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第二章 旅は道連れ

10 一人目の家族

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目が覚めました。
川で顔を洗い、拠点へ戻り朝食です。
昨日採ってきた果物は食べ尽くしてしまったので、また後で採って来ないといけませんね。
他にも食べられるものを探すために、今日も森へ行きましょう。

……あ、水筒に水を入れるのを忘れていました。
戻るのも少し面倒ですね、魔法の水って飲めないのでしょうか?
試してみましょうか。

私はコップに手をかざし…そうですね、水を汲むなら思い浮かべるのは、
「水道………うわぁ!」

思ったより勢いよく水が出てしまいました。
コップに水を汲むなら、蛇口全開のイメージはダメですね。
起きて着替えた服がびしょ濡れです。

ひとまず水を鑑定してみましたけれど、『飲用可能』と出ましたので飲んでみます。
普通に水ですね。

「キュイ」

目覚めると居なくなっていたオカメインコが、近くの木の枝からこちらを見下ろしています。
餌でも食べに行っていたのでしょうか。

「キュイ」
「おはようございます」

もう一度鳴かれたので挨拶しました。
昨日までと違って威嚇の鳴き声ではありませんね。

「ギーー!」

あ、また威嚇されました。
何が言いたいのでしょう?
小首を傾げていると、飛んできて私の手に止まり、コップを突きます。

「水が欲しいのですか?
川から汲んできましょうか」
「ギーーーー!」
「魔法で出した水がいいのですか?」
「キュイ、キュイ」

どうやら魔法で出した水を飲みたいようなので、水量を加減してコップ水を出しましたら、頭を突っ込み飲んでいます。
並々と注いだ水を4分の1ほど飲んだ後、体をブルリと震わせて、
『あー、満足』
とでも言いたげに目蓋を閉じ、冠羽もリラックス状態です。

「美味しかったのかな?
普通の水だと思うんだけど」
指を伸ばしこちょこちょこと頬を掻いてやると、グリグリと頭をすり寄せてきます。
チャックを思い出しますね。

「ねえ君、僕の家族になるかい?」

妻とチャックの三人暮らしを思い出し、家族の前での口調に戻りますねえ。
言葉が通じたのか、肩にとまり頬にすり寄ってきます。
これは了承したと思っていいんですかね。
それなら最初の家族は、チャックと同じオカメインコの君がいいです。

「ちょっと待っててくださいよ……オープン」


【亜人化のやり方

心を通わせた生き物を亜人化させる方法は簡単だよ。
生き物には個別の名前が付いていないから、名前をつけると【個】として認められるんだよ。
【個】として認識されて、意思疎通をしたい、一緒に居たい、仲間になりたいって、お互いが思っていたら、亜人になれるんだ。
まずは【個】としての名前を考えて、それに魔力を込めて触れながら口に出そう。
それだけで相手は亜人になれるんだ。
でも注意してね、相手が望んでいないと【個】としての名前を唱えても亜人にはなれないし、場合によっては跳ね返されて、かけた本人が別の生き物になる事があるからね。
無理強いは絶対にダメだよ。

それから、亜人になったからと言ってもずっと一緒に居なくても良いんだよ。
心を通わせて家族になったからと言って、ずーっと一緒に居られるとは限らないからね。
結婚したり、就職したり、寿命の長さが違うから、出会いの分別れもあるよ。
独り立ちする時に、亜人のまま別れるパターンが一番多いね。

【個】の名前を返してもらえば、相手は元の生き物に戻れるから、相手が『亜人はもう嫌だ』と言ったら元に戻してあげようね。
独り立ちする時に元の動物に戻りたい人も居るからね。
その時は【亜人解除】をしてあげようね。
相手が嫌がることをしたらしっぺ返しが来るから、本当に気をつけてよ。 】


成る程、一方的に亜人化させられない様になっているのですね。
別の生き物になるのは怖いですから、キチンと確認しなければなりませんね。
亜人のまま別れた方々の子孫が、今現在各地で暮らして居る亜人の方々なのですかねえ。
出会いもあれば別れもあるのは当然です。
別れの時も、良い関係のままでいたいですね。

「本当に名前をつけていいんだね?」
「キュイ!」
どうやら異論はないようですので、以前一緒に暮らしていたオカメインコと同じ名前…大事な家族の名前にしましょう。

「じゃあ君には私の家族の名前をあげよう。
君の名前は『チャック(ベリー)』だよ」

指先で触れ、名前を告げるとぽうっと光り、彼の体が滲んだと思ったら、ぐんぐん大きくなって人の形になりました。
私の肩の上で……。
当然私はその場で転けて倒れましたよ。
その倒れた私の上でチャックと名付けたオカメインコは、紫色の髪と翼を持つ、10歳くらいの男の子になりました……全裸ですが。

「おお、手がある、足がある!
すげー、指まであるよ!」
自分の手足を見て、とても喜んでいます。

「あー、あー、オレちゃんと言葉話せてる?」
「ちゃんと話せてるよ」
彼は私の胸ぐらを掴み、大声で喋ります。
「あんたさあ、あんた、オレ言いたい事いっぱいだよ!」
「話は聞くから、ひとまず上から降りてくれないかな。
それと今の僕は耳は遠くないからもう少し声を抑えてくれ」
傍目に見ると、全裸の子供に押し倒されている状態です。
あまりよろしくありませんね。


チャックに私の着替えを渡し、着てもらいました。
ズボンはサイズが合わないので、シャツを着ただけですが、太腿辺りまであるから、ワンピースを着ている様です。
ひとまずはこれで我慢してもらいましょう。

彼は捲し立てる様に、一昨日からの私の行動を批判してきました。
魔法の使い方が変だとか、食べられる草や木の実が有るのに、黒焦げの物を食べるのは変だとか、わざわざ食べ物のない所ばかりぐるぐる回るのが変だとか……。

「人間って色んな草や岩を使って料理?とかするんでしょ?
あれが料理なの?
オレがじいちゃんから聞いていたのと全然違うんだけど」
「岩…はわからないけど、料理はした事ないから、とりあえず焼いてみたんだけど、あれじゃあダメだと僕も思うよ。
食べ物も、君が昨日持ってきてくれて、案内までしてくれて助かったよ、ありがとう」
頭を下げると、顔を赤くして、また捲し立てる様に喋りだす。

「だって川向こうって色んな匂いのする草ばっかりで食べ物無いのに、あんたぐるぐる回ってるし!
その上倒れるし!
暖ったかい寝床のお礼しなきゃだし?
別に礼を言われる様な事じゃないし!
お互い様だし!」 

なんだか一生懸命で可愛いですねえ。
ほのぼのとしてしまいます。
「笑うなー!」
「すみません」





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