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第二章 旅は道連れ

37 お酒は楽しく飲みたい派ですよ

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結局シナトラは買い物をしませんでした。
別にお金はすぐに遣わなければならない訳でもありませんし、人の住む場所に慣れると、その内お金でのやり取りを感覚として理解できると思いますし。
欲しいものが出来れば、その時に使えばいいのですからね。

「今までと全く違った生活形態ですから、『これはこう言うものだ』と言われて理解しても、納得するまでには時間がかかるでしょう。
これから亜人として生きて行く内に色々学べばいいと思います。
私も学ばなければならない事は多いですから、一緒にこの世界の生活に慣れていきましょう」

シナトラの背中をポンポンと叩きながら言うと、
「父ちゃんも分かんない事あるの?」
小首を傾げて尋ねてきます。
「ええ、知らない事だらけですよ。
だからブルースやアインに色々教えてもらってばかりです」
私が頷きながら言いますと、シナトラは、
「そっか、父ちゃんも知らない事あるんだ。
僕と一緒なんだね?
じゃあ一緒に知っていこうね!」

暗い表情だったシナトラに笑顔が戻りました。
彼の屈託のない笑顔は可愛いですね。


シナトラが買い物をしないのなら、私の武器を作ってもらうために、武器屋へと向かいます。

組合の登録しているお店で、欲しい武器の説明をすると、「特注になるけど難しいものでも無いから作れるだろう)と、お店の契約鍛治師の工房を紹介していただけました。

工房で鍛治師の方に、素材と形状を告げると、それなら二日程で出来ると言われました。
支払いは、素材の料金と鍛治の作業代など合わせて、後払いだそうです。
勿論その場で注文しました。

詳しい使用方法、全体のサイズ、重さ、握り部分のサイズやそこに巻く革を選んだり、納得いくまで話を詰めました。

自分専用武器、しかも特注品、それだけでワクワクしますね。
2日後が楽しみです。


そのままちょっと早い夕食を済ませ宿に戻りました。
宿に戻ると、一階の酒場でアインがお酒を飲んでいたので、合流します。

私の感覚からすれば、19歳は未成年なので、飲酒はできないと思ったのですが、この世界での成人は、種族によって変わるそうで、人族は16歳だそうです。
それなら堂々と飲めますね。

獣人は独り立ちしたら大人だそうで、シナトラも飲んでいます。
チャックも翼族では成人済みなんだそうですけど、亜人化して見た目が10歳くらいですから、ウエイトレスさんに断られてしまいました。
チャックは無言でギルドカードをウエイトレスさんに見せると、彼女は謝ってから酒を持ってきてくれましたけどね。

「別に酒が飲みたかったわけじゃないけど、子供と思われるのがムカついた」
そう言いながらチャックは果実酒を飲んでいます。

翼族での成人は、生まれて一年だそうで、それならチャックは成人して随分経つと言うわけですね。
それならプライドを傷つけられてしまいますよね。
私も見た目でついつい子供扱いをしてしまいますから、気をつけないといけません。

「父ちゃん、明日は何するの?」
お酒を飲んで上機嫌のチャックが聞いてきます。
アルコールのせいか、機嫌が良いせいか、少し声が大きかった様で、周りのお客さんの視線を集めてしまいました。

「父ちゃんって、あんたコイツの親なのか?
コイツの方が年上に見えるけど、あんた魔族なのかい?」
隣のテーブルの男性が声をかけてきました。

「いえ、人族ですよ。
シナトラ…彼は私の息子ではないのですが、家族なんです」
「なんだなんだ、訳アリなのかい?
聞いてすまなかったな。
ちょっと気になっちまったんだ、気に障ったなら謝るぞ」
「大丈夫ですよ、気にしません。
血が繋がってなくても、種族が違っても、この二人は私の大事な家族ですし、あちらの二人はとても頼りになる仲間なのですよ。
呼び名は違いますけど、私にとってはなくてはならない大切な人達なのです」

私も酒が回ったのでしょうか、ちょっと身内自慢をしてしまいました。
「兄ちゃんいいこと言うね!
よし、気に入った!
一杯奢らせてくれ!」
男性は私の肩をバンバンと叩いて笑っています。
こう言うノリは大好きです。

私はその男性をテーブルに誘って、夜がふけるまで飲み明かしました。






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