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第六章その5 ~恐怖の助っ人!?~ ディアヌスとの再会編

サクちゃんはイタズラッコ

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「よし、どんどん道が開けてきたぞ!」

 誠はホワイトボードの②、つまり結界に関する項目を消したが、そこで船団長の佐々木が言った。

「い、いやあ、素晴らしいですな。実に全く素晴らしい! その作戦を成功させるためにも、決戦地まで戦力を送り届けねばなりません」

 佐々木は喋りながらそろそろと立ち上がっていく。

「それは我々に任せていただきたい! 船の手配もいたしますし、どのルートを通れば妨害無くたどり付けるか、こちらでしっかり調べますので。それではまた」

 佐々木はそそくさとその場を後にしようとした。他の船団長も同様であり、よほどディアヌスが怖いようだ。

 だがそこで、ディアヌスが声を上げた。

「…………おい」

「ひっ!?」

 佐々木は全身から汗を流して固まった。

 てっきり怒られると思ったのだろうが、ディアヌスは腕組みして言葉を続けた。

「貴様らではない。そこな女神に言ったのだ」

「そうね、今戻ったわ」

 不意に聞き慣れた声がしたため、誠達は振り返った。

 そこに佐久夜姫が立っていたのだ。

 佐久夜姫はウインクしながら『イエイ』とピースサインを出している。

「………………」

 一瞬、皆が無言だったが、次の瞬間。

『う、うわああああああっっっ!!!』

 一同が絶叫し、ディアヌスが咆えた。

「やかましいわ貴様らっっっ!!!」

 再び静まり返った所で、佐久夜姫は楽しげに言った。

「ふふふ、みんないいリアクションね」

「い、いやいや、いやいやいやいや……消えたんじゃなかったんですか……!?」

「消えてないわよ、疲れて動けなくなってただけ」

 誠の問いに、佐久夜姫はイタズラっぽく答える。

「でも私、あの近くの……富士のお山が鎮座地でしょ? あの上までは邪気も来てなかったから、そこの霊気で充電してたわけ」

「こ、こんな短期間で治るんですか?」

「魔法傷を受けたわけじゃないもの」

 佐久夜姫は人差し指を立て、得意げに左右に振って見せた。

「神は霊体だし、魂の核さえ残ってればいいの。あとは霊気を補給すればよし。軸となる魂が砕けてたら……そうはいかないんだけどね」

 最後の言葉は、恐らく岩凪姫の事を言っているのだろう。

 それは悲しい事実だったが、それでも神使達は大喜びで佐久夜姫を取り囲み、肩に乗ったキツネや牛が、紙吹雪を振りまいている。

 鶴も少し目に涙を浮かべながら言った。

「まったく、ほんとにサクちゃんときたら、とんでもないイタズラッコだわ。私も負けてられないわね」

「いやいや、君は度が過ぎるんだよ」

 ラッコの着ぐるみ姿で言う鶴に、コマは慌ててツッコミを入れるが、2人ともとても嬉しそうだった。

 ひとしきり再会を喜んだところで、佐久夜姫は皆に言った。

「移動に関しては、私が何としても皆を送るわ。お姉ちゃんが残した、この転移の腕輪でね」

 佐久夜姫はそこで輝く腕輪を取り出すが、ディアヌスが口を挟む。

「転移の腕輪……天鳥船神アメノトリフネが作ったものか。見たところ、まるで霊気が空ではないか」

「それは心配ご無用よ」

 佐久夜姫はそう言うと、パチリと指を弾く。たちまち光が輝いて、虚空に日本列島が映し出された。

 誠達がそれを見ると、東北から旧長野県の辺りまで繋がる山地が、うっすらと光を帯びているのが分かった。

「日本の屋台骨となる山地のエネルギーと、この転移の神器を合わせれば、空間転移の大魔法が使えるわ。かなり大地の力を枯れさせるし、結界の中までは行けないけどね」

「禁術か。今度こそ貴様も危ういかもしれんぞ?」

 ディアヌスが言うと、佐久夜姫はディアヌスを睨んだ。

「だからどうだと言うのかしら? 国家総鎮守こっかそうちんじゅが神たる大山積おおやまつみの娘であり、偉大な姉を持つ私が、怖気づいてなどいられないわ。例えあなたが相手でもね?」

 佐久夜姫は語気に力を込めながら、念押しするように言う。

「はっきり言っておくわ。今は共闘してるようだけど、もしこの子達に危害を加えるなら、容赦しないつもりだから」

「……………………」

 ディアヌスは無言で佐久夜姫を睨む。

 見守る一同は、そのぴりついた雰囲気に震えていたが、やがてディアヌスが口を開いた。

「……ふん。姉妹そろって面白い連中だ」

 ディアヌスは足を組み直し、やや口元を歪めて笑みを浮かべた。

「貴様と闘るのも楽しみだが、生憎今は同盟中だ。その気勢に免じて、我も少しは動いてやろう」

「う、動く……ですか?」

 少し安堵した誠達に、ディアヌスは牙をむき出して言った。

「そうだ。細かいからめ手は好かんが、あのくずどもが相手なら別だ。我をたばかった事、たっぷり後悔させてくれる……!」
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