シャウには抗えない

神栖 蒼華

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第1章

38 守り人の一族 Ⅲ

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「さあ、シャウちゃん、あちらでお茶を飲みながらお話ししましょう」

お祖母ちゃんがシャウに笑顔を向けてお茶に誘ってくれた。

「皆さんもどうぞ」

お祖母ちゃんの言葉にルティスもラオスとイラザも一緒に移動する。
マークル叔父さんとミスリーも一緒だ。
といっても、同じ部屋にあるテーブルに移動しただけなのだけれど。

お祖母ちゃんを手伝ってミスリーとお茶の準備をすることにした。

「なんだと?!」

突然荒げた声が聞こえ振り向くと、お祖父ちゃんと目が合った。
お祖父ちゃんは目を見開きシャウを凝視していた。
その目が恐くて固まっていると、母さんがお祖父ちゃんの肩を叩く。

「父さん、シャウが驚いてるから」

そう言うと、母さんはシャウに向かって微笑んだ。

「シャウ、大丈夫よ。父さんの顔は怒っているようにしか見えないけど、怒っているわけではないから、気にしないで」

そんなことを言われてもお祖父ちゃんの顔は怒っているようにしか見えなかったけれど、母さんが嘘をつくはずもないので頷いた。
それを見て微笑むと母さんはまたお祖父ちゃんと父さんと話し始めた。

「さあさあ、あの人達は放っておいて、お話を聞かせてちょうだい。ミイシアがお嫁に行った後は一度も会っていないのよ」

お祖母ちゃんに言われて、シャウは知っていることをたくさん話した。
それに、ラオスとイラザがたまに茶々を入れて僕の失敗談を話すのをお祖母ちゃんは楽しそうに笑っていた。

話が盛り上がり、夕食の時間になっても話が尽きなかった。
夕食の時間には母さん達も加わり、母さんの思い出話も聞けてシャウはとても楽しかった。

ご飯も食べ終わると夜も遅いということで、泊まっていくことになった。

「ねえねえ、シャウはわたしのところに泊まってって。いいよね?」

ミスリーに誘われて泊まってみたくて母さんを見ると「いいわよ」といってくれたのでミスリーの部屋で寝ることになった。
父さん達は客間に泊まることに決まったらしい。

ミスリーに連れられて、お祖母ちゃん達のいた家の隣に建つマークル叔父さん宅のミスリーの部屋に入る。
女の子らしい花柄の小物がアクセントになった薄黄色で統一された可愛い部屋だった。

「可愛い部屋だね」
「そう? ありがとう。あ、先にお風呂入って、寝間着用意しておくから」

ミスリーに案内されてお風呂に入った後、入れ替わりにミスリーもお風呂に入った。
ミスリーに用意してもらった寝間着は部屋と同じように可愛い花柄だった。
こんな可愛いのを着たことがなかったのでそわそわしてしまう。

「おまたせー」

ミスリーもお風呂からあがってきた。
そして、シャウと色違いのお揃いの寝間着を着ていた。

「シャウ可愛い。似合うと思ったんだー」

ミスリーに笑顔で言われて、とても照れくさくなってしまった。
シャウの様子にミスリーはふふっと笑う。

「もう、笑わないでよ」
「あはは、ごめんごめん、シャウが可愛いからさー」
「うー」

シャウがうなり声をあげてると、さすがにからかいすぎたと思ったのか話題を変えてきた。

「それよりもラオスさんとイラザさんは幼なじみなの?」
「そうだよ」
「そうなんだ。わたし達もそうなんだ」

そういったミスリーは嬉しそうに笑っていた。

そういえば、ザイさんの紹介の時に聞いたことのない言葉があったのでミスリーに聞いてみることにした。

「ねえ、ミスリー。いいなずけ・・・・・って何?」
「将来結婚する事を約束してる人のことだよ」
「結婚!?」
「そうだよ。ザイとは成人したら結婚するの」
「そうなの? それって政略結婚と同じ?」

将来結婚する事を約束してる人は貴族の中でしか聞いたことがない。
街では付き合っていて、それから親に紹介して結婚するのが普通だった。

「違うよー。わたしからザイに好きって告白したの。そしたら俺もだって言ってくれてー、わたし次期族長の娘だからお父さんに許可をもらって許嫁にしてもらったのー」

ミスリーはすごく嬉しそうに幸せそうに頬を染めて笑ってた。

「……好きってどんな気持ち?」

シャウにはまだ分からない気持ちだった。
だから、気になって聞いていた。

「ザイの一番になりたくて、ザイにずっと見つめられたくて、ザイが笑ってくれるのが嬉しくて、ザイが他の女の子と仲良くしてるのがとっても嫌で、一緒にいると幸せな気持ちかなー」

いろいろな感情が混在してるみたいでよく分からなかった。
それでも、ミスリーは楽しそうで幸せそうだった。

いつか僕にもそう想う人が出来るのかな?
今のシャウにはまったく想像できなかった。
でも、ミスリーを見ていると好きってなんかいいなと思えて羨ましくなった。

「そうなんだ」

これ以上話していると僕にも話がふられそうなので、眠くなった振りで布団に潜り込んだ。

「眠くなっちゃった。もう寝ようよ」
「そうだね。寝ようか」

ミスリーは本当に眠そうであくびをして布団に入った。

「おやすみー」
「おやすみ」

ミスリーの眠そうな声が聞こえたと思ったら、すぐに寝息が聞こえてきた。
その寝息を聞いているとシャウも眠くなってきて、目を閉じると睡魔に引き込まれた。






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