24 / 87
第三章その2 ~東北よいとこ!~ 北国の闘魂編
対決・爪牙兵団2
しおりを挟む
「コマ、乱戦だ! 加勢を頼む!」
「任せてよ黒鷹!」
コマはたちまち操縦席から姿を消すと、巨大化して誠の機体のそばに降り立つ。
「こちらであの大将どもを引き離しておく! その間に雑魚どもを頼むぞ!」
巨大化で口調も声も勇ましくなったコマは、近づく敵の首根っこをくわえ、振り回して地面に叩き付ける。彼はそのまま敵の大将へと向かった。
雑魚と混じってあれが突進してきたら、味方も防ぎきれないからだ。
そんなコマの横をすり抜ける餓霊に、青い機体が走った。機体番号001、あの凛子の乗機である。
「こんのドラ猫っ!!」
大口を開けて飛びかかる相手にも怯まず、凛子は懐に飛び込んで強化刀を突き刺した。
餓霊と機体は勢い余って転がり、瓦屋根と石垣を破壊しながら粉塵を巻き上げた。
別の敵数体が、周囲から彼女の機体を襲うが、2体の人型重機が切りかかり、餓霊どもは飛び離れた。
「ナイス、2本松コンビっ!」
凛子が怒鳴ると、画面の孝二はちょっと戸惑った。
「やめろ凛子っ、その呼び方は!」
「なんだよ孝二、嫌なのか!?」
恭介は愕然とした顔で言うが、そう言いながらも機体を反転させ、更に迫って来る相手を薙ぎ払った。
何だかんだ言いながら、孝二も恭介の動きに合わせ、高さを変えた斬撃で別の相手を撃破している。
2人の挙動の隙に、更に新手の餓霊が襲って来るが、そこにしぐれが突進して突き刺していた。
もがいた餓霊がしぐれを吹っ飛ばし、機体は物凄い勢いで転がる。
そのまま建屋に激しく衝突したが、しぐれはものともせずに愛機を起こした。
「……おらたち、雪に風に鍛えられとるんだ。おめえらみてえなならず者に負けねえぞ……!」
一見おっとりした印象だったのに、いざとなるととてつもなく芯が強いのだ。
(いい連携、いい部隊だ……!!)
誠は素直にそう思った。
この阿吽の呼吸が身に付くまでに、どれだけの修羅場をくぐったのだろう。
数限りない負傷と、積み重ねられた犠牲。
押し寄せる無数の悪意から被災者達を守り、一歩も引かずに身につけた業だろう。
だがそれでも彼等は、次第に追い込まれていく。いかに名うての特雪と言えど、能登半島までの長い撤退戦を戦い抜いてきた時点で、疲労の頂点に達しているのだ。
「あんた達、ここを抜かれたら、先輩達に笑われるよっ! 東北船団の根性見せろっ!」
凛子が必死に味方を鼓舞するが、そういう彼女も疲れの色が濃い。
敵の一体と押し合う凛子の機体、その背後から牙を剥く相手を牽制する孝二達。だがそこにも、四方八方から敵が飛びかかってくる。
とっさに攻撃を防ぐも、各機体の装甲に爪や牙がめり込んだ。
スタジャンがトレードマークの恭介が、画面上で軽口を叩いた。
「……ったく、多勢に無勢じゃんか。卑怯な手は弱いヤツが使うもんだぜっ」
「……たまにはいい事言うな、恭介っ!」
「……んだべ!」
答える隊員達も苦しそうだが、彼等の奮闘のおかげで、誠にも反撃の準備が整ってきた。
(……磁場がけっこう独特だったけど……大体分かってきたぞ……!!)
誠は気合を入れて、操作レバーを握り締める。
10年前におきた環境の激変で、髪や目の色が変わった若者達も多かったが、誠は視細胞に大きな変化を生じている。
普通は肉眼では見えないはずの、敵の周囲の磁場が分かるのだ。
思考は脳の電気信号だし、筋肉も電流で動くから、餓霊だろうと人間だろうと、挙動の前には必ず周囲の磁場が乱れる。
誠は膨大な戦闘経験によって、その磁場の動きから敵の動きを予測出来るようになっていたのだ。
ただし、土地が変われば方言?のように餓霊の電磁場のクセが変わり、解読までに時間がかかる事がある。
特にこの北陸の高速餓霊達は方言がきつかったのだが、味方が命がけで時間稼ぎをしてくれたおかげで、十分理解できたのだ。
ここから先は反撃あるのみ……!!!
複雑に飛び跳ね、フェイントをかけながら迫る餓霊に、誠はアサルトガンを単発で当てる。
相手は電磁バリアを乱しながらよろめき、そこを踏み込んだ誠の機体の刀が突き刺した。
警戒した数体の餓霊が振り返り、散開して誠の方に挑んだが、誠は動きを先読みして弾丸をばら撒く。
弾はことごとく当たる……というより、弾丸に自ら突っ込む形になって、餓霊どもはたたらを踏んだ。
誠は機体の腕部装甲からワイヤーを射出し、斬撃系電磁式を添付して数体まとめて斬り払った。
ほぼ同時に電磁場の揺らぎが見え、後ろから迫る敵のイメージが浮かんだので、誠は機体をひねりながら強化刀を背後に突き出す。
敵は口の中を串刺しにされ、痙攣しながら溶け落ちて行った。
撃つ、よける、斬る、かわしながら穿つ……!!!
ほとんど全てが一瞬であり、誠が対処する度、餓霊どもはたちどころに四散していく。
敵の数はどんどん減って、味方は次第に体勢を立て直したのだ。
「任せてよ黒鷹!」
コマはたちまち操縦席から姿を消すと、巨大化して誠の機体のそばに降り立つ。
「こちらであの大将どもを引き離しておく! その間に雑魚どもを頼むぞ!」
巨大化で口調も声も勇ましくなったコマは、近づく敵の首根っこをくわえ、振り回して地面に叩き付ける。彼はそのまま敵の大将へと向かった。
雑魚と混じってあれが突進してきたら、味方も防ぎきれないからだ。
そんなコマの横をすり抜ける餓霊に、青い機体が走った。機体番号001、あの凛子の乗機である。
「こんのドラ猫っ!!」
大口を開けて飛びかかる相手にも怯まず、凛子は懐に飛び込んで強化刀を突き刺した。
餓霊と機体は勢い余って転がり、瓦屋根と石垣を破壊しながら粉塵を巻き上げた。
別の敵数体が、周囲から彼女の機体を襲うが、2体の人型重機が切りかかり、餓霊どもは飛び離れた。
「ナイス、2本松コンビっ!」
凛子が怒鳴ると、画面の孝二はちょっと戸惑った。
「やめろ凛子っ、その呼び方は!」
「なんだよ孝二、嫌なのか!?」
恭介は愕然とした顔で言うが、そう言いながらも機体を反転させ、更に迫って来る相手を薙ぎ払った。
何だかんだ言いながら、孝二も恭介の動きに合わせ、高さを変えた斬撃で別の相手を撃破している。
2人の挙動の隙に、更に新手の餓霊が襲って来るが、そこにしぐれが突進して突き刺していた。
もがいた餓霊がしぐれを吹っ飛ばし、機体は物凄い勢いで転がる。
そのまま建屋に激しく衝突したが、しぐれはものともせずに愛機を起こした。
「……おらたち、雪に風に鍛えられとるんだ。おめえらみてえなならず者に負けねえぞ……!」
一見おっとりした印象だったのに、いざとなるととてつもなく芯が強いのだ。
(いい連携、いい部隊だ……!!)
誠は素直にそう思った。
この阿吽の呼吸が身に付くまでに、どれだけの修羅場をくぐったのだろう。
数限りない負傷と、積み重ねられた犠牲。
押し寄せる無数の悪意から被災者達を守り、一歩も引かずに身につけた業だろう。
だがそれでも彼等は、次第に追い込まれていく。いかに名うての特雪と言えど、能登半島までの長い撤退戦を戦い抜いてきた時点で、疲労の頂点に達しているのだ。
「あんた達、ここを抜かれたら、先輩達に笑われるよっ! 東北船団の根性見せろっ!」
凛子が必死に味方を鼓舞するが、そういう彼女も疲れの色が濃い。
敵の一体と押し合う凛子の機体、その背後から牙を剥く相手を牽制する孝二達。だがそこにも、四方八方から敵が飛びかかってくる。
とっさに攻撃を防ぐも、各機体の装甲に爪や牙がめり込んだ。
スタジャンがトレードマークの恭介が、画面上で軽口を叩いた。
「……ったく、多勢に無勢じゃんか。卑怯な手は弱いヤツが使うもんだぜっ」
「……たまにはいい事言うな、恭介っ!」
「……んだべ!」
答える隊員達も苦しそうだが、彼等の奮闘のおかげで、誠にも反撃の準備が整ってきた。
(……磁場がけっこう独特だったけど……大体分かってきたぞ……!!)
誠は気合を入れて、操作レバーを握り締める。
10年前におきた環境の激変で、髪や目の色が変わった若者達も多かったが、誠は視細胞に大きな変化を生じている。
普通は肉眼では見えないはずの、敵の周囲の磁場が分かるのだ。
思考は脳の電気信号だし、筋肉も電流で動くから、餓霊だろうと人間だろうと、挙動の前には必ず周囲の磁場が乱れる。
誠は膨大な戦闘経験によって、その磁場の動きから敵の動きを予測出来るようになっていたのだ。
ただし、土地が変われば方言?のように餓霊の電磁場のクセが変わり、解読までに時間がかかる事がある。
特にこの北陸の高速餓霊達は方言がきつかったのだが、味方が命がけで時間稼ぎをしてくれたおかげで、十分理解できたのだ。
ここから先は反撃あるのみ……!!!
複雑に飛び跳ね、フェイントをかけながら迫る餓霊に、誠はアサルトガンを単発で当てる。
相手は電磁バリアを乱しながらよろめき、そこを踏み込んだ誠の機体の刀が突き刺した。
警戒した数体の餓霊が振り返り、散開して誠の方に挑んだが、誠は動きを先読みして弾丸をばら撒く。
弾はことごとく当たる……というより、弾丸に自ら突っ込む形になって、餓霊どもはたたらを踏んだ。
誠は機体の腕部装甲からワイヤーを射出し、斬撃系電磁式を添付して数体まとめて斬り払った。
ほぼ同時に電磁場の揺らぎが見え、後ろから迫る敵のイメージが浮かんだので、誠は機体をひねりながら強化刀を背後に突き出す。
敵は口の中を串刺しにされ、痙攣しながら溶け落ちて行った。
撃つ、よける、斬る、かわしながら穿つ……!!!
ほとんど全てが一瞬であり、誠が対処する度、餓霊どもはたちどころに四散していく。
敵の数はどんどん減って、味方は次第に体勢を立て直したのだ。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
【完結】伝説の悪役令嬢らしいので本編には出ないことにしました~執着も溺愛も婚約破棄も全部お断りします!~
イトカワジンカイ
恋愛
「目には目をおおおお!歯には歯をおおおお!」
どごおおおぉっ!!
5歳の時、イリア・トリステンは虐められていた少年をかばい、いじめっ子をぶっ飛ばした結果、少年からとある書物を渡され(以下、悪役令嬢テンプレなので略)
ということで、自分は伝説の悪役令嬢であり、攻略対象の王太子と婚約すると断罪→死刑となることを知ったイリアは、「なら本編にでなやきゃいいじゃん!」的思考で、王家と関わらないことを決意する。
…だが何故か突然王家から婚約の決定通知がきてしまい、イリアは侯爵家からとんずらして辺境の魔術師ディボに押しかけて弟子になることにした。
それから12年…チートの魔力を持つイリアはその魔法と、トリステン家に伝わる気功を駆使して診療所を開き、平穏に暮らしていた。そこに王家からの使いが来て「不治の病に倒れた王太子の病気を治せ」との命令が下る。
泣く泣く王都へ戻ることになったイリアと旅に出たのは、幼馴染で兄弟子のカインと、王の使いで来たアイザック、女騎士のミレーヌ、そして以前イリアを助けてくれた騎士のリオ…
旅の途中では色々なトラブルに見舞われるがイリアはそれを拳で解決していく。一方で何故かリオから熱烈な求愛を受けて困惑するイリアだったが、果たしてリオの思惑とは?
更には何故か第一王子から執着され、なぜか溺愛され、さらには婚約破棄まで!?
ジェットコースター人生のイリアは持ち前のチート魔力と前世での知識を用いてこの苦境から立ち直り、自分を断罪した人間に逆襲できるのか?
困難を力でねじ伏せるパワフル悪役令嬢の物語!
※地学の知識を織り交ぜますが若干正確ではなかったりもしますが多めに見てください…
※ゆるゆる設定ですがファンタジーということでご了承ください…
※小説家になろう様でも掲載しております
※イラストは湶リク様に描いていただきました
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
あなたの子ですが、内緒で育てます
椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」
突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。
夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。
私は強くなることを決意する。
「この子は私が育てます!」
お腹にいる子供は王の子。
王の子だけが不思議な力を持つ。
私は育った子供を連れて王宮へ戻る。
――そして、私を追い出したことを後悔してください。
※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ
※他サイト様でも掲載しております。
※hotランキング1位&エールありがとうございます!
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
嫌われ者の悪役令息に転生したのに、なぜか周りが放っておいてくれない
AteRa
ファンタジー
エロゲの太ったかませ役に転生した。
かませ役――クラウスには処刑される未来が待っている。
俺は死にたくないので、痩せて死亡フラグを回避する。
*書籍化に際してタイトルを変更いたしました!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる