上 下
104 / 206
第二章 旅は道連れ

104 とても良い家族が加わった様です

しおりを挟む
「そう言えばルシー、遅くないですか?」
ディビットの話が一段落ついたところで、アインが呟きました。
そう言われてみるとそうですね。
結構時間が経ったと思いますけど、戻ってきませんね。

「うーーん……臭いは近づいて来てると思うよ」
鼻をスンスン鳴らしてシナトラが言います。

「戻って来てるなら問題はなかろう。
それより移動をどうするかだ。
ドドにはこれ以上乗れぬぞ」

そうですよね、ドドの背中のオニバスは大きくなって、3人乗りから4人乗りになりましたけど、これ以上乗れませんよね。
私はポニーに尋ねてみました。

《うーん、ちょっと無理やと思うよ。
王様トカゲさんやら魔王さんから良い魔力を貰っとるから大きくなれたんやけど、ドドの歳で4人乗せれるのは凄い事なんよ。
だからこれ以上は無理やと思うよ》

《もしかして無理をさせていましたか?》

《うーうん、ここまでなら無理はしとらんと思うよ。
張り切っただけやよ、きっと》

無理をさせていないのなら良かったのですが。

どうやらブルース達とドドも話し合っているようです。
やはり5人は乗せれないそうです。
結果的に、ディビットは空を飛んで付いてくる事になりました。

移動の話も落ち着いたのに、まだルシーが戻って来ません。
探しに行った方が…と言おうと思っていたところで、やっと遠くに姿が見えました。
いや待て、本当に遠いぞ。

「お待たせ~」
笑顔で戻って来たルシーに、どこまで行っていたのか聞きたいですけれど、お花摘みに行っていた女性に遅かったと言うのはセクハラですよね。

「遅かったよね、どこまで行ってたの?」
ってシナトラーーー!!

「え?だって人目に付かないところでおしっこはするもんだって言ったでしょ?
だからあの向こうに行って来たの」
と言って指さすのは、遠くに見える断崖です。

確かに見えない場所と言われても、近くにはサボテンや、低木しか無いですから、隠れる事はできないですよね。
いや、それより女の子がおしっことか言うのは、おじさんどうかと思うよ。

「人に見られちゃダメだなんて、人って面倒臭いのね」
「だよねー、別にその辺でさっとすれば良いのにね」
「そうよねー」

あ、ダメだ、この二人混ぜるな危険だ。

ブルースは面白そうにニヤニヤしているし、アインは頭を抱えています。
チャックは我関せずですし、私が注意しなければいけないのでしょうね。

「お二人とも亜人化して人となったのなら、人としての生活様式やマナーを受け入れないといけないのでは?
二人だけで密かに話すならまだしも、他人の居る前で‭下関係(しもかんけい‬)の話をするのは、マナーが悪いと思うのですが」

私が口を開く前に、ディビットが二人の前に立ち塞がりました。

「え?誰、このオス」
いきなり見知らぬ男性に注意をされたルシーですけど、絶対強者の王様トカゲですから、警戒はしていませんが、キョトンとはしています。

「俺は今しがた家族に加わったディビットです。
先程も見て思いましたけど、貴女は人として、そして女性として色々と学んだ方がいいと思いますよ」
「だって今まで人と接することなんてなかったんだもん。
知らなくても仕方ないと思わない」
ルシーがムッとして言い返します。

王様トカゲですから、人を避けて生きてきたルシーです。
人の生活や常識、ましてや男女の差などはわからないでしょう。
ブルースに聞いたところ、王様トカゲは性別による能力差は無いそうです。
さらに羞恥心などは人にしか無い物ですし、集団で生きる為のマナーや常識などは、人と接したことのないルシーには未知のものでしょう。

それがわかっているから、その都度その都度、一つずつ教えていくしか無いのですけど、……こうね、余りにも知らない事だらけで面倒というか何というか………。

「俺も亜人化したばかりで知らない事の方が多いと思う。
だから一緒に学びましょう」

おおおおお、ディビット!

「そうなの?アナタも知らない事だらけなの?
私と一緒なのね」
そう言って少し考え込む彼女。

「そうね、知らない事、二人で覚えていきましょう」
ルシーは笑顔になって、ディビットに擦り寄ります。

「こういう時人ならこうするんだよ」
ディビットがルシーの右手を取り、握手をしました。
「人は無闇矢鱈に体を寄せないものだ。
求愛行動だと思われるからね」
「へー、そうなんだ。
これはどう言う意味なの?」
「これは握手と言って…………」


「良い指導者が出来ましたね」
そっと近寄って来たアインが耳元で囁きます。
「随分と真面目な奴だな」
ブルースも小声です。
「シナトラにも色々教えてくれるといいな」
「えー、なんでー?
僕はルシーねーちゃん程世間知らずじゃ無いよ」
チャックの言葉に異議を唱えるシナトラを見る4人の目は、少し呆れていますけど、本人は気づいてくれません。


「そろそろ出発しましょうか」
昼食を済ませて出発です。
チャックが、ディビットが飛ぶなら自分も飛ぼうか、と言い出しましたけど、白頭鷲以外にも猛禽類がいるらしく、危険なのでやめてもらいました。

バスに乗って2時間ほど進むとリアンスの街並みが見えて来ました。






ーーーーー〈切り取り線〉ーーーーー

   
    【補足】

ディビットが人の生活に詳しいのは、砂漠を行き交う人々を見て来たからです。
餌や水場を求めて人の住む場所の近くまで行ったりして、人々の生活を見て学びました。

ルシーは、人を避けて生きて来たので、人の生活や生き方がわからない

………と言う話を書いたつもりが、丸っと消えているのに気づいたのですけど、作品を書いた当初の記憶が朧げなので、ちょっとした補足になってしまいました。

すみません…………。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【TS転生勇者のやり直し】『イデアの黙示録』~魔王を倒せなかったので2度目の人生はすべての選択肢を「逆」に生きて絶対に勇者にはなりません!~

夕姫
ファンタジー
【絶対に『勇者』にならないし、もう『魔王』とは戦わないんだから!】 かつて世界を救うために立ち上がった1人の男。名前はエルク=レヴェントン。勇者だ。  エルクは世界で唯一勇者の試練を乗り越え、レベルも最大の100。つまり人類史上最強の存在だったが魔王の力は強大だった。どうせ死ぬのなら最後に一矢報いてやりたい。その思いから最難関のダンジョンの遺物のアイテムを使う。  すると目の前にいた魔王は消え、そこには1人の女神が。 「ようこそいらっしゃいました私は女神リディアです」  女神リディアの話しなら『もう一度人生をやり直す』ことが出来ると言う。  そんなエルクは思う。『魔王を倒して世界を平和にする』ことがこんなに辛いなら、次の人生はすべての選択肢を逆に生き、このバッドエンドのフラグをすべて回避して人生を楽しむ。もう魔王とは戦いたくない!と  そしてエルクに最初の選択肢が告げられる…… 「性別を選んでください」  と。  しかしこの転生にはある秘密があって……  この物語は『魔王と戦う』『勇者になる』フラグをへし折りながら第2の人生を生き抜く転生ストーリーです。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

残滓と呼ばれたウィザード、絶望の底で大覚醒! 僕を虐げてくれたみんなのおかげだよ(ニヤリ)

SHO
ファンタジー
15歳になり、女神からの神託の儀で魔法使い(ウィザード)のジョブを授かった少年ショーンは、幼馴染で剣闘士(ソードファイター)のジョブを授かったデライラと共に、冒険者になるべく街に出た。 しかし、着々と実績を上げていくデライラとは正反対に、ショーンはまともに魔法を発動する事すら出来ない。 相棒のデライラからは愛想を尽かされ、他の冒険者たちからも孤立していくショーンのたった一つの心の拠り所は、森で助けた黒ウサギのノワールだった。 そんなある日、ショーンに悲劇が襲い掛かる。しかしその悲劇が、彼の人生を一変させた。 無双あり、ザマァあり、復讐あり、もふもふありの大冒険、いざ開幕!

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

【グラニクルオンライン】〜女神に召喚されたプレイヤーがガチクズばかりなので高レベの私が無双します〜

てんてんどんどん
ファンタジー
国王「勇者よ!よくこの国を救ってくれた!お礼にこれを!!」 国王は綺麗な腕輪【所有者を奴隷にできる腕輪】を差し出した! 主人公(あかん、これダメな方の異世界転移だわ) 私、橘楓(たちばな かえで)はいつも通りVRMMOゲーム【グラニクルオンライン】にログインしたはずだった……のだが。 何故か、私は間違って召喚されゲーム【グラニクルオンライン】の300年後の世界へ、プレイしていた男キャラ「猫まっしぐら」として異世界転移してしまった。 ゲームの世界は「自称女神」が召喚したガチクズプレイヤー達が高レベルでTUeeeしながら元NPC相手にやりたい放題。 ハーレム・奴隷・拷問・赤ちゃんプレイって……何故こうも基地外プレイヤーばかりが揃うのか。 おかげでこの世界のプレイヤーの評価が単なるド変態なんですけど!? ドラゴン幼女と変態エルフを引き連れて、はじまる世直し旅。 高レベルで無双します。 ※※アルファポリス内で漫画も投稿しています。   宜しければそちらもご覧いただけると嬉しいです※※ ※恋愛に発展するのは後半です。 ※中身は女性で、ヒーローも女性と認識していますが男性キャラでプレイしています。アイテムで女に戻ることもできます。それでも中身が女でも外見が男だとBLに感じる方はご注意してください。 ※ダーク要素もあり、サブキャラに犠牲者もでます。 ※小説家になろう カクヨム でも連載しています

クラス転移で神様に?

空見 大
ファンタジー
集団転移に巻き込まれ、クラスごと異世界へと転移することになった主人公晴人はこれといって特徴のない平均的な学生であった。 異世界の神から能力獲得について詳しく教えられる中で、晴人は自らの能力欄獲得可能欄に他人とは違う機能があることに気が付く。 そこに隠されていた能力は龍神から始まり魔神、邪神、妖精神、鍛冶神、盗神の六つの神の称号といくつかの特殊な能力。 異世界での安泰を確かなものとして受け入れ転移を待つ晴人であったが、神の能力を手に入れたことが原因なのか転移魔法の不発によりあろうことか異世界へと転生してしまうこととなる。 龍人の母親と英雄の父、これ以上ない程に恵まれた環境で新たな生を得た晴人は新たな名前をエルピスとしてこの世界を生きていくのだった。 現在設定調整中につき最新話更新遅れます2022/09/11~2022/09/17まで予定

もふもふ好きの異世界召喚士

海月 結城
ファンタジー
猫や犬。もふもふの獣が好きな17歳の少年。そんな彼が猫が轢かれそうになった所を身を呈して助けたが、助けた彼が轢かれて死んでしまった。そして、目が醒めるとそこは何もない真っ白な空間だった。

いじめられっ子の僕が可愛い人外娘と行く冒険旅〜但し人外娘へと変える方法が独特で〜

揚惇命
ファンタジー
肝田河豚男《キモダフグオ》は、去年まで女子校だった才媛《さいえん》高校に入学する。だが30人のクラスで、男は自分1人だけだった。女子の上位カーストである天谷麻弥《アマタニマヤ》、その取り巻きである今宮春香《イマミヤハルカ》に目をつけられ、虐めを受ける。そんな、肝田河豚男の癒しは、そんな自分に優しく声をかけてくれる裏川菜奈《ウラカワナナ》の存在だった。だが、それも脆く崩れ去る。なんと裏川菜奈こそが天谷麻弥と今宮春香。それにクラスの女子たちをコントロールしていたのだ。そのことを知った肝田河豚男は、大好きなVRMMORPGデモンズフロンティアの世界へと逃げようとする。しかし、運営会社が資金難で倒産して、突然のサービス終了。心の支えを失った肝田河豚男は、とうとう死ぬことを決意する。そして、向かった商業施設のビルの路地裏で怪しげな店を見つける。そこはどんな願いも一つだけ叶えてくれる魔法の店だった。そこでリストバンドを買った肝田河豚男は、半信半疑のまま大好きなデモンズフロンティアの復活を願う。目を開けるとそこは、デモンズフロンティアの世界だった。 ※カクヨム様・小説家になろう様でも掲載しています。 ※毎週月〜金の18時投稿予定。土日はお休み。 ※バイオレンス要素と軽い性描写があるため苦手な方は、ブラウザバック推奨。

処理中です...