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1章

①僕しかいない町と「何か」(3)

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 「お先に失礼します!」
 私は今日も午後5時過ぎに早々に仕事を終わらせて独身寮への帰路に就いた。。東京は電車がすぐ来るからいい。地元は一度乗り過ごせば1時間か30分は待たないといけなかった。乗り過ごそうものなら即遅刻まっしぐらである。都会ならお金さえあれば1人で何でもできる。やはり東京に来てよかった。
 
 寮についた私は早速料理に取り掛かる。冷蔵庫の三連パック豆腐に、ご飯、味噌汁、ゆで根野菜、そして納豆三連パックをつけた純和定食が今日のメニューだ。納豆と豆腐がそれぞれ一対一に対応しているので、三食分賄えるうえに計算がしやすいため愛用している。因みに明日は大好物のそばと、豆腐サラダである。また明日の土曜・・・・・・は雨だから日曜に1週間分の買いだめをしなくては。

 健康には相当気を使っている。添加物盛りだくさんのインスタント・レトルト食品や油が酸化しているコンビニ弁当、無駄にカロリーの高い外食などもってのほかだ。医療保険もしっかり加入し、家計簿も複式簿記で作成している。「栄養検定2級」「ファイナンシャルプランナー2級」「日商簿記1級」を取得した私にとってはなんの造作もないことである。こんな私を見て寮の管理人さんは、
 「タカヒロさんはまめですね~。嫁さんいりませんね~」
というぐらいである。いつも軽く「そうですね」といってその場を立ち去っているが、実際のところどうなのだろうか。私は料理のほかにも掃除、洗濯、裁縫何でもこなすし、そもそも家庭科の成績も女子を押しのけて学年1位だった。合理的に考えればいなくてもいいだろう。

 ただ当然結婚にはあこがれがあった。ほとんどの人が「いつかは結婚したい」と思う気持ちもわかる。アニメ・漫画のラブコメを見てうらやましいなーなんて思うこともある。愛する人と人生の大半を過ごし、子供の成長を楽しみながら毎日を送れたらどんなに幸せだろうか。一応身長も百七十九㎝で高い方だし、収入も公務員だから悪くない。大卒首席で学歴もある方だ。少し古いが「高身長・高収入・高学歴」はある程度満たしているだろう。

 まあ友達一人作れない究極のボッチである私には到底叶わぬ夢なのであるが。そもそもデート自体が面倒くさい、しんどいと感じてしまうのだから結婚どころか付き合う時点でこれはもう望み薄だ。理想と現実は違う。ボッチが急にモテモテになるなどあんなのはアニメ・漫画の世界だけで、所詮作者の妄想の世界にすぎない。それでも、たとえ虚構であったとしても、その中であれば叶わぬ夢を叶う夢として満喫することができる。人間とは不思議なものだ。頭ではわかっていても心がついてこない。
 
 夕食を終え、スマホの漫画アプリを一通り読み、ゲームのログインボーナスをもらってーーといういつもの趣味兼日課を終え、床に就いた。今日は考えることが多かったせいかやけに頭がつかれている。GABA入りのチョコレートでも明日買ってくるか。ああ、あと漫画の新刊が出るな、明日休みだし本屋もよってk・・・・・・。

 そして意識は深い闇へ消えていった。
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