秘密結社ニヨル世界征服活動

uji-na

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第三話

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「以前から開発の進んでいた生物兵器の一つ。『リンコデムス』を使う」
「……りんこでむす? ああ、アレかぁ」
 聞きなれぬ単語にきょとんとしていた佐官は、しかし思い当たる節があったのか一つ手を打ち鳴らした。
「でも、アレって火器類中心の近現代兵器に対処できないって話で白紙になったんじゃなかったか」
「……なんでも、長官殿が気に入ったので飼育を続けていたという話です」
 次官の耳打ちで、佐官は呆れたように長官を見た。そんな佐官の態度に、長官はムッと頬を膨らませる。
「高度な再生機能を持ち、斬撃に完全体制を持った生物だ。土人攻略には十分に役に立つ上……姿もかわいらしくて良い」
「あんなミミズもどきのどこがかわいいんだか」
 長官と佐官が睨み合う最中さなか常世とこよから卵形のカプセルが勢いよく地表に向けて打ち出された。しばらくして、カプセルが地面から飛び出る様子を偵察機の一つがとらえる。
 巨大モニターの映像の一つに映る巨大なカプセルがゆっくりと開き、中からぬるぬるとした蛇か蚯蚓みみずがとぐろでも巻いたような塊が姿を現した。瑞々しい水羊羹みずようかんのような薄茶色の身体に、先端がすぼまった頭には点状の一対の目があってとぼけた表情を見せる。
 細長くつるつるの身体を滑らせるように移動するこの生き物こそ、秘密結社カムロキの技術の結晶である生物兵器の一つ。通称リンコデムスである。
 ニシキヘビのような巨体でありながら静かな動きで行動を始めたリンコデムスは、どんどんと土人の集団へと向かっていった。兵器と言っても要は捕食欲を利用しただけの単純な生物兵器であるため、リンコデムスは本部から指示を待つわけでもなく、まるで無警戒に土人に寄っていく。
 そんな突然の来訪者に、土人達は警戒の声を上げて武器を構えた。
 彼らの威嚇をまるで意に介さず、リンコデムスは、その見た目からは想像の付かない素早さで一人の土人に飛びかかる。
「お、やったか?」
 佐官の呟きの通り、モニター画面にはリンコデムスに襲われる土人の姿がある。
 体に巻き付かれた土人は、その矮躯わいくを滅茶苦茶に暴れさせていたが、ねっとりと絡みついたリンコデムスはまるで離れない。
 それを引き剥がそうと動く周囲の土人の仲間達によって執拗に武器で攻撃をかけられ、リンコデムスの体は千切れた。しかし、まるで影響がないとばかりに捕食を続ける本体に加え、土人の攻撃で周囲に飛び散ったリンコデムスの小片も蠢いて土人達を襲うので、とうとう土人の集団は大崩れとなった。そうしてついに、土人達は捕食されている仲間を放って逃げだした。
 捕まった土人は、リンコデムスの体の中央から出る消化液によってゆっくりと生きたまま食べられていく。捕まったばかりの頃は暴れていた土人も、今では元気がなく、ぐったりとしていた。
「結構えげつないのな」
 リンコデムスに巻き付かれぐったりしている土人を見て、佐官は軽い声音で言った。
「しかし、これであの集団のサンプルが手に入りました。完全に消化される前に回収して調べましょう」
「かしこまりました」
 珍しく嬉しそうに声を弾ませる次官の指示で、史生は一度小モニター画面から消えた。リンコデムスの回収作業に入るためであった。
 長官はといえば、自身のお気に入りの生物兵器の活躍に大層満足した様子で、おのれの椅子にふんぞり返るように腰掛けていた。
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