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本編
12 夜会 Ⅱ
しおりを挟むユリウス兄様は周りの様子など気にもとめていないのか、優雅にフロアの中心にシェラルージェをエスコートして踊り始めた。
私達が踊り始めると、固まっていた周りの人達もぎこちなく踊り始める。
周りからの突き刺さる視線をすごく感じながらもユリウス兄様を見ると、イタズラが成功したときの顔をしていた。
その顔を見て、ただシェラルージェを驚かせたかっただけなのだと解った。
「はは、シェラ、ごめんね。驚いた?」
周りに聞こえないように一瞬近づいてユリウス兄様は話しかけたきた。
シェラルージェはそれにちょっとだけ睨んで返す。
こんな公の場所でいつものように怒ることも出来なくて、黙って目で訴えるしか出来なかった。
それを見たユリウス兄様はもっと楽しそうに笑う。
そんなユリウス兄様を見ていると、結局つられて笑ってしまい2人でクスクス笑いながら踊ることになってしまった。
曲が終わりユリウス兄様と踊り終えると、待ち構えていたかのようにカミル兄様に手渡された。
そう感じるほど、流れるようにユリウス兄様からカミル兄様にシェラルージェの手は移っていった。
目を丸くしていると、カミル兄様も楽しそうにイタズラが成功したときの顔をしていた。
そんなカミル兄様に苦笑していると、カミル兄様は楽しそうに笑った。またつられて笑ってしまい曲に合わせてカミル兄様と踊っていると、周りから鋭い視線が突き刺さる。
もう女性の嫉妬の視線が突き刺さって体中に穴が開くようだった。
カミル兄様もさすがにその視線に気づいたのか、今度は申し訳無さそうな顔をしていた。
(たまに、ユリウス兄様とカミル兄様はイタズラ心が暴走して失敗したりするのよね)
そしてあとでセリーナに叱られるまでがワンセットなのだけれど………。
今回はちょっとどうなるのか私にも分からなかった。
かなり大事になりそうな予感がする。
女性からの視線がそれを裏付けているようだった。
シェラルージェが暗い顔をしていることに気づいたのか、カミル兄様がシェラルージェの耳元でそっと囁いた。
「シェラ、本当にごめんね」
カミル兄様の気持ちは十分に伝わったけれど、今の行動は悪手だと思った。
カミル兄様が近づいただけで、ザワリとどよめきが聞こえたのだから。
珍しくカミル兄様もテンパっていたのか、失敗続きだった。
もう早く終わってとの祈りが届いたのか、曲がそろそろ終わりそうだった。
カミル兄様を見ると、シェラルージェと同じ気持ちなのか、ほっとした顔をしていた。
やっと曲が終わり、心がもう疲労困憊でカミル兄様と挨拶を交わしていると、近寄ってきた方から手を差し出された。
もう次の相手がいるのかと、イヤイヤ顔を上げると、ハリス様が厳しい顔つきで立っていた。
驚いてハリス様を見ていたら、ハリス様はすぐにいつもの優しい表情になった。
「次は私と踊っていただけますか?」
シェラルージェがハリス様の勢いに押されるように小さく頷くとすぐに手を取られ、ハリス様は踊れるスペースを探して移動する。
あまりにも急展開でシェラルージェはもう何がなんだか分からなかった。
シェラルージェは何故ハリス様からダンスを誘われたのか分からなかった。
手を差し出していた時のハリス様の顔は誘いたくて誘っているようにはとても見えなかった。
だから、お祖父様に頼まれてシェラルージェをダンスに誘って下さったのだと思い至る。
お祖父様は今日がシェラルージェの社交デビューだと知っていたので、誰からも誘われなかったら可哀想だとでも思ったのだろう。
義理だということがとても悲しかったけれど、それでも好きな人と踊ることが出来てシェラルージェはやはり嬉しかった。
だからこそ、少しでも踊ってよかったと思われるようにハリス様のリードに合わせてステップを踏む。
アルム兄様仕込みなのでそれほど酷いことにはならないと思うけれど、あまりにも近すぎる距離感に顔が赤くなっていっていくのが分かった。ハリス様の顔を見るのがマナーだと分かっていたけれど恥ずかしくて、赤くなった顔も見られたくなくて、ハリス様の胸元しか見れなかった。
音楽に合わせて踊っていると、ハリス様と繫いだ手に少し力が加わった。
疑問に思っていると、ハリス様に話しかけられた。
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