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第六章その13 ~もしも立場が違ったら~ それぞれの決着編

鶴と天音・最後の戦い

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「やあああああああっっっ!!!」

 巨大化したコマの背にまたがり、鶴は天音に切りかかっていく。

 天音は邪龍の上に乗り、こちらを迎えうっていた。

 恐らく気付いたのだろう。

 何かに乗っている間は、移動や回避を考えなくていい。結果として雑念が減り、自分の術に集中できるのだ。

 コマや黒鷹の機体に乗っていた有利がこれで消えた。そう鶴は直感で理解した。

 でもそんな事で怯んでいられない。自分だって強くなったのだ。みんなに、そして愛しい黒鷹に、沢山の勇気をもらったのだ。



 龍が吐き出す炎弾を受けながら、コマが真っ向から突っ込んだ。

 頭突きで龍を怯ませると、両者は絡み合って落下していく。

 鶴が太刀を振るい、天音が光の太刀でそれを受ける。

 龍とコマは互いに噛みあい、蹴り合って離れた。

 そこで天音が術を発動する。

 彼女の傍に巨大な鏡が現れると、そこから無数の手が伸びたのだ。

 死人のごときそれらの腕は、うねりながら鶴の元へと殺到した。

 コマは床を走り、壁を蹴って大きくジャンプする。

「馬鹿めっ、宙に浮いては避けられまいっ!!!」

 天音の言葉通り、無数の手は凄まじい速度で追尾する。

 だがそれは、鶴もコマも予測済みだった。この技を見たのは2回目だからだ。

「コマっ、今よっ!!!」

 鶴が叫ぶと同時に、虚空に円形の光が輝いた。

 霊気で作った足場であり、コマは空中でそれを蹴って、天音をめがけ突進したのだ。

「なっ、なんだとっっっ!?」

 予想外のコマの動きに、天音と龍は体勢を崩した。

「くそっ、忌々いまいましいっ!!!」

 天音は鏡を消し去ると、左手を高く掲げる。鶴も同じ動作をとった。

 たちまち2人の頭上に、白と黒、色違いの気が膨れ上がった。

 天之破魔弓あめのはまゆみ……闇に堕ちたかつての聖者と、堕ちなかった鶴が放つ、同じ女神から学んだ技だ。

「やあああああああっっっ!!!」

「おおおおおおおおっっっ!!!」

 !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 弧を描き、相手をめがけて殺到する術は、激しい音を立てて相殺しあった。

 鶴も天音もよろめいて、コマと邪龍が同時に距離をとった。

 だがそこで、鶴は急激に眩暈めまいを覚えた。

「……っ!?」

 まるで頭から、自分の意識が染み出そうとするかのような感覚だ。

「ぐっ……!?」

 天音も同様の異変を感じたようで、頭を押さえてよろめいた。

「何だ、反魂の術の影響か……!?」

 そう呟く天音の周りの空間が虹色に彩られた。

 彼女の意識が、思考が、どんどん周囲に漏れ出ていくのだ。

 鶴はその思念の波動を敏感に感じ取った。

「…………っ!」

 そこに宿る怒りと憎しみの総量に、鶴は思わず息を飲む。

 そしてその憎しみの影に、耐え難い悲しみの念が見え隠れしている事も、鶴はもう気付いていた。
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