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第一章 異世界だねぇ
どうしてこうなった
しおりを挟む僕の名前は、東堂内 柊一郎
(とうどううちしゅういちろう)
。
僕は小さな頃から凄くモテた。
外を歩くと取り囲まれ、周りの人が引くほどモテる…………動物に。
半径3メートル以内に居る動物がこぞって寄って来る。
犬、猫、鳩、スズメ、ツバメ、逃げ出して来たペットのインコなどなど。
そんなこんなで【リアル白雪姫】と仲間内で呼ばれている。
いや、姫じゃねぇし。
小さな子供の頃はここまで酷くなかったし、犬や猫と戯れていても周囲の目は微笑ましいものを見る目だった。
けれど大人になってからは割と不便だ。
高校時代の授業中、ほぼ毎日ベランダの外にカラスが密集したし、大学時代はキャンパス内でも見た事無い野鳥に取り囲まれたり、ネズミやトカゲ、何処から逃げ出したのかイグアナが足元にいた事も有る。
動物園から逃げ出した、ハシビロコウはデカくて厳つかったなぁ。
就活時期にも面接会場に着いた時にはスーツが犬猫の毛まみれだったり、肩に鳩の糞とか……。
この性質を生かして仕事は動物園の飼育係だ。
園に来たばかりで気が立っている猛獣だろうと僕にかかればイチコロさ。
なので担当の動物は決めず、園内の動物全てに携わっている。
病気や妊娠中の動物でも、僕を威嚇する事は無いから、シーズンには引っ張りだこだ。
そんなモテモテな僕なのに、何故か女性には全くモテない……。
いや、全くでは無いな、一応高校、大学と彼女は居た。
……居たけど何故かすぐフラれる。
最長二ヶ月半、大抵一月も経たずにフラれてしまう………。
就職して十一年、何度目かのお見合いで、やっと結婚に漕ぎ着けた。
これから子供も出来るだろうし頑張って働くぞ!
と気持ちも新たに仕事を頑張ったよ。
全てはお嫁さんとまだ見ぬ子供の為だ。
なのに何故?
仕事から帰宅したら、真っ暗な部屋の中、テーブルの上に一通の封筒が……。
中身はお嫁さんの記入欄をキッチリ埋めて押印した、離婚届と便箋三枚の手紙だった。
『別れて下さい』
から始まった手紙の内容は要約すると…
・いつも動物臭い
・洗濯物の量が多過ぎ
・土日に休みじゃない
・夜勤で夜も居ない事が多い
・動物の具合が悪いと私より優先する
・何処へ出かけても動物が寄って来て怖い
・とにかく全てがキモイ!
お見合いの時にわかってた事じゃないの?
それに
『私も動物好きなんです。
動物好きな人は優しくて、悪い人は居ないですよね』
とか言ってたのに、怖いとか動物臭いとか、何よりキモイとかマジ勘弁してくださいよ…。
もう飲まなきゃやってられない!
家に有るアルコール全部飲んでやる!
ビールに焼酎ウィスキー、日本酒にお嫁さん……元嫁お気に入りのワイン。
しかしまあボロクソだよね、言いたい放題だ。
もしかしなくても若い頃からフラれ続けた原因でも有るのか?
チクショウ、僕だって同じモテるなら動物より女の子にモテたいよ!
ん?もうお酒無いのか?
お酒、お酒…●命酒?これも酒か。
これでも小さい頃はモテてたんだよ。
『わぁ、柊ちゃんの周りはいつも動物さんが沢山居るね、凄ーい』
って近所のお姉さんや奥さん達に大人気だったんだよ。
養●酒も無くなったか……他にお酒お酒っと。
料理酒?これも酒か?
酒って書いてるから酒なんだな。
大体キモイって何だよ、子供の頃はどんなに動物まみれになっても皆凄い凄いって言ってたのに。
あーあ、子供の頃は良かったなー。
あ~部屋が回ってる、酔っちゃったかな、風呂も入ってないのに眠くてたまらん。
まあ臭いとか酷い事言う人も居ないんだしこのまま寝ちゃえ。
あ~、床も揺れてるし光ってる。
何だか暖かい光だなぁ。
気持ち良く眠れそう。
おやすみなさ~い
*****
ってちょっと待て!これって死亡フラグじゃないのか?
一瞬遠のいた意識を気合で取り戻す。
けどダメだ、チャンポンして飲み過ぎたからか頭が重く耳鳴りはするし、喉はカラカラだし、胃はムカムカする。
そして気のせいか、リビングのフローリングの床の上に寝転んだはずなのに、身体の下はフカフカの絨毯だ。
起き上がろうにも縫い付けられたように身体が動かない。
声を出そうにも呻き声しか出ない。
え?もしかしてこれヤバくないか?
まさか死後の世界とか?
それならまだしも酔っ払って他人の家に上がり込んでる方がヤバいか?
何とか視線を動かしてみる。
見知らぬ家具が置いて有る随分広い部屋のようだ。
身体が動かないから見回すのにも限界が有る。
その視界の隅、分厚そうなカーテンの後ろからこちらを覗いている人影が。
子供が二人、十歳くらいの男の子と二、三歳下くらいの女の子。
バッチリ視線が合った途端、ビクー!とした二人は部屋を駆け出し逃げて行った。
え?ちょっと待て、助けてよ~。
しかし、今見た女の子に違和感が有ったんだけど、気のせいだよな、幻覚だよな。
そのまま視線を漂わせていると、色とりどりの小さな光が、四方から集まって来るのが見えた。
ホラー番組なんかでよくあるオーブ?みたいな感じの、フヨフヨした光だ。
え?何?気持ち悪いんだけど、動けないから逃げる事も出来ない。
声を出そうにも声も出ないし、気持ち悪さは増す一方だしと、焦るばかりの僕の周りの見える範囲は光の渦だ。
色が混じって動き回るから目眩がしてくるし吐きそう……。
パニックになりかかった僕の身体に一つの光がすっと吸い込まれていく。
え?今のなに?
大丈夫なの?
取り憑かれたたの?!
最初の一つをきっかけに、全ての光が僕に向かって飛んできて、身体の中に入ってしまった。
ダメだ、今までも気持ち悪かったのに、その気持ち悪さが子供騙しだったと感じるくらい、最悪な不快さだ。
高熱と車酔いと二日酔いとが一度に襲いかかってきた様な、頭痛、目眩、吐き気、ムカつき、耳鳴り、そして頭の中に響く笑い声。
僕はそのまま気を失ってしまった…………
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