上 下
7 / 161
第一章 異世界だねぇ

シッポと寿命と金眼のゴマちゃん

しおりを挟む

「し……シッポーーー⁉︎」


腰に巻き付いていた、五センチ幅ほどの白い紐がスルリと落ちたかと思うと、それは意志を持ってゆるりと動く。

「え?……は?…尻尾?」

動物の耳がある事だけでも有りえなさ過ぎるのに、この上尻尾まで?
きっとここで喜ぶ人は居るのだろうけど、あいにく僕は喜べない。

動物の耳や尻尾は、動物に付いていてこそだ。

後輩の読んでいた漫画には、そんな絵も有ったけど、それは所詮漫画の話。
現実に、目の前に居るのと訳が違う。

よく『バケモノ』と叫ばなかったと自分を褒めてやりたい。

しかもこの尻尾……爬虫類だよな…。
「…………へぇ、成る程、耳や尻尾の無い世界の人って、こんな反応するんだ」

マキの声に尻尾から目を離して見ると、その表情は、悪戯が成功した子供の様で、その右手は腰の剣にかかって居る……。

え?剣に手がかかってるよ?

「ごめんごめん、記録によると、始めて俺たちをを見た地球人の反応って、殆どが「バケモノ」って言って襲い掛かってくるそうだから、襲われたら反撃させて貰おうと思ってたんだ。
けど凄いね。
叫びはしたけど、その後の言葉も行動も意志で抑えたでしょ。
見た目ちっちゃな子供だけど結構大人?」

剣から手を離したマキが、面白そうに聞いてくる。

「もうすぐ34才になる」
「うわっ、結構オッサン?見た目は幼児なオッサン?
因みに俺は61歳」

……爺さんにオッサン呼ばわりされた…。

「61歳と言っても祝福三つだしハーフだから、二十歳前ってとこかな?
こちらでは寿命まちまちだから、見た目年齢がそのまま一般年齢だと思ってね。
そうすると、あなたの場合見た目5才として、平均寿命の80歳まで75年、祝福が少なくて100だとして7500生きるって事?
あれ?合ってるのかな?
数が多すぎて訳わかんないや。
でも7500年って………うっわー……」

いや待て!こっちが「うっわー」だよ!
どうすんだよ、そんなに長生きして!
ってちょっと待て、話が明後日の方向へ行ってるぞ!

「寿命は置いといて尻尾だよ!」
そうそう、と軽く言うマキ。
「君は」
「マキかニトで良いよ」
「じゃあマキは耳は普通の人の耳だよな。
でも尻尾が有って爬虫類の尻尾だから」
「そう、母親が蛇系の魔物。
耳に特徴の無い魔物の耳は、普通の人と同じだね。
近衛騎士の団長も、母親鳥系だから羽は有るけど、ケモミミは付いてないね」
「羽?そんなの付いてる奴居たか?」

謁見の間にケモミミ付いてる人は複数居たけど、羽付きは居なかった様な。

「種族に寄るけど、仕組みは知らないけど、羽ってしまえるんだよ。
背中にワサワサ有るのって邪魔だからね。
でも羽だけしまえるって、ズルイよね」
いや、ズルイとか言われても……。

「だから普通の人と見分けるには、耳や尻尾だけ。
見た目的にはそれくらいしか変わらないよ」
いや、耳や尻尾が付いてる時点で全然違うと思うけど。

「そんでもって寿命事だけど、大体のところ人が70~80年、魔物が200~300年、ハーフは寿命も親の魔物の半分、祝福を受けた人は受けた数だけ伸びるって感じかな。

ハーフで祝福を受けたらまた伸びる、つまりハーフで英雄家系で祝福三つ持ちの僕は400歳くらいまで生きるのかな」

400歳迄生きるなら、60過ぎても確かに若造か?
しかし僕自身は何千年も生きるって、何その地獄。

「後、祝福を受けた人の見分け方も有るんだけど、普通は中々気づきにくいんだ。
だけど、ココ」

言いながら自分の目を指し、顔を近づけて来る……近いよ…。

「分かるかな?瞳の中に金が有るでしょ?」
言われてよくよく見てみると、彼の緑色の瞳の中に金が散っている。
確かに近づけば分かるけど、普通こんなに近くで人の瞳を覗き込むことなんてないから、気づかないよな。

「この金は『妖精の光』って呼ばれていて、祝福の数が多いと金も増えるんだ。
だから祝福一つだと殆ど分からない。
特に生まれた時に、親の知らない間に祝福受けた場合、成長が遅くて、瞳をよく見て見たら金が有ったって事も良くあるんだ」
親の知らぬ間って…やっぱり呪いなんじゃあ………。

「だから君みたいだと『英雄召喚された、スッゲー祝福受けた人』ってのが一目でバレちゃうワケだね」


「…………は?…」


黒髪だから、英雄召喚されたってのが人に知られるのは分かる。
でも何故祝福迄……って……!

「か…鏡!鏡どこだ?」

「そっちのクローゼットの扉の内側に姿見有るよ」

指された方に走り寄り、クローゼットの扉を勢いよく開けて、自分の姿を映し出す……。

この世界に来て始めで見た自分の姿は、アルバムの中で見た幼稚園の頃のままだった。

大人になってからは『ボーリングの玉みたいだから、玉ちゃんだね』と呼ばれて居た丸顔も、子供の頃は『ゴマアザラシの赤ちゃんみたいだからゴマちゃん』と渾名を付けられていた頃そのままだ。

唯一の違いは、黒に近い濃いめの茶色だった瞳の色が………金色だ…。
人の瞳の色でこんなの見た事ないし、正直言って…

「気持ち悪い……」

自分の顔に、猫の瞳をさでも埋め込んだ様な違和感……。
ゴマアザラシの赤ちゃんの瞳は黒だから可愛いんで有って、金色だと異形感が拭えない。

「え?何が気持ち悪いの?
透明感有ってとても綺麗だと思うけど」

これは生まれ育った環境の差か?見慣れていないからだけなのか?
あまり見ていたくなくて、扉を閉じた。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【講談社大賞受賞作品】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?

たんたん
ファンタジー
講談社マンガ原作賞 大賞作品🏆✨ド定番を読み飽きた方にお勧め ⚠️R15作品⚠️ ⚠️過激表現は付けていませんが、エロティックな結構きわどいシーンがチラホラある作品なので15歳以下の方は読まないでください。 15%の復讐劇、5%の笑い、10%のミステリー、70%のキュンキュン💖を詰め込みました。 【あらすじ】 結婚式当日に何者かに殺された主人公は、赤ちゃんになっていた。 早く大きくなって復讐したいと願っていた矢先に―― 謎のコスプレ集団に誘拐されてしまう。 でも誘拐された先は主人公の知る普通の世界ではなく、魔法が存在する世界が広がっていた。 全寮制の魔法学園に強制入学させられてしまった主人公は、父からの「この学園は表向きは魔法使いを育てる学校で、本来の目的は……」というメッセージに頭を悩ます。 本来の目的を知ることも、学園から脱出することも出来ない。 そんな中で、愛や恋を知らない主人公が成長して行くお話です。 【登場人物】 ・タチバナ・シエル 黒髪 黒目 可愛くて美人 復讐に燃える 学園最弱の魔力の持ち主 ・カミヅキ・ディオン 白銀 切れ長の蒼い目 この世のものとは思えない程の美しい容姿の持ち主 人を簡単に殺しそう、というか既に殺してそう シエルが一番会いたくない奴 ・サオトメ・ロレンツォ ふわっとしたアッシュブラウンの髪に、色素薄めの茶色い目 名家の一人息子 100年に1人の凄い魔力の持ち主 中性的で美しい美貌の持ち主で、学園のアイドル的存在 誰にでも優しい ・ジョウガサキ・アラン 突然転校してきた大阪弁の派手で女慣れしてるチャラいイケメン 元T大の医学部生 見た目とは想像できない程にIQが高く賢い ・今世のシエルの両親 優しく、たっぷりと愛情を与えてくれる親の鏡のような人達 異常な程にシエルの長生きを願う 本棚追加してもらえるとやる気がみなぎります🤗 表紙はpixivにあったフリーアイコンになります。 - ̗̀ 📢💭お知らせ 完結前に加筆修正します。こちらは加筆修正前の作品です。 狂愛 すれ違い 両片想い 両片思い

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

万分の一の確率でパートナーが見つかるって、そんな事あるのか?

Gai
ファンタジー
鉄柱が頭にぶつかって死んでしまった少年は神様からもう異世界へ転生させて貰う。 貴族の四男として生まれ変わった少年、ライルは属性魔法の適性が全くなかった。 貴族として生まれた子にとっては珍しいケースであり、ラガスは周りから憐みの目で見られる事が多かった。 ただ、ライルには属性魔法なんて比べものにならない魔法を持っていた。 「はぁーー・・・・・・属性魔法を持っている、それってそんなに凄い事なのか?」 基本気だるげなライルは基本目立ちたくはないが、売られた値段は良い値で買う男。 さてさて、プライドをへし折られる犠牲者はどれだけ出るのか・・・・・・ タイトルに書いてあるパートナーは序盤にはあまり出てきません。

みそっかす銀狐(シルバーフォックス)、家族を探す旅に出る

伽羅
ファンタジー
三つ子で生まれた銀狐の獣人シリル。一人だけ体が小さく人型に変化しても赤ん坊のままだった。 それでも親子で仲良く暮らしていた獣人の里が人間に襲撃される。 兄達を助ける為に囮になったシリルは逃げる途中で崖から川に転落して流されてしまう。 何とか一命を取り留めたシリルは家族を探す旅に出るのだった…。

学園首席の私は魔力を奪われて婚約破棄されたけど、借り物の魔力でいつまで調子に乗っているつもり?

今川幸乃
ファンタジー
下級貴族の生まれながら魔法の練習に励み、貴族の子女が集まるデルフィーラ学園に首席入学を果たしたレミリア。 しかし進級試験の際に彼女の実力を嫉妬したシルヴィアの呪いで魔力を奪われ、婚約者であったオルクには婚約破棄されてしまう。 が、そんな彼女を助けてくれたのはアルフというミステリアスなクラスメイトであった。 レミリアはアルフとともに呪いを解き、シルヴィアへの復讐を行うことを決意する。 レミリアの魔力を奪ったシルヴィアは調子に乗っていたが、全校生徒の前で魔法を披露する際に魔力を奪い返され、醜態を晒すことになってしまう。 ※3/6~ プチ改稿中

妹しか愛していない母親への仕返しに「わたくしはお母様が男に無理矢理に犯されてできた子」だと言ってやった。

ラララキヲ
ファンタジー
「貴女は次期当主なのだから」  そう言われて長女のアリーチェは育った。どれだけ寂しくてもどれだけツラくても、自分がこのエルカダ侯爵家を継がなければいけないのだからと我慢して頑張った。  長女と違って次女のルナリアは自由に育てられた。両親に愛され、勉強だって無理してしなくてもいいと甘やかされていた。  アリーチェはそれを羨ましいと思ったが、自分が長女で次期当主だから仕方がないと納得していて我慢した。  しかしアリーチェが18歳の時。  アリーチェの婚約者と恋仲になったルナリアを、両親は許し、二人を祝福しながら『次期当主をルナリアにする』と言い出したのだ。  それにはもうアリーチェは我慢ができなかった。  父は元々自分たち(子供)には無関心で、アリーチェに厳し過ぎる教育をしてきたのは母親だった。『次期当主だから』とあんなに言ってきた癖に、それを簡単に覆した母親をアリーチェは許せなかった。  そして両親はアリーチェを次期当主から下ろしておいて、アリーチェをルナリアの補佐に付けようとした。  そのどこまてもアリーチェの人格を否定する考え方にアリーチェの心は死んだ。  ──自分を愛してくれないならこちらもあなたたちを愛さない──  アリーチェは行動を起こした。  もうあなたたちに情はない。   ───── ◇これは『ざまぁ』の話です。 ◇テンプレ [妹贔屓母] ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるかも。 ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング〔2位〕(4/19)☆ファンタジーランキング〔1位〕☆入り、ありがとうございます!!

妖精族を統べる者

暇野無学
ファンタジー
目覚めた時は死の寸前であり、二人の意識が混ざり合う。母親の死後村を捨てて森に入るが、そこで出会ったのが小さな友人達。

RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya
ファンタジー
戦争・紛争の収まらぬ戦乱の世で 平和への夜明けを導く者は誰だ? 其々の正義が織り成す長編ファンタジー。 〜本編あらすじ〜 広く豊かな海に囲まれ、大陸に属さず 島国として永きに渡り歴史を紡いできた 独立国家《プレジア》 此の国が、世界に其の名を馳せる事となった 背景には、世界で只一国のみ、そう此の プレジアのみが執り行った政策がある。 其れは《鎖国政策》 外界との繋がりを遮断し自国を守るべく 百年も昔に制定された国家政策である。 そんな国もかつて繋がりを育んで来た 近隣国《バルモア》との戦争は回避出来ず。 百年の間戦争によって生まれた傷跡は 近年の自国内紛争を呼ぶ事態へと発展。 その紛争の中心となったのは紛れも無く 新しく掲げられた双つの旗と王家守護の 象徴ともされる一つの旗であった。 鎖国政策を打ち破り外界との繋がりを 再度育み、此の国の衰退を止めるべく 立ち上がった《独立師団革命軍》 異国との戦争で生まれた傷跡を活力に 革命軍の考えを異と唱え、自国の文化や 歴史を護ると決めた《護国師団反乱軍》 三百年の歴史を誇るケーニッヒ王家に仕え 毅然と正義を掲げ、自国最高の防衛戦力と 評され此れを迎え討つ《国王直下帝国軍》 乱立した隊旗を起点に止まらぬ紛争。 今プレジアは変革の時を期せずして迎える。 此の歴史の中で起こる大きな戦いは後に 《日の出戦争》と呼ばれるが此の物語は 此のどれにも属さず、己の運命に翻弄され 巻き込まれて行く一人の流浪人の物語ーー。 

処理中です...