上 下
196 / 206
四章 再会

196 リーンカーネーション

しおりを挟む

気持ちが決まれば、後は喚ぶだけです。

ですがその前に……。
服や靴など、着る物は数着準備しました。
好みがありますから、数を揃えるのは、本人が来てからですね。

部屋は私と一緒ですけど、一応布団は用意しました。
一緒の布団でも良いんですけど、一応ね。


「町の人達にも、妻を喚ぶ事を伝えた方が良いのでしょうか?」
「こちらに来られた後に、故郷からいらしたと伝えればいいと思いますよ」
「喚ぶなら朝が良いのでしょうか、それとも夜の方が良いでしょうか?」
「昼で良いのではないか?」
「遠くから喚ぶのですから、喉が渇いてるかもしれませんね、お茶の準備も必要ですかね?」


「「「取り敢えず落ち着け」」」


いよいよ明日妻を喚ぶとなったら、ドキドキして落ち着かず、リビングの中をグルグルと歩き回っていると、
「明日失敗しない為にも、今夜はしっかり休むのが良いんじゃないのかな」
「コニーの言う通りですよ。
今日はゆっくりと寝て、明日は体調万全で魔法を使うのが良いと思いますよ」

さあさあ、部屋へ戻って下さいと、アインに背中を押されます。

「明日からは寝室は別になるのだろうから、チャックもシナトラも今夜はしっかり甘えときな」
「いつも甘えてなんて無いし!」
「え~、明日から父ちゃんと一緒に寝れないの?」
コニーに送り出されたチャックとシナトラも、一緒に寝室へ向かいます。

「ねえ、父ちゃん、オクサンが来たら一緒に寝ちゃあダメなの?」
シナトラが不満気な顔で尋ねてきます。
子供とは言え、見た目は立派な成人男性のシナトラと、妻が同じ部屋で寝るのは、やはり抵抗が……。

でも、この一年半以上一緒の部屋で(或いは同じ布団で)寝てたのに、いきなり別々なのも、ちょっと可愛そうかも知れませんね。
それにチャックの魔素の循環も、出会ってから今までで、随分と良くなってきましたけど、完全に良くなったわけでも無いですから。

「うーん、たまには一緒に寝ようね」
「わーい!約束だからね」
喜ぶシナトラに頷きながら、
「勿論チャックも一緒に寝ましょうね」
チャックに声をかけると、
「べ、別にオレは一緒じゃなくても…」
と言いながらも嬉しそうです。

寝室で横になり、3人で話しているうちに、いつの間にか眠りに落ちていました。



翌日、午前中はソワソワしながら過ごし、昼食を食べて一休みした後、いよいよ魔法を発動させる事になりました。

イメージを固める時間もありましたから、バッチリです。

最初は、
『異世界から転生して召喚だか…、転生と言えば、魔界転○ですかね、あれってちょっと怪しい雰囲気もありましたよね』
と言う考えが浮かんだのですけど、魔界じゃないので、却下。

召喚だから、呪文は『エ○イムエッサ○ム』……いや、これも悪魔が来そうですよね。
それなら『エ○エ○アザラ○』…コレも違ーーーう!

いやいやいや、呪文は『リーンカーネーション』でいいんですよ、イメージが大切なんですから。

えーと…思い浮かべるのは、出会った頃ではなく、共に月日を過ごした後のを妻……癌の告知を受ける前の、穏やかな日々を過ごしていた頃の彼女。

色々乗り越えて、人生を重ねてきたあの頃、その妻を喚ぶのです。

あの笑顔、困った顔、拗ねた顔……私を見るあの視線………。

あの頃の妻が、今の私と同じ年齢の姿に入っていたら、どんな感じになったでしょう。


そのイメージを何度も頭の中で繰り返し、思い浮かべました。

亡くなった直後、妻の中から出た魂に語りかけ、呼び寄せるイメージで、喚びます。


ねえ、私との人生は幸せでしたか?

ねえ、もう一度私と人生を歩みませんか?

ねえ、二人でたくさんの家族に囲まれて、過ごしてみませんか?

ねえ、皆と一緒に幸せになりませんか?

ねえ、この世界でちょっと頑張ってみたんですよ。

ねえ、一緒にすごす町を、たくさんの家族を、仲間を、ご近所さんを作ったんですよ。

ねえ、コレからまだまだ変わっていくこの町を、一緒に育てていきませんか?

ねえ、また私を愛してくれませんか?

ねえ、また私に愛させてくれませんか?

ねえ、今度は一緒に…………



「私の元へ来てください、【リーンカーネーション】」



目の前が白く光り、眩しくて目を閉じました。
瞼越しに光が収まったのが分かったので、目を開けると、そこには……………。  






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

【グラニクルオンライン】〜女神に召喚されたプレイヤーがガチクズばかりなので高レベの私が無双します〜

てんてんどんどん
ファンタジー
国王「勇者よ!よくこの国を救ってくれた!お礼にこれを!!」 国王は綺麗な腕輪【所有者を奴隷にできる腕輪】を差し出した! 主人公(あかん、これダメな方の異世界転移だわ) 私、橘楓(たちばな かえで)はいつも通りVRMMOゲーム【グラニクルオンライン】にログインしたはずだった……のだが。 何故か、私は間違って召喚されゲーム【グラニクルオンライン】の300年後の世界へ、プレイしていた男キャラ「猫まっしぐら」として異世界転移してしまった。 ゲームの世界は「自称女神」が召喚したガチクズプレイヤー達が高レベルでTUeeeしながら元NPC相手にやりたい放題。 ハーレム・奴隷・拷問・赤ちゃんプレイって……何故こうも基地外プレイヤーばかりが揃うのか。 おかげでこの世界のプレイヤーの評価が単なるド変態なんですけど!? ドラゴン幼女と変態エルフを引き連れて、はじまる世直し旅。 高レベルで無双します。 ※※アルファポリス内で漫画も投稿しています。   宜しければそちらもご覧いただけると嬉しいです※※ ※恋愛に発展するのは後半です。 ※中身は女性で、ヒーローも女性と認識していますが男性キャラでプレイしています。アイテムで女に戻ることもできます。それでも中身が女でも外見が男だとBLに感じる方はご注意してください。 ※ダーク要素もあり、サブキャラに犠牲者もでます。 ※小説家になろう カクヨム でも連載しています

いじめられっ子の僕が可愛い人外娘と行く冒険旅〜但し人外娘へと変える方法が独特で〜

揚惇命
ファンタジー
肝田河豚男《キモダフグオ》は、去年まで女子校だった才媛《さいえん》高校に入学する。だが30人のクラスで、男は自分1人だけだった。女子の上位カーストである天谷麻弥《アマタニマヤ》、その取り巻きである今宮春香《イマミヤハルカ》に目をつけられ、虐めを受ける。そんな、肝田河豚男の癒しは、そんな自分に優しく声をかけてくれる裏川菜奈《ウラカワナナ》の存在だった。だが、それも脆く崩れ去る。なんと裏川菜奈こそが天谷麻弥と今宮春香。それにクラスの女子たちをコントロールしていたのだ。そのことを知った肝田河豚男は、大好きなVRMMORPGデモンズフロンティアの世界へと逃げようとする。しかし、運営会社が資金難で倒産して、突然のサービス終了。心の支えを失った肝田河豚男は、とうとう死ぬことを決意する。そして、向かった商業施設のビルの路地裏で怪しげな店を見つける。そこはどんな願いも一つだけ叶えてくれる魔法の店だった。そこでリストバンドを買った肝田河豚男は、半信半疑のまま大好きなデモンズフロンティアの復活を願う。目を開けるとそこは、デモンズフロンティアの世界だった。 ※カクヨム様・小説家になろう様でも掲載しています。 ※毎週月〜金の18時投稿予定。土日はお休み。 ※バイオレンス要素と軽い性描写があるため苦手な方は、ブラウザバック推奨。

チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!

芽狐
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️ ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。  嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる! 転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。 新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか?? 更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

俺のスキル『性行為』がセクハラ扱いで追放されたけど、実は最強の魔王対策でした

宮富タマジ
ファンタジー
アレンのスキルはたった一つ、『性行為』。職業は『愛の剣士』で、勇者パーティの中で唯一の男性だった。 聖都ラヴィリス王国から新たな魔王討伐任務を受けたパーティは、女勇者イリスを中心に数々の魔物を倒してきたが、突如アレンのスキル名が原因で不穏な空気が漂い始める。 「アレン、あなたのスキル『性行為』について、少し話したいことがあるの」 イリスが深刻な顔で切り出した。イリスはラベンダー色の髪を少し掻き上げ、他の女性メンバーに視線を向ける。彼女たちは皆、少なからず戸惑った表情を浮かべていた。 「……どうしたんだ、イリス?」 アレンのスキル『性行為』は、女性の愛の力を取り込み、戦闘中の力として変えることができるものだった。 だがその名の通り、スキル発動には女性の『愛』、それもかなりの性的な刺激が必要で、アレンのスキルをフルに発揮するためには、女性たちとの特別な愛の共有が必要だった。 そんなアレンが周りから違和感を抱かれることは、本人も薄々感じてはいた。 「あなたのスキル、なんだか、少し不快感を覚えるようになってきたのよ」 女勇者イリスが口にした言葉に、アレンの眉がぴくりと動く。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

【悲報】人気ゲーム配信者、身に覚えのない大炎上で引退。~新たに探索者となり、ダンジョン配信して最速で成り上がります~

椿紅颯
ファンタジー
目標である登録者3万人の夢を叶えた葭谷和昌こと活動名【カズマ】。 しかし次の日、身に覚えのない大炎上を経験してしまい、SNSと活動アカウントが大量の通報の後に削除されてしまう。 タイミング良くアルバイトもやめてしまい、完全に収入が途絶えてしまったことから探索者になることを決める。 数日間が経過し、とある都市伝説を友人から聞いて実践することに。 すると、聞いていた内容とは異なるものの、レアドロップ&レアスキルを手に入れてしまう! 手に入れたものを活かすため、一度は去った配信業界へと戻ることを決める。 そんな矢先、ダンジョンで狩りをしていると少女達の危機的状況を助け、しかも一部始終が配信されていてバズってしまう。 無名にまで落ちてしまったが、一躍時の人となり、その少女らとパーティを組むことになった。 和昌は次々と偉業を成し遂げ、底辺から最速で成り上がっていく。

処理中です...