妖精の力が使えますから、ウチ様だとほぼ全ての妖術が使えますよ」
聞いてがなかったのか、という空気が滲み出てるよ、スイさん。

なるほど、【妖しい術】ではなくて、妖精の力を借りる【妖精の術】だから、略して【妖術】なのか。

略することによって、ファンタジー感が怪しく感じる不思議さよ。




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