上 下
41 / 160
第六章その5 ~恐怖の助っ人!?~ ディアヌスとの再会編

勉強するなら図書館がいい。家だとどうしても寝ちゃうから

しおりを挟む
「うんうん、素敵ね。やっぱりここがいいわ」

 ロビーに到着した途端、鶴は満足げに頷いた。

 肩に乗るコマは、困った顔で鶴に言う。

「ねえ鶴、さっきの輸送機で良かったんじゃない? なんでいきなり図書館なのさ」

「前を通ってぴんときたのよ。なんとなく明るくて爽やかだもの」

 一同が移動したのは、避難区内の図書館だった。

 よく都市部にあるような、明るく近代的な建物……その玄関ロビーの円形ソファースペースに、誠達は集まっているのだ。

 輸送機に戻ろうと通りかかると、鶴がなぜかここを気に入り、強引に一同を引っ張り込んだのである。

 ソファーの感触がお気に召したのか、今は足を組んでふんぞり返るディアヌスは、別にこういう人がいてもおかしくは…………いや、おかしくはあるが、ギリギリいない事もない、という範囲におさまってくれていた。

 すぐ傍には、昔の観光パンフレットなどを収納した棚もあって、鶴は興味津々でそれらを手に取っていた。

「ねえコマ、北海道物産展ですって。このカニイクラ丼がいいわね」

「確かにおいしそうだけどさ、せめて勝ってから見ようよ」

「よしっ! 宮島はトイレだけど、取り合えず始めるか」

 誠は受付のホワイトボードを借りてきて、そこに先ほどと同じように敵戦力を書き込んでいく。

①、夜祖が築いた堅固な砦の備え

②、邪神(女神)が張る広範囲の結界

③、千里眼の絶対命中する遠距離狙撃

④、パワーアップした強力な餓霊たち

⑤、触られれば即アウトの黄泉の軍勢や黄泉醜女ヨモツシコメ

⑥、肉体のない邪霊の呪い(※霊的に修行してない人なら即死)

⑦、館の中にいる邪神達(※まだ完全に復活はしてない)

⑧、柱の最下層で続行中の反魂の術(※時間とともにどんどん邪神が出てくる。最強の闇の盟主の復活近し)

 ここまで書いて、誠は④と⑥の部分を線で消す。

「とりあえずこの2つはなんとかなるな。餓霊に攻撃が通じるし、邪霊の呪いも、逆鱗のあるパイロットは耐えられると」

 そこで鳳が口を挟んだ。

「黒鷹様。邪霊に関しては、私達も協力できます。逆鱗のない船の乗組員は、全神連や神使で守りますよ」

「せや、ワイらに任せや!」

「モウレツに頑張るのです!」

 神使達は騒ぎたてるが、ディアヌスにじろりと睨まれ、再び誠の後ろに隠れた。

 誠はホワイトボードを見据え、腕組みして皆に言う。

「他にも問題は山積みだけど……次に大事なのは②と③だな。特に千里眼の狙撃。これをクリアしなきゃ、はなから近づけないんだから」

 一同は再び考え込んだ。

 はっきり言って反則チートにも程がある邪神だった。

 遠距離から絶対当たる射撃を繰り出し、その1発ずつが恐ろしい威力。

 背中の矢を射尽くした後、再度矢が現れるまで数瞬のタイムラグがあるものの、とてもそんな間に距離を詰められない。

 もしこちらが航空戦艦を繰り出しても、一瞬で全滅させられるだろう。

「砦の守りも硬いだろうし……近付かずに攻撃できる航空戦艦は必須なんだけど。この邪神がいる以上、真っ先に沈められるよな」

「そんな理屈はどうでもいい。この我を舐め腐った彼奴きゃつを、必ず血祭りにあげるのだ……!」

「そ、そうしたいとこなんですが……絶対外さない射撃なんてどうすればいいのか」

 苛立つディアヌスに冷や汗を流しながら、誠は必死に考える。

 だがそこで、ふと何かが頭にひっかかった。

(絶対? 絶対外さない? 違う、一度外れただろ? 確かあの時……)

 誠は鶴に向き直った。

「ヒメ子、神器のタブレットに、奴との戦いを映せるか?」

「任せて黒鷹」

 鶴は神器のタブレットを取り出し、大型テレビほどに巨大化させた。

 千里眼が映るなり、デイアヌスが苛立って歯軋はぎしりを始め、一同は震え上がったが、誠は頑張って画面を見つめる。

 逃げ惑う車列に、千里眼は容赦のない射撃を加えていった。

 こちらの防御も簡単に貫くし、誠の人型重機でも、その攻撃はかわせなかった。

 そう、あの一撃以外はだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!

芽狐
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️ ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。  嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる! 転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。 新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか?? 更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!

【完結】伝説の悪役令嬢らしいので本編には出ないことにしました~執着も溺愛も婚約破棄も全部お断りします!~

イトカワジンカイ
恋愛
「目には目をおおおお!歯には歯をおおおお!」   どごおおおぉっ!! 5歳の時、イリア・トリステンは虐められていた少年をかばい、いじめっ子をぶっ飛ばした結果、少年からとある書物を渡され(以下、悪役令嬢テンプレなので略) ということで、自分は伝説の悪役令嬢であり、攻略対象の王太子と婚約すると断罪→死刑となることを知ったイリアは、「なら本編にでなやきゃいいじゃん!」的思考で、王家と関わらないことを決意する。 …だが何故か突然王家から婚約の決定通知がきてしまい、イリアは侯爵家からとんずらして辺境の魔術師ディボに押しかけて弟子になることにした。 それから12年…チートの魔力を持つイリアはその魔法と、トリステン家に伝わる気功を駆使して診療所を開き、平穏に暮らしていた。そこに王家からの使いが来て「不治の病に倒れた王太子の病気を治せ」との命令が下る。 泣く泣く王都へ戻ることになったイリアと旅に出たのは、幼馴染で兄弟子のカインと、王の使いで来たアイザック、女騎士のミレーヌ、そして以前イリアを助けてくれた騎士のリオ… 旅の途中では色々なトラブルに見舞われるがイリアはそれを拳で解決していく。一方で何故かリオから熱烈な求愛を受けて困惑するイリアだったが、果たしてリオの思惑とは? 更には何故か第一王子から執着され、なぜか溺愛され、さらには婚約破棄まで!? ジェットコースター人生のイリアは持ち前のチート魔力と前世での知識を用いてこの苦境から立ち直り、自分を断罪した人間に逆襲できるのか? 困難を力でねじ伏せるパワフル悪役令嬢の物語! ※地学の知識を織り交ぜますが若干正確ではなかったりもしますが多めに見てください… ※ゆるゆる設定ですがファンタジーということでご了承ください… ※小説家になろう様でも掲載しております ※イラストは湶リク様に描いていただきました

嫌われ者の悪役令息に転生したのに、なぜか周りが放っておいてくれない

AteRa
ファンタジー
エロゲの太ったかませ役に転生した。 かませ役――クラウスには処刑される未来が待っている。 俺は死にたくないので、痩せて死亡フラグを回避する。 *書籍化に際してタイトルを変更いたしました!

未亡人クローディアが夫を亡くした理由

臣桜
キャラ文芸
老齢の辺境伯、バフェット伯が亡くなった。 しかしその若き未亡人クローディアは、夫が亡くなったばかりだというのに、喪服とは色ばかりの艶やかな姿をして、毎晩舞踏会でダンスに興じる。 うら若き未亡人はなぜ老齢の辺境伯に嫁いだのか。なぜ彼女は夫が亡くなったばかりだというのに、楽しげに振る舞っているのか。 クローディアには、夫が亡くなった理由を知らなければならない理由があった――。 ※ 表紙はニジジャーニーで生成しました

ヒューストン家の惨劇とその後の顛末

よもぎ
恋愛
照れ隠しで婚約者を罵倒しまくるクソ野郎が実際結婚までいった、その後のお話。

処理中です...