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また嘘ついたなぁ?
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「へ? あれ、熱くない」
……驚いたことに、熱さを全く感じなかった。汁の飛び散った場所を見てみても、赤い跡すらついていない。しかし、確かにそこに熱々の汁が飛んだ筈。
「不思議なこともあるもんだねぇ……いっ!?」
首を傾げていると――いきなり大きな手のひらに細い手首を掴まれ、ポルカは硬直した。
節くれだって少しカサついた太い指がポルカの薄い皮膚をゆっくりとなぞり、汁の飛び散ったであろう箇所を撫でる。
優しさすら感じそうになる繊細な触れ方に、驚きを通り越して内心困惑する。
「……熱かったか?」
「へぇッ!?」
「熱かったかって聞いてんだ」
朝焼け色の瞳に見つめられ、ポルカはブンブンと音が鳴るほど首を横に振った。事実、反射的に『熱い』と言っただけで、実際は小さな火傷すらしていないのである。
「つ、つい言っちゃっただけで、熱くは無かったから!ごめんよ、紛らわしい事やっちまっ………ッ!!!?」
ぬるり
生温かく柔らかい感触が、ポルカの腕を這う。
再び硬直したポルカが見たものは――
「じ、ッ! じじじじじジルぅぅううううぅうう!!!!!?」
察しの悪いポルカでも分かった。あろうことか、ジルは汁の飛び散ったあたりの肌をねっとりと舐め上げていたのである!
いつも不機嫌にポルカを見下ろしている朝焼け色の瞳が伏せられ、髪と同じ色をした赤い睫毛が影を落としている。そうすると目つきの悪さが軽減され、精悍な顔立ちから甘い色気が漂い始めた。……そう、ジルはそのガタイと凶悪な表情で誤解されがちだが、それなりに整った顔をしているのである。ジルの顔に一応慣れ親しんでいるポルカですら、クラクラする程にいい男なのだ……!
「しししし視界の暴力反対ーーーーーー!!!!!!!!!」
「あ゛? 何だそれ巫山戯てんのか」
「いやコッチの台詞だヨ!!アンタッ!アタシは報復相手なんだよ何やってんだい!?こ、これじゃ……何だか……」
――何だかまるで、ジルに心配されているみたいじゃあないか。
浮かんだ考えを、ポルカは直ぐ様打ち消した。あり得ない、それは絶対にあり得ない。きっとこれも何かの報復か、隠れた意図がある筈。
そうだ、例えば『報復は自分の手で行いたい。自分以外のモノに傷つけられるのは嫌だ』とか、そういう。……それもそれで熱烈な気がしないでもないが、そうだ。きっとそうに違いな
「ひっゃ!」
途端にヂゥウ、と強く吸い上げられ、ポルカの肩が跳ねる。……ポルカの腕には、火傷の代わりに赤い鬱血が出来てしまった。
「おい。お前今何か変な事考えてただろ」
「かん、がえて…なぃっ、ひっ! ぁ、ジル! やめっ…ンンんっ」
「ッハ! また嘘ついたなぁ?」
「ひぃ、ン……!!」
腕の内側、生白い肌に赤い跡が散ってゆく。
その上に歯を立てられ、柔い皮膚に食い込む歯の感触に、まるで肉食の獣に首筋を舐められたような危機を感じたポルカは身を震わせた。
その様子をじっくりと堪能するように、ジルは唇を這わせ何度も甘噛みを繰り返す。
「そんな嘘つき女には、相応の報復がいるとは思わねぇか?なぁ、ポルカ」
「ふっ……は、ぅっ…! 待っ……し、汁物のおかわりはどうするんだい!?」
報復されるのは受け入れ済だが、洗い物や残飯の始末も出来ていない。せめて家事が終わってからにしてほしい……!!
特に彼女は汚れた食器を翌朝に持ち込みたくない性分なのである。ポルカは万感の思いを込めて、ジルを見上げたが、しかし――
「――ンなもん、明日の朝に食えば良い」
哀れ、元主婦の思いは彼に届かず。
その日はそのまま寝室でジルの『報復』を受け、冒頭のような事になったのであった。
……驚いたことに、熱さを全く感じなかった。汁の飛び散った場所を見てみても、赤い跡すらついていない。しかし、確かにそこに熱々の汁が飛んだ筈。
「不思議なこともあるもんだねぇ……いっ!?」
首を傾げていると――いきなり大きな手のひらに細い手首を掴まれ、ポルカは硬直した。
節くれだって少しカサついた太い指がポルカの薄い皮膚をゆっくりとなぞり、汁の飛び散ったであろう箇所を撫でる。
優しさすら感じそうになる繊細な触れ方に、驚きを通り越して内心困惑する。
「……熱かったか?」
「へぇッ!?」
「熱かったかって聞いてんだ」
朝焼け色の瞳に見つめられ、ポルカはブンブンと音が鳴るほど首を横に振った。事実、反射的に『熱い』と言っただけで、実際は小さな火傷すらしていないのである。
「つ、つい言っちゃっただけで、熱くは無かったから!ごめんよ、紛らわしい事やっちまっ………ッ!!!?」
ぬるり
生温かく柔らかい感触が、ポルカの腕を這う。
再び硬直したポルカが見たものは――
「じ、ッ! じじじじじジルぅぅううううぅうう!!!!!?」
察しの悪いポルカでも分かった。あろうことか、ジルは汁の飛び散ったあたりの肌をねっとりと舐め上げていたのである!
いつも不機嫌にポルカを見下ろしている朝焼け色の瞳が伏せられ、髪と同じ色をした赤い睫毛が影を落としている。そうすると目つきの悪さが軽減され、精悍な顔立ちから甘い色気が漂い始めた。……そう、ジルはそのガタイと凶悪な表情で誤解されがちだが、それなりに整った顔をしているのである。ジルの顔に一応慣れ親しんでいるポルカですら、クラクラする程にいい男なのだ……!
「しししし視界の暴力反対ーーーーーー!!!!!!!!!」
「あ゛? 何だそれ巫山戯てんのか」
「いやコッチの台詞だヨ!!アンタッ!アタシは報復相手なんだよ何やってんだい!?こ、これじゃ……何だか……」
――何だかまるで、ジルに心配されているみたいじゃあないか。
浮かんだ考えを、ポルカは直ぐ様打ち消した。あり得ない、それは絶対にあり得ない。きっとこれも何かの報復か、隠れた意図がある筈。
そうだ、例えば『報復は自分の手で行いたい。自分以外のモノに傷つけられるのは嫌だ』とか、そういう。……それもそれで熱烈な気がしないでもないが、そうだ。きっとそうに違いな
「ひっゃ!」
途端にヂゥウ、と強く吸い上げられ、ポルカの肩が跳ねる。……ポルカの腕には、火傷の代わりに赤い鬱血が出来てしまった。
「おい。お前今何か変な事考えてただろ」
「かん、がえて…なぃっ、ひっ! ぁ、ジル! やめっ…ンンんっ」
「ッハ! また嘘ついたなぁ?」
「ひぃ、ン……!!」
腕の内側、生白い肌に赤い跡が散ってゆく。
その上に歯を立てられ、柔い皮膚に食い込む歯の感触に、まるで肉食の獣に首筋を舐められたような危機を感じたポルカは身を震わせた。
その様子をじっくりと堪能するように、ジルは唇を這わせ何度も甘噛みを繰り返す。
「そんな嘘つき女には、相応の報復がいるとは思わねぇか?なぁ、ポルカ」
「ふっ……は、ぅっ…! 待っ……し、汁物のおかわりはどうするんだい!?」
報復されるのは受け入れ済だが、洗い物や残飯の始末も出来ていない。せめて家事が終わってからにしてほしい……!!
特に彼女は汚れた食器を翌朝に持ち込みたくない性分なのである。ポルカは万感の思いを込めて、ジルを見上げたが、しかし――
「――ンなもん、明日の朝に食えば良い」
哀れ、元主婦の思いは彼に届かず。
その日はそのまま寝室でジルの『報復』を受け、冒頭のような事になったのであった。
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