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新婚旅行編
大雲海と雲イルカ
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「わぁああーーーーーっ! 海だ! 海だよジル!!」
ジルの呆れたような視線を感じつつも、ポルカは目の前の光景に興奮しっぱなしだ。何せ、人生初の海!
しかもそれが『天界の大雲海』とくれば、そりゃあもうはしゃがない筈がない。
「あっ今雲間に魚が! 魚が見えた! アハハすごい! 虹色だヨぉ!」
「ああそうだな。おいあんまり乗り出すな落ちるぞ」
様々な空の色を垣間見せる不思議な雲の中を、虹色の鱗をした小魚が群れをなして泳ぎ回る。群れがうねれば虹もうねり、まるで雲間にひねくれた虹がかかったよう。
その他にも、真っ黄色のコブがついた魚やら光る触手で舞踊るクラゲやら、見た事もない変な生き物が目白押し!!
そんな訳で、ポルカの心はぴょんぴょんと跳ねまくっているのだった。
『あー、お楽しみ中の奥様、誠にありがとうございーます。続きましてあちら、南の波間をご覧下さい。間もなくー、雲イルカの生息域に入りまーす』
はしゃぐポルカの耳に、船首に設置された魔導具から、案内役の声が響く。振り向くと、白いシャツに短パン、麦わら帽子を被った船員兼案内人のオジサンが操縦席から手を振ってくれた。
ポルカたちが乗っているのは、シエンテの観光ツアー会社『クラウドルフィーン』の小型観光船だ。
“雲イルカに出逢おう”という謳い文句を掲げたこの観光ツアーは、シエンテでも一番人気なのだとか。
「あっ!!」
言われた通り南側へ走り、船の縁から乗り出すように泡立つ雲海を覗き込む。すると、白い波の中から薄紅色の背びれが顔を出した。ひとつ、ふたつ、みっつ……薄紅色のそれはあっという間に船の周りを取り囲む。そして――
『ようこそ、雲イルカの楽園、南の大雲海へー!愛らしい友人たちとー、楽しい時をお過ごし下さーい』
「わ、ぁあぁ……!!」
煌めく雲しぶきと共に、薄紅色の雲イルカが跳ね上がる。濡れた尾びれはツヤツヤ、つぶらな黒い瞳が何とも可愛らしい。『キュゥ!キューィ!』そんな感じの鳴き声まで聞こえてきて、ポルカはぱちぱちと手を叩き大興奮である。
「ひゃぁああホントだ!! ホントに『キュゥキュゥ』いってる!」
「……『ガォー!』じゃなかったなぁ?」
「意地悪ジル! その話は忘れとくれよ!」
「はははっ事実だろ」
例の雲海サメ事件を思い出し、真っ赤になったポルカ。その腰に手を回し、ジルは肩を震わせてニマニマ笑っているのが何とも腹が立つ……けれどもまぁ、許そう。
一番人気なこのツアーを勝ち取るために、ジルはかなり前から下準備と予約をしていたのだ。ツアーの代金だって結構なお値段だろう。
だったらちょっと揶揄われるくらい、広い心をもって受け止めてやらねば。
まさに大雲海のごとき広い心を持ったポルカは、船と並んで跳ね泳ぐ雲イルカたちを眺めつつそぅっと夫の側に寄り添った。
「可愛いねぇ」
「ああ」
「可愛くて、おまけにキレイだなんて凄い生き物だねぇ」
「ああ、そうだな」
白い飛沫を上げて跳ねる、薄紅色の群れ。下界では決して見ることの出来ない幻想的な光景は、改めて此処が“下界”ではなく……“妖精の国”だということを知らせてくる。
――ジルと再会して、一緒に暮らして、色々あったけど結婚式まで上げて……何かもう幸せすぎて夢みたいだヨ。
ジルの呆れたような視線を感じつつも、ポルカは目の前の光景に興奮しっぱなしだ。何せ、人生初の海!
しかもそれが『天界の大雲海』とくれば、そりゃあもうはしゃがない筈がない。
「あっ今雲間に魚が! 魚が見えた! アハハすごい! 虹色だヨぉ!」
「ああそうだな。おいあんまり乗り出すな落ちるぞ」
様々な空の色を垣間見せる不思議な雲の中を、虹色の鱗をした小魚が群れをなして泳ぎ回る。群れがうねれば虹もうねり、まるで雲間にひねくれた虹がかかったよう。
その他にも、真っ黄色のコブがついた魚やら光る触手で舞踊るクラゲやら、見た事もない変な生き物が目白押し!!
そんな訳で、ポルカの心はぴょんぴょんと跳ねまくっているのだった。
『あー、お楽しみ中の奥様、誠にありがとうございーます。続きましてあちら、南の波間をご覧下さい。間もなくー、雲イルカの生息域に入りまーす』
はしゃぐポルカの耳に、船首に設置された魔導具から、案内役の声が響く。振り向くと、白いシャツに短パン、麦わら帽子を被った船員兼案内人のオジサンが操縦席から手を振ってくれた。
ポルカたちが乗っているのは、シエンテの観光ツアー会社『クラウドルフィーン』の小型観光船だ。
“雲イルカに出逢おう”という謳い文句を掲げたこの観光ツアーは、シエンテでも一番人気なのだとか。
「あっ!!」
言われた通り南側へ走り、船の縁から乗り出すように泡立つ雲海を覗き込む。すると、白い波の中から薄紅色の背びれが顔を出した。ひとつ、ふたつ、みっつ……薄紅色のそれはあっという間に船の周りを取り囲む。そして――
『ようこそ、雲イルカの楽園、南の大雲海へー!愛らしい友人たちとー、楽しい時をお過ごし下さーい』
「わ、ぁあぁ……!!」
煌めく雲しぶきと共に、薄紅色の雲イルカが跳ね上がる。濡れた尾びれはツヤツヤ、つぶらな黒い瞳が何とも可愛らしい。『キュゥ!キューィ!』そんな感じの鳴き声まで聞こえてきて、ポルカはぱちぱちと手を叩き大興奮である。
「ひゃぁああホントだ!! ホントに『キュゥキュゥ』いってる!」
「……『ガォー!』じゃなかったなぁ?」
「意地悪ジル! その話は忘れとくれよ!」
「はははっ事実だろ」
例の雲海サメ事件を思い出し、真っ赤になったポルカ。その腰に手を回し、ジルは肩を震わせてニマニマ笑っているのが何とも腹が立つ……けれどもまぁ、許そう。
一番人気なこのツアーを勝ち取るために、ジルはかなり前から下準備と予約をしていたのだ。ツアーの代金だって結構なお値段だろう。
だったらちょっと揶揄われるくらい、広い心をもって受け止めてやらねば。
まさに大雲海のごとき広い心を持ったポルカは、船と並んで跳ね泳ぐ雲イルカたちを眺めつつそぅっと夫の側に寄り添った。
「可愛いねぇ」
「ああ」
「可愛くて、おまけにキレイだなんて凄い生き物だねぇ」
「ああ、そうだな」
白い飛沫を上げて跳ねる、薄紅色の群れ。下界では決して見ることの出来ない幻想的な光景は、改めて此処が“下界”ではなく……“妖精の国”だということを知らせてくる。
――ジルと再会して、一緒に暮らして、色々あったけど結婚式まで上げて……何かもう幸せすぎて夢みたいだヨ。
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