55 / 160
第六章その7 ~みんなで乾杯!~ グルメだらけの大宴会編
大人ってすごい。いつの間にかくっついてる
しおりを挟む
「…………つ、津和野……さん???」
誠達の視線に気付き、津和野は真っ赤になって取りつくろった。
「あっ、いえですね、ディアヌスを倒した後、全部の船団が関東に集ったでしょう? その時にご縁がありまして、おほほっ、おほほほほほっ」
「まあ、うまい事やるもんだわ。私も見習わなきゃ」
鶴はしたり顔で頷くが、誠はそこで、台車を押す少年少女が片目を閉じているのに気が付いた。
「あっ! もしかして小豆島の守備隊……!?」
彼らは嬉しそうに敬礼してきた。
「はい、お久しぶりです。あれから色々ありましたが、自分達も1人前ですよ」
彼らの肩にはしょうゆの瓶やそうめんがいて、手を腰?に当てて誇らしげにしている。
「そりゃそーさ。四国の防衛戦で、俺や香川が鍛えたかんな」
「いや、ほんと何度死を覚悟した事か。事あるごとに、宮島が変なフラグを立てる立てる。その度に強い餓霊が出てきてなあ」
「いーじゃんか香川。強いのが俺らのとこに来たら、他の部隊が怪我しないだろ」
宮島が言うと、そこで池谷中佐が口を挟んだ。
「……いや、すまない宮島君。本来なら、そのセリフは私達が受け持つべきものなんだ。子供の君に言わせるなんてな」
池谷中佐は、その場の一同を見渡して言った。
「私達は大人だ。君達の盾になって守るべき存在だ。それがこんな事しか出来ないんだから……」
「そ、そんな事ないですよ。ずっと守ってもらってたし……夏木さんだって、その」
誠達はしんみりするが、そんな少年少女を励ますように、木崎少佐はわざと明るい口調で言った。
「まあ俺達もね、最後の最後は我儘になろうと思ってるんだよ。夏木にだけ格好付けさせるのも癪だから」
「……そういう事だな。その時は私も参加するつもりだ」
池谷中佐もニヤリと笑う。
「それじゃみんな、私達は撤退するから。部下達が探しに来たら、旅に出たとでも言ってくれ」
中佐達はそれだけ言うと、夜の闇へと消えて行ったのだ。
誠達はしばしその後ろ姿を見送ったが、やがて宮島が呟いた。
「……大人ってすげえよな」
「何やの急にしみじみと」
難波がツッコミを入れると、宮島はスプーンを掲げながら説明する。
「いや、隊長も言ってたじゃんか。あのパワーアップした餓霊とか、ヨモツなんたらに追いかけられた時にさ。最初の餓霊って、このぐらい絶望的だったんだって。それでも守ってくれたんだもん」
「確かに……俺達はまだ多少は効く武器があったけど、最初は何も無かったからな」
誠が言うと、皆はぽつりぽつりと思い出を語り始めた。
あの日突然訪れた生物災害。
家族も友達も遊び場も、日常が文字通り音を立てて崩れ、絶望の色に染まったのだ。
それでも生きてこられたのは、助けてくれた大人達がいたからだ。
「そりゃーたまに嫌な奴もおったけど、考えてみたら、みんなむっちゃ親切やった気がするわ。みーんな並んで順番守ってたし、悪いやつも殆どおらんかった」
難波の言葉に一同は頷く。
確かに恐ろしい事も沢山あった。
でもそんな苦しい時でも、映画で見たような争いは殆どなかった。
みんな並んで物資を受け取っていたし、他人の家の物にもほとんど手をつけなかった。どうしても必要な時は、お金や手紙を置いていった人もいた。
悪い奴や窃盗団もたまにいたけど、それ以外には略奪もほとんど起きなかったのだ。
「別に不思議な事じゃないわ。ずっとそうしてきたのよ、きっと」
鶴はコマにキャメラを渡し、少し神妙な顔で言うのだ。
「ずうっと昔、それこそ何千年も前から、みんな助け合って生きてきたのよ。チラッ……だから今があるんだし……チラッ……どんな恐ろしい事があっても、その絆の糸は切れないわ」
「いい事言ってるけど鶴、そのドヤ顔はやめてよ」
コマのツッコミに誠達は笑うのだったが、そこでまたも訪問者があったのだ。
「あれっ、もう始めてたんですね。しかもこれはカレーの匂い?」
目をやると、入り口には小柄な白衣の少女・ひよりと、おさげの髪でツナギを着たなぎさが立っていた。
2人とも船団長の二風谷氏の娘であり、バリバリの道産子なのだが、縁あって第5船団で働いていたのだ。
しかも2人の後ろには、20代半ばほどの2人の女性が……つまりは雪菜と天草までいたのである。
全員が白い発泡スチロールの大箱を持っていたが、雪菜は体力があるため、山積みの箱を降ろしながら微笑んだ。
「みんなお疲れ様。仕事はまだあるんだけど、いてもたってもいられなくて。ちょっとだけ抜け出してきちゃった」
「わ、私も……雪菜の付き添いでね」
天草氏も少し照れくさそうに後を受ける。
蓋を取ると、降ろされた発泡スチロールの大箱には、見事なカニが詰まっていたのだ。
『う、うわあああっ、カニだあああっっっ!!!!!』
一同のテンションはクライマックスに達した。
ひよりはイタズラっぽく皆に言う。
「折角持ってきたんですけど、もう満腹ですかね?」
『ノーノー、食べる!!!』
「でしょ?」
全員が首を振るのを満足げに眺め、ひよりはさっそく調理を始める。
「今日はこのカニをたっぷり入れて、お味噌汁にしちゃいましょう。あとはカニイクラ丼!」
瞬く間に料理は出来上がり、みんなで豪華なメニューに舌鼓をうった。
誠達の視線に気付き、津和野は真っ赤になって取りつくろった。
「あっ、いえですね、ディアヌスを倒した後、全部の船団が関東に集ったでしょう? その時にご縁がありまして、おほほっ、おほほほほほっ」
「まあ、うまい事やるもんだわ。私も見習わなきゃ」
鶴はしたり顔で頷くが、誠はそこで、台車を押す少年少女が片目を閉じているのに気が付いた。
「あっ! もしかして小豆島の守備隊……!?」
彼らは嬉しそうに敬礼してきた。
「はい、お久しぶりです。あれから色々ありましたが、自分達も1人前ですよ」
彼らの肩にはしょうゆの瓶やそうめんがいて、手を腰?に当てて誇らしげにしている。
「そりゃそーさ。四国の防衛戦で、俺や香川が鍛えたかんな」
「いや、ほんと何度死を覚悟した事か。事あるごとに、宮島が変なフラグを立てる立てる。その度に強い餓霊が出てきてなあ」
「いーじゃんか香川。強いのが俺らのとこに来たら、他の部隊が怪我しないだろ」
宮島が言うと、そこで池谷中佐が口を挟んだ。
「……いや、すまない宮島君。本来なら、そのセリフは私達が受け持つべきものなんだ。子供の君に言わせるなんてな」
池谷中佐は、その場の一同を見渡して言った。
「私達は大人だ。君達の盾になって守るべき存在だ。それがこんな事しか出来ないんだから……」
「そ、そんな事ないですよ。ずっと守ってもらってたし……夏木さんだって、その」
誠達はしんみりするが、そんな少年少女を励ますように、木崎少佐はわざと明るい口調で言った。
「まあ俺達もね、最後の最後は我儘になろうと思ってるんだよ。夏木にだけ格好付けさせるのも癪だから」
「……そういう事だな。その時は私も参加するつもりだ」
池谷中佐もニヤリと笑う。
「それじゃみんな、私達は撤退するから。部下達が探しに来たら、旅に出たとでも言ってくれ」
中佐達はそれだけ言うと、夜の闇へと消えて行ったのだ。
誠達はしばしその後ろ姿を見送ったが、やがて宮島が呟いた。
「……大人ってすげえよな」
「何やの急にしみじみと」
難波がツッコミを入れると、宮島はスプーンを掲げながら説明する。
「いや、隊長も言ってたじゃんか。あのパワーアップした餓霊とか、ヨモツなんたらに追いかけられた時にさ。最初の餓霊って、このぐらい絶望的だったんだって。それでも守ってくれたんだもん」
「確かに……俺達はまだ多少は効く武器があったけど、最初は何も無かったからな」
誠が言うと、皆はぽつりぽつりと思い出を語り始めた。
あの日突然訪れた生物災害。
家族も友達も遊び場も、日常が文字通り音を立てて崩れ、絶望の色に染まったのだ。
それでも生きてこられたのは、助けてくれた大人達がいたからだ。
「そりゃーたまに嫌な奴もおったけど、考えてみたら、みんなむっちゃ親切やった気がするわ。みーんな並んで順番守ってたし、悪いやつも殆どおらんかった」
難波の言葉に一同は頷く。
確かに恐ろしい事も沢山あった。
でもそんな苦しい時でも、映画で見たような争いは殆どなかった。
みんな並んで物資を受け取っていたし、他人の家の物にもほとんど手をつけなかった。どうしても必要な時は、お金や手紙を置いていった人もいた。
悪い奴や窃盗団もたまにいたけど、それ以外には略奪もほとんど起きなかったのだ。
「別に不思議な事じゃないわ。ずっとそうしてきたのよ、きっと」
鶴はコマにキャメラを渡し、少し神妙な顔で言うのだ。
「ずうっと昔、それこそ何千年も前から、みんな助け合って生きてきたのよ。チラッ……だから今があるんだし……チラッ……どんな恐ろしい事があっても、その絆の糸は切れないわ」
「いい事言ってるけど鶴、そのドヤ顔はやめてよ」
コマのツッコミに誠達は笑うのだったが、そこでまたも訪問者があったのだ。
「あれっ、もう始めてたんですね。しかもこれはカレーの匂い?」
目をやると、入り口には小柄な白衣の少女・ひよりと、おさげの髪でツナギを着たなぎさが立っていた。
2人とも船団長の二風谷氏の娘であり、バリバリの道産子なのだが、縁あって第5船団で働いていたのだ。
しかも2人の後ろには、20代半ばほどの2人の女性が……つまりは雪菜と天草までいたのである。
全員が白い発泡スチロールの大箱を持っていたが、雪菜は体力があるため、山積みの箱を降ろしながら微笑んだ。
「みんなお疲れ様。仕事はまだあるんだけど、いてもたってもいられなくて。ちょっとだけ抜け出してきちゃった」
「わ、私も……雪菜の付き添いでね」
天草氏も少し照れくさそうに後を受ける。
蓋を取ると、降ろされた発泡スチロールの大箱には、見事なカニが詰まっていたのだ。
『う、うわあああっ、カニだあああっっっ!!!!!』
一同のテンションはクライマックスに達した。
ひよりはイタズラっぽく皆に言う。
「折角持ってきたんですけど、もう満腹ですかね?」
『ノーノー、食べる!!!』
「でしょ?」
全員が首を振るのを満足げに眺め、ひよりはさっそく調理を始める。
「今日はこのカニをたっぷり入れて、お味噌汁にしちゃいましょう。あとはカニイクラ丼!」
瞬く間に料理は出来上がり、みんなで豪華なメニューに舌鼓をうった。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
おにぎり屋さんの裏稼業 〜お祓い請け賜わります〜
瀬崎由美
キャラ文芸
高校2年生の八神美琴は、幼い頃に両親を亡くしてからは祖母の真知子と、親戚のツバキと一緒に暮らしている。
大学通りにある屋敷の片隅で営んでいるオニギリ屋さん『おにひめ』は、気まぐれの営業ながらも学生達に人気のお店だ。でも、真知子の本業は人ならざるものを対処するお祓い屋。霊やあやかしにまつわる相談に訪れて来る人が後を絶たない。
そんなある日、祓いの仕事から戻って来た真知子が家の中で倒れてしまう。加齢による力の限界を感じた祖母から、美琴は祓いの力の継承を受ける。と、美琴はこれまで視えなかったモノが視えるようになり……。
第8回キャラ文芸大賞にエントリー中です。
応援をよろしくお願いいたします。
【完結】星の海、月の船
BIRD
キャラ文芸
核戦争で人が住めなくなった地球。
人類は箱舟計画により、様々な植物や生物と共に7つのスペースコロニーに移住して生き残った。
宇宙飛行士の青年トオヤは、月の地下で発見された謎の遺跡調査の依頼を受ける。
遺跡の奥には1人の少年が眠る生命維持カプセルがあった。
何かに導かれるようにトオヤがカプセルに触れると、少年は目覚める。
それはトオヤにとって、長い旅の始まりでもあった。
宇宙飛行士の青年と異星人の少年が旅する物語、様々な文明の異星での冒険譚です。
クラス転移したからクラスの奴に復讐します
wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。
ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。
だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。
クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。
まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。
閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。
追伸、
雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。
気になった方は是非読んでみてください。
異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが
倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、
どちらが良い?……ですか。」
「異世界転生で。」
即答。
転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。
なろうにも数話遅れてますが投稿しております。
誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。
自分でも見直しますが、ご協力お願いします。
感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。
若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双
たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。
ゲームの知識を活かして成り上がります。
圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。
毎日記念日小説
百々 五十六
キャラ文芸
うちのクラスには『雑談部屋』がある。
窓側後方6つの机くらいのスペースにある。
クラスメイトならだれでも入っていい部屋、ただ一つだけルールがある。
それは、中にいる人で必ず雑談をしなければならない。
話題は天の声から伝えられる。
外から見られることはない。
そしてなぜか、毎回自分が入るタイミングで他の誰かも入ってきて話が始まる。だから誰と話すかを選ぶことはできない。
それがはまってクラスでは暇なときに雑談部屋に入ることが流行っている。
そこでは、日々様々な雑談が繰り広げられている。
その内容を面白おかしく伝える小説である。
基本立ち話ならぬすわり話で動きはないが、面白い会話の応酬となっている。
何気ない日常の今日が、実は何かにとっては特別な日。
記念日を小説という形でお祝いする。記念日だから再注目しよう!をコンセプトに小説を書いています。
毎日が記念日!!
毎日何かしらの記念日がある。それを題材に毎日短編を書いていきます。
題材に沿っているとは限りません。
ただ、祝いの気持ちはあります。
記念日って面白いんですよ。
貴方も、もっと記念日に詳しくなりません?
一人でも多くの人に記念日に興味を持ってもらうための小説です。
※この作品はフィクションです。作品内に登場する人物や団体は実際の人物や団体とは一切関係はございません。作品内で語られている事実は、現実と異なる可能性がございます…
愛想を尽かした女と尽かされた男
火野村志紀
恋愛
※全16話となります。
「そうですか。今まであなたに尽くしていた私は側妃扱いで、急に湧いて出てきた彼女が正妃だと? どうぞ、お好きになさって。その代わり私も好きにしますので」
異世界召喚されたら無能と言われ追い出されました。~この世界は俺にとってイージーモードでした~
WING/空埼 裕@書籍発売中
ファンタジー
1~8巻好評発売中です!
※2022年7月12日に本編は完結しました。
◇ ◇ ◇
ある日突然、クラスまるごと異世界に勇者召喚された高校生、結城晴人。
ステータスを確認したところ、勇者に与えられる特典のギフトどころか、勇者の称号すらも無いことが判明する。
晴人たちを召喚した王女は「無能がいては足手纏いになる」と、彼のことを追い出してしまった。
しかも街を出て早々、王女が差し向けた騎士によって、晴人は殺されかける。
胸を刺され意識を失った彼は、気がつくと神様の前にいた。
そしてギフトを与え忘れたお詫びとして、望むスキルを作れるスキルをはじめとしたチート能力を手に入れるのであった──
ハードモードな異世界生活も、やりすぎなくらいスキルを作って一発逆転イージーモード!?
前代未聞の難易度激甘ファンタジー、開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる