24 / 67
21 ダウールside
しおりを挟むあーあ。
久しぶり会えたのに、フィーリアがよそよそしい。
セチュンが俺のところにフィーリアのことを伝えに来たのは午前の執務の最中だった。珍しい訪問に驚いたが、セチュンの表情があまりにも心配そうな顔をしていて、これはなんとしても会いに行かなければならないと思った。
今まではアルタイが片づける先から仕事を山積みにするから、ろくにフィーリアに会いに行けなかった。
しかも、フィーリアとの約束というか取引があるから、他の妃候補者と食事をとらなければならない。その時間を捻出するために、結局フィーリアに会いに行く時間がとれなかった。
ああ、でも、フィーリアに名前を呼ばれたのは嬉しかった。
ついニヤけそうになって、すぐ表情を引き締めたのだが、情けない顔をフィーリアに見られただろうか。
はあー。
それにしても、俺はなぜこんなに仕事に追われているのだろうか。
即位したばかりで、仕事が山積みな事くらい予想はしていたが、それにしてもフィーリアとの時間がとれないのでは本末転倒ではないだろうか。
この状況になった原因を思い出し、ため息が出る。
フィーリアのために用意した環境で、楽しく過ごしてもらって、そして違う関係になる。
兄妹ではなく、恋人同士として。
そのために苦労して王にまでなったというのに、ムーリャン嬢が暴走して、仕事が滞り、俺はフィーリアに会えず、フィーリアは体調を崩すし、ウルミス嬢には泣かれるしで、散々な状況だった。
……ムーリャン嬢か。
カレルタ豪主と会って聞いたムーリャン嬢の人物像と、実際にやって来たムーリャン嬢は真逆といってもおかしくない印象だった。
いくら演技だといっても、あれはやり過ぎだ。
ムーリャン嬢に絡まれている文官や警備兵からの不満が溢れているとも聞いているし、ウルミス嬢に対する攻撃もやり過ぎだった。
そもそも文官や警備兵へ接触する必要なんてないはずなのに、……しかもどうやら見目のいい男ばかりを誘惑していると聞く。
まあ、俺との会食も、食事することよりも誘惑を目的としているかのように服はギリギリ隠れているくらいのものばかりで、すぐに俺の膝の上に乗ろうとするわ、身体を寄せ付けてくるわ、寝室に誘ってくるわで、それを躱すのに精神がガリガリと削られていっていた。
改めて考えると……ほんとに俺、何をやっているのだろうか。
俺はフィーリアと会いたいのに、結局会っているのは他の妃候補者ばかり。
フィーリアに男として意識してもらうところから始める予定だったのに、そんな時間もありはしない。
本当に予定外のことばかり。
……とにかく、時間がないのがいけないんだ。
フィーリアと会う時間を作るためにも、ムーリャン嬢のことをはっきりさせなくてはな。
それにはまずカレルタ豪主と会わなくてはならないのだが、連絡がつかない。さすがに返答が遅すぎるので、直接人を差し向けようと思っていた。
……はあー。
それにしてもあんなに落ち込んだフィーリアは初めて見た。いつも華が咲くように笑うフィーリアが、暗く儚く、触れば消えてしまうような笑顔で何か思いつめているのが分かったのに。
俺には結局何も言ってくれなかった。
そんなに俺は頼りにならないのだろうか……。
「陛下? どうされましたか?」
突然立ち止まった俺に、ハウリャンは訝しげに声をかけてきた。
「ああ、すまん。何でもない。アルタイが待っているなら、早く戻らないとな」
アルタイは俺に容赦がない。
協力関係にあると思っていたんだが、俺の邪魔をわざとしてるのではと思えるくらい仕事をふってくるのだ。
アルタイと会っているくらい、フィーリアと会えるのはいつになるのだろうか。
ため息しか出てこなかった。
0
お気に入りに追加
76
あなたにおすすめの小説
「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。
木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。
因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。
そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。
彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。
晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。
それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。
幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。
二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。
カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。
こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。
懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。
梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。
あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。
その時までは。
どうか、幸せになってね。
愛しい人。
さようなら。
側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。
とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」
成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。
「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」
********************************************
ATTENTION
********************************************
*世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。
*いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。
*R-15は保険です。
政略結婚の約束すら守ってもらえませんでした。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
「すまない、やっぱり君の事は抱けない」初夜のベットの中で、恋焦がれた初恋の人にそう言われてしまいました。私の心は砕け散ってしまいました。初恋の人が妹を愛していると知った時、妹が死んでしまって、政略結婚でいいから結婚して欲しいと言われた時、そして今。三度もの痛手に私の心は耐えられませんでした。
王子殿下の慕う人
夕香里
恋愛
エレーナ・ルイスは小さい頃から兄のように慕っていた王子殿下が好きだった。
しかし、ある噂と事実を聞いたことで恋心を捨てることにしたエレーナは、断ってきていた他の人との縁談を受けることにするのだが──?
「どうして!? 殿下には好きな人がいるはずなのに!!」
好きな人がいるはずの殿下が距離を縮めてくることに戸惑う彼女と、我慢をやめた王子のお話。
※小説家になろうでも投稿してます
私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです
こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。
まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。
幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。
「子供が欲しいの」
「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」
それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。
運命の番?棄てたのは貴方です
ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。
番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。
※自己設定満載ですので気を付けてください。
※性描写はないですが、一線を越える個所もあります
※多少の残酷表現あります。
以上2点からセルフレイティング
もう彼女でいいじゃないですか
キムラましゅろう
恋愛
ある日わたしは婚約者に婚約解消を申し出た。
常にわたし以外の女を腕に絡ませている事に耐えられなくなったからだ。
幼い頃からわたしを溺愛する婚約者は婚約解消を絶対に認めないが、わたしの心は限界だった。
だからわたしは行動する。
わたしから婚約者を自由にするために。
わたしが自由を手にするために。
残酷な表現はありませんが、
性的なワードが幾つが出てきます。
苦手な方は回れ右をお願いします。
小説家になろうさんの方では
ifストーリーを投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる