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第一章 異世界だねぇ
会議室へ乱入(他力)
しおりを挟む「あれ?起きて大丈夫なの?
……ってか何それ?」
手にした毛布を落とし、震える指でこちらを指差すマキ。
キャーキャー言いながら、周りに居た妖精達は窓から外に出て行く。
残ったのは女王と王だけだ。
「え?さっきの全部妖精?
あんなにいっぱいの?
一度にあんなに沢山居るの見た事無いよ。
それに残りの二匹他のより明らかに大きいよね」
半ばパニックになりながら、マキが近寄ってくる。
「え?大きさって、他の子達と変わらないよね?」
左右の肩の二人を見ても、先程まで居た他の妖精と同じく五センチサイズだ。
『この人不敬!二匹とか言うの不敬!』
『酷い…虫とか動物みたいに、二匹とか……』
女王はプリプリ怒って、王はまた泣き出す。
マキはえっ?て顔でこちらを見てる。
「それと匹呼びは、ちょっと失礼かもよ。
いくら小さくても人型なんだから」
「………………ええええーーー⁉︎」
大きな声を出したと思ったら、二の腕を掴まれてガクガクと揺すられた。
「貴方は彼らが、ひ、人型に見えるのですか⁉︎」
「見えるも何も……ちっちゃいお姉ちゃんと、お兄ちゃんだよね?羽の付いた」
左右を見て視線をマキに戻すと、目をひん剥いて、顎が外れるくらい大きな口を開けている。
そこそこ美形なのに台無しだよ。
『あのね、見えないのよ』
『人や半魔には光にしか見えないよ。
完全なる魔族か、祝福四つ以上無いと見えないけど、知らなかったのかな?』
『それか私達の、どちらかの祝福が有る人しか見えないの』
「え?見えてなかったのか?」
「見えませんよ!
純粋なる魔物以外で、妖精の姿を見た人なんて居ないんですから!
唯一の例外が初代だけなんですから!」
なんだかキレているマキ。
「なんでも僕の場合祝福が沢山有るのと、女王と王の祝福が有るから見えるみたいだね」
僕の言葉にマキが凍り付いたように動きを止めた。
「あれ?どうしたの?ちょっと大丈夫?」
ソファーから降りて、今度はこちらがマキを揺すってみる。
まぁ、身長差が有るから脚にしがみついてるみたいな感じになってしまってるけどね。
はっと我に返ったマキの行動に度肝を抜かれた。
*****
なんと彼は無言で俺を抱き上げ、走って部屋を出たのだ。
行き交う人が驚いても、声をかけても無視して走り、辿り着いたのは会議室?
大きなテーブルをグルリと椅子が取り囲み、そこに先程居た一部の人が座って居たけど、何の先触れもなく勢い良く扉を開けたマキに、皆の視線が集まる。
無論抱っこされてる僕も注目の的だ。
爺さんに抱っこされるおっさんか……年相応の姿ならシュールだな。
喜劇通り越してホラーだよ。
などと現実逃避している間に、無言のままのマキは王様の近くに歩み寄り、僕を降ろして跪く。
どうして良いのかわからない僕は棒立ちだ。
「どうしたマキ、まだ会議中だし、礼儀がなってないぞ」
先程も王様の近くに居た、白髪混じりの黒髪の男性が声をあげる。
黒髪って事はらこの人も英雄の血筋か。
「恐れ入ります、至急お伝えしたき事が……。
彼は…妖精の姿が見えているそうです」
ああ、またどよめかれた。
何度目だ?
「いや、でもあり得ない事では無いだろう?
確か初代様も見えていた事から、一定数以上の祝福が有れば姿は見えるのではと、研究者が言ってたと思うが?」
「勿論存じております。
しかし、今両肩に居る妖精、は妖精王と女王だそうです」
騒めきが大きくなる。
「確かに…他の妖精より光が大きい様だが……何故王と女王だと分かる」
問いかける声に、マキはゴクリと唾を飲み込んで声を落とし「実は……」と話し出す。
椅子に座って居る人達も、釣られて唾を飲み、口を閉じて言葉の続きを待つ。
「……彼は妖精と…会話が出来るそうです」
「何だって!」「あり得ない!」「そんな馬鹿な事!」
あちらこちらから、叫びに似た大声が上がる。
殆どの人が立ち上がり、こちらに詰め寄って来た……怖っ!
「静かに!皆落ち着くのだ」
今にも掴みかからんとして居た人達は、王様の一声でピタリと止まる。
おお、まさに鶴の一声、などちょっと逃避してみる。
「そなた、妖精の姿が見えるとは誠のことか?
ならどういう風に見える?」
王様に聞かれて見たままを答える。
玉虫色と言うか、七色に輝く頭髪の夫婦。
女王は蝶の羽、王はトンボの羽で、どちらも透明で、髪と同じく七色に輝いて居る。
瞳は小さくて見にくいけど、金色だと伝えると、伝承の通りだと騒めき再び。
「成る程、本当に姿が見えて居るのだな。
それは確かにあり得ない事では無い。
魔物も姿を見る事が出来るからな。
しかし本当に会話が出来るのか?
そんな話は魔物でも聞いたこと無いぞ」
王様に言われて、こちらがビックリだ。
人も魔物も会話が出来ないってマジか?
『マジなのよ。
こっちは何言ってるか分かるのに、だーれもこっちの話は分かんないの。
不思議なのよね』
『祝福してるのに通じないって、ガッカリだよね』
女王の言葉に、頷きながら王も言う。
「へぇ、こっちの言葉は完全に伝わるんだ。
でも祝福受けたら繋がるのに、会話出来ないって不思議だね」
『でしょう。
言いたい事の雰囲気は伝わるみたいなの。
でも会話は出来ないの。
だからたまに、ちんぷんかんぷんな事起きるの』
「ああ、まぁ会話しなきゃあ細かいニュアンス通じないだろうね」
そうそうと大きく頷く二人。
いつのまにか静かになって居た周囲に気づかず会話してたら、とうとう王様迄立ち上がって近づいて来た。
「おおお、本当に会話をしているのだな。
これは奇跡か……」
な…何だか大袈裟な事になってないか?
「これは是非国の為、いや全世界の為に、妖精との橋渡し役として勤めて頂けないだろうか。
頼む」
王様が僕の手をガシッと握って、頭まで下げるもんだから、周りの重臣達は大絶叫。
余りにも煩いので妖精夫婦は『またあとでね』と避難して行った。
僕も逃げ出したいよ……。
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