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第三章その2 ~東北よいとこ!~ 北国の闘魂編

対決・爪牙兵団2

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「コマ、乱戦だ! 加勢かせいを頼む!」

「任せてよ黒鷹!」

 コマはたちまち操縦席から姿を消すと、巨大化して誠の機体のそばに降り立つ。

「こちらであの大将どもを引き離しておく! その間に雑魚どもを頼むぞ!」

 巨大化で口調も声も勇ましくなったコマは、近づく敵の首根っこをくわえ、振り回して地面に叩き付ける。彼はそのまま敵の大将へと向かった。

 雑魚と混じってあれが突進してきたら、味方も防ぎきれないからだ。

 そんなコマの横をすり抜ける餓霊に、青い機体が走った。機体番号001、あの凛子の乗機である。

「こんのドラ猫っ!!」

 大口を開けて飛びかかる相手にも怯まず、凛子は懐に飛び込んで強化刀を突き刺した。

 餓霊と機体は勢い余って転がり、瓦屋根と石垣を破壊しながら粉塵を巻き上げた。

 別の敵数体が、周囲から彼女の機体を襲うが、2体の人型重機が切りかかり、餓霊どもは飛び離れた。

「ナイス、2本松コンビっ!」

 凛子が怒鳴ると、画面の孝二はちょっと戸惑った。

「やめろ凛子っ、その呼び方は!」

「なんだよ孝二、嫌なのか!?」

 恭介は愕然がくぜんとした顔で言うが、そう言いながらも機体を反転させ、更に迫って来る相手を薙ぎ払った。

 何だかんだ言いながら、孝二も恭介の動きに合わせ、高さを変えた斬撃で別の相手を撃破している。

 2人の挙動の隙に、更に新手の餓霊が襲って来るが、そこにしぐれが突進して突き刺していた。

 もがいた餓霊がしぐれを吹っ飛ばし、機体は物凄い勢いで転がる。

 そのまま建屋に激しく衝突したが、しぐれはものともせずに愛機を起こした。

「……おらたち、雪に風に鍛えられとるんだ。おめえらみてえなならず者に負けねえぞ……!」

 一見おっとりした印象だったのに、いざとなるととてつもなく芯が強いのだ。

(いい連携、いい部隊だ……!!)

 誠は素直にそう思った。

 この阿吽あうんの呼吸が身に付くまでに、どれだけの修羅場をくぐったのだろう。

 数限りない負傷と、積み重ねられた犠牲。

 押し寄せる無数の悪意から被災者達を守り、一歩も引かずに身につけたわざだろう。

 だがそれでも彼等は、次第に追い込まれていく。いかに名うての特雪と言えど、能登半島ここまでの長い撤退戦を戦い抜いてきた時点で、疲労の頂点ピークに達しているのだ。

「あんた達、ここを抜かれたら、先輩達に笑われるよっ! 東北船団の根性見せろっ!」

 凛子が必死に味方を鼓舞こぶするが、そういう彼女も疲れの色が濃い。

 敵の一体と押し合う凛子の機体、その背後から牙を剥く相手を牽制けんせいする孝二達。だがそこにも、四方八方から敵が飛びかかってくる。

 とっさに攻撃を防ぐも、各機体かくきの装甲に爪や牙がめり込んだ。

 スタジャンがトレードマークの恭介が、画面上で軽口を叩いた。

「……ったく、多勢に無勢じゃんか。卑怯な手は弱いヤツが使うもんだぜっ」

「……たまにはいい事言うな、恭介っ!」

「……んだべ!」

 答える隊員達も苦しそうだが、彼等の奮闘のおかげで、誠にも反撃の準備が整ってきた。

(……磁場がけっこう独特だったけど……大体分かってきたぞ……!!)

 誠は気合を入れて、操作レバーを握り締める。

 10年前におきた環境の激変で、髪や目の色が変わった若者達も多かったが、誠は視細胞に大きな変化を生じている。

 普通は肉眼では見えないはずの、敵の周囲の磁場が分かるのだ。

 思考は脳の電気信号だし、筋肉も電流で動くから、餓霊だろうと人間だろうと、挙動の前には必ず周囲の磁場が乱れる。

 誠は膨大な戦闘経験によって、その磁場の動きから敵の動きを予測出来るようになっていたのだ。

 ただし、土地が変われば方言?のように餓霊の電磁場のクセが変わり、解読までに時間がかかる事がある。

 特にこの北陸の高速餓霊達は方言がきつかったのだが、味方が命がけで時間稼ぎをしてくれたおかげで、十分理解できたのだ。

 ここから先は反撃あるのみ……!!!

 複雑に飛び跳ね、フェイントをかけながら迫る餓霊に、誠はアサルトガンを単発で当てる。

 相手は電磁バリアを乱しながらよろめき、そこを踏み込んだ誠の機体の刀が突き刺した。

 警戒した数体の餓霊が振り返り、散開して誠の方に挑んだが、誠は動きを先読みして弾丸をばら撒く。

 弾はことごとく当たる……というより、弾丸に自ら突っ込む形になって、餓霊どもはたたらを踏んだ。

 誠は機体の腕部装甲アームガードからワイヤーを射出し、斬撃系電磁式スラッシュコードを添付して数体まとめて斬り払った。

 ほぼ同時に電磁場の揺らぎが見え、後ろから迫る敵のイメージが浮かんだので、誠は機体をひねりながら強化刀を背後に突き出す。

 敵は口の中を串刺しにされ、痙攣しながら溶け落ちて行った。

 撃つ、よける、斬る、かわしながら穿うがつ……!!!

 ほとんど全てが一瞬であり、誠が対処する度、餓霊どもはたちどころに四散していく。

 敵の数はどんどん減って、味方は次第に体勢を立て直したのだ。
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