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第六章その2 ~あきらめないわ!~ 不屈の本州脱出編

どんな時でもナイスポーズ! ボディビルダーの鏡

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「姫様からのご連絡じゃい! ここからはもっと飛ばすぞ!」

 今は虎ぐらいに巨大化した狛犬・ガンパチは、背の誠に向けて怒鳴る。

「分かった!」

 誠が答えると、狛犬かれは一気に建物に駆け上がった。

 まだ建設中の屋根にのぼると、穴が開いている場所は身軽に飛び越えていく。

 屋根には他にも神使が見えて、背に隊員達を乗せていた。

 難波がキツネ、カノンが牛、宮島が猿で香川が龍という組み合わせだが、龍は走りながら次々ポーズをとっている。

 その度に速度が鈍り、併走する黄泉醜女ヨモツシコメが手を伸ばすので、香川がたまらず悲鳴を上げた。

「うおいっこらっ、追いつかれるだろ!? 頼むからポーズは後にしてくれっ!」

「それは却下だ!」

 龍は攻撃をかわしながら笑顔で答える。

 やがて鶴とコマも合流し、一同はひたすら屋根を駆け抜けた。

 だが闇雲に走っているわけではない。

 屋根から屋根へ飛び移りながら、町の中央へおびき寄せているのだ。

「そろそろいくわ! 音ちゃん、今よっ!」

 !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 鶴の号令と共に、凄まじい地響きが湧き起こった。

 走っている屋根が、いや巨大な居住区そのものが、モウレツに揺れ動いたのだ。

 そしてほぼ同時に餓霊や黄泉醜女ヨモツシコメが、急激に速度を鈍らせた。

 路面に光のさざなみが走ると、建物は傾き、化け物と一緒にどんどん下に沈んでいく。

「やったわ、大成功ね!」

 鶴はガッツポーズで喜んだ。

 している事は単純明快、音羽隊が爆薬をしかけ、地下の基礎部分と貯水槽を崩したのだ。

 破砕したコンクリートは細かい砂となり、相手がいくらもがいても、なかなか上に這い上がれない。

 近隣を巡回する餓霊の群れと、一番厄介な黄泉醜女ヨモツシコメが動けなければ、逃げられる可能性が格段に増すのだ……!



 傾く屋根を飛び移り、居住区の端が近付くと、彼方から猛然と迫る車両が見えた。こちらを目指してつっ走る、輸送車とバスである。

 彼らも餓霊に追われていたが、敵の数が少ないため、身をかわすのは容易かったはず。

 鳳が車両の窓から顔を出して叫んだ。

「皆さま、お早くっ!!!」

 神使達は屋根から飛び降り、車の傍に駆け寄ると、勢い良く車内に飛び乗った。

 そのまま車は唸りを上げ、タイヤから火花を上げて速度を上げた。

 追いかける餓霊どもは、苦しげに唸り声を上げる。

 火車の車体前面にある人の顔が、心なしか悲壮な表情に変わっていた。

「今にも泣きそうね。きっと逃がしたら怒られるんだわ」

 鶴がドヤ顔で言うと、宮島が耐え切れずに歓声を上げた。

「いよっしゃあ! 見たかこんちくしょう、これでおさらばだぜっ!」

 子犬サイズに縮んだ神使も、飛び跳ねながら叫んでいる。

「ざまあみろ、どんなもんじゃいっ!」

「ワイらを甘くみたからやで!」

「モウ来ないで下さい!」

「見ざる聞かざる、追わざるでさあ!」

「下半身が弱いっ、鍛え直して出直して来いっ!」

 先に脱出した音羽隊も、もちろんバスの被災者達も、抱き合って喜んでいる。

(何とか……逃げられたのか?)

 誠は緊張の糸が切れかけ、くらくらと眩暈めまいを覚えたのだが。

(いや、まだ駄目だ、まだ終わってない。ちゃんと避難するまでは……)

 そう言い聞かせ、己に無理やり鞭を入れる。

 無事に避難が終わるまで、倒れるわけにはいかないのだ。
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