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三章 町をつくる様です

156 いつの間にやら兼業主人

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「おかえりなさい、有意義な旅はできましたか?」

日が暮れて町に戻った私達を、留守番をしていたアインと白雪を抱っこしたコニーが迎えてくれました。

今回の行商の旅は、資金稼ぎと新しい物の入手、発見の為ですから、パーティメンバーだけで出かけていて、アイン達には町の運営を任せていたのです。
適材適所ですね。

リビングへ集まり、アインがお茶を淹れてくれて、コニーは白雪を寝かしつけに行ってます。

「半月の期限でしたけど、色んな村を廻れました。
新たな素材や、技術なども発見出来ましたよ。
それは後で詳しく話しますけど、先ずは聞きたいことがあります」
「何かありましたか?」

アインの向かい側に腰掛けて、お茶を一口いただきました。
ブルースはお茶を持ち離れた窓際の椅子に腰を下ろし、その近くにデイビッドも座ります。
チャックはシナトラが棚から持ち出した常備菓子のクッキーを受け取り、二人で近くのテーブルへ着きました。

このリビングには大きなメインテーブルとソファーのセットとは別に、二人席の椅子とテーブルのセットが二つ、色んな種類の椅子や、一人がけのソファーが複数置いてあり、好きな場所へ落ち着く事ができる様になっています。

そのメインテーブルに、アインと二人で向かい合った私は、つい最近聞いたことを尋ねてみました。

「この町、リーガルリリーが実は町ではなく、国だって聞いたのですけど、本当の事ですか?」
「ああ、やっと気づきましたか」
私の問いかけに、しれっと答えるアイン。

「四人で話し合った時に、貴方の要望を聞いていて、町では収まらないですし、これから規模も大きくなるでしょう。
それならいっそ国で良いのでは?
反対する方は居ませんよ」
「規模が大きくなるかなんて分からないですし、そうだとしても、現状小さな町程度ですよね?」

現在町の住人は、89家族、259名です。
私達合わせても269人……小さな町では無いかもしれませんけど、国と言うレベルには及びません。

「どんな国であれ、初めは小規模ですよ。
所によれば『ここは国で私が国王だ』と言った者勝ちと言う事もあります。
そう言った自称国は、周りから淘汰されますけどね」
「アインやコニーが認めても、北や人族の国が黙っていないのではないのですか?」
「何言ってんの、北には力示したし、人族の国が口出してくるわけないでしょ」
白雪を寝かしつけ終わったコニーがリビングに入ってきました。

「最初はさ、こっちも町のつもりだったよ?
でもギルドは有るわ、店は多様だわ、住人は増える予定だわ、軍も病院もそのうちなんて言ってるし。
町のレベル超えてるでしょ」
「そうですね、話し合いでこれはもう国づくりでいいでしょうと思いましたから、他の国へは五つ目の国と通達しましたよ」
「通達しました、って…そんなので良いんですか?」

国ですよ?
軽くないですか?

「私だって仕えていた方に『それじゃあ西は任せたよ』っていきなり国を任せられたのですよ?
それも下準備も協力者もなく、一人っきりで」
え?何それ酷い。

「あー、記録読んだら、北の国もおんなじノリだったよ。
『渓谷の向こうの警戒宜しく』って、家臣の一家に丸投げしたって」
コニーが言うと、
「人族の国も大して変わらぬだろう」
会話を聞いていないと思っていたブルースも、口を挟んできます。

「それに比べてジョニーは、僕たちもいるし、他の国の根回しも済んでる、身内は強力だし、自身も規格外。
住民は自分の目で選んでるし、東側とも縁がある、何やら新しい事も始めるんでしょ?
そんな奴が町の町長で収まるわけない」

「父ちゃんはブラックサーベラスのリーダーもやってるよね」
「確かサーベラス商会の会長でも有るんだよね?」
お菓子を食べ終わったのか、シナトラとチャックも会話に加わってきました。

「父ちゃんはリーダーで会長で王様?」
「外交に開発者に人材斡旋、遠方からの仕入れ担当でも有るね」
「いや盛り過ぎだろ」
シナトラとチャックの言葉に突っ込みを入れたのですけど、窓際の二人も話に乗って来ました。

「腕の良い料理人でもあるな」
「戦力も高くて回復魔法も使えるんだよね?
先ず使っている魔法が規格外なのに、無性人と同じ能力もある別世界の人族」

こうして聞いてみると、もしかして私って規格外なのですかねぇ…。

「お前は何処を目指しておるのだ?」
「何処をって、私の目標は妻と一緒に家族に囲まれて幸せな第二の人生を歩む事ですよ」

その為の冒険者パーティ、その為の商会、人付き合い、美味しいものを食べてもらう為の仕入れに料理、快適な生活を送ってもらう為の魔法。
そして一緒に過ごしてくれる家族。

目的の為に無理なくやっていたのに、気付けば色々やっていますね。
今更王様って肩書きが増えたからって、なんて事はない気がしてきました。

「ブルースも言ってたけど、難しく考えなくて良いんじゃないの?
チャックの言葉に頷くブルース。
「そうだな、もっとシンプルにいけば良い」
「シンプルって…」
「気持ちの持ちようでしょう」
「気持ちって……」

だんだん言い返すのも考えるのも面倒になって来ました。
他国に通達が終わっていると言うことは、済んだ話なのでしょうからとやかく言っても仕方ないでしょう。
ブルースに聞いた時からそれは分かっています。
けれど一言だけ言わせてください………

「せめて事前に言っててよ~」

私この度パーティリーダー兼、商会の会長兼、国王兼………肩書きが増えました。








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