上 下
69 / 110
第四章その7 ~急転直下!~ 始まりの高千穂研究所編

その目を見れない…!

しおりを挟む
 上空を飛行しながら、誠は独りでに声が漏れていた。

「凄いな……日本じゃないみたいだ……!」

 それは何という光景だっただろう。関が原から東海にかけ、本州はあちこち地割れのように赤い炎が覗いていた。そしてそこから青い気が噴き出し、あふれ、列島各地をうるおしているのだ。

 それは創世の時を迎えた列島が、激しいエネルギーを発して産声うぶごえを上げているようにも思えた。

 スケールはさすがに違うが、かつて九州で地獄巡りをした時のような、荒々しい惑星ほし息吹いぶきを感じさせる。

「…………!」

 誠が目線を動かすと、彼方には黒く凝り固まった暗雲も見えた。時折強く稲妻が輝き、その下の強力無比な存在を匂わせていた。

(あの下に魔王がいる……!)

 あれが来た時が決着の時だし、泣いても笑っても、これが最後の戦いだ。だから時間の許す限り、出来る足掻あがきをしておきたい……!

 誠は機体を更に加速させる。筑波が付けた高速ブースターのおかげで、休まず飛び続ける事が出来るのだ。



 機体は瞬く間に瀬戸内海上空を抜け、九州まであと少しと迫った。

 つい先日、餓霊どもから奪還した九州……その山間部には、列島から噴き出した青い気が、渦のように吹き込んでいる。まるでそこだけ巨大な台風が居座っているかのようだ。

「……あそこか。聞いてた通り、凄い気が集まってるな」

 誠はモニターで確認し、後部座席のカノンに呼びかけた。

「カノン…………あれ、カノン?」

 振り返ると、カノンは再びじっとこちらを見ていた。それから我に返ったのか、慌てて目を伏せて謝る。

「ご、ごめんなさい………ちゃんと聞いてるから……!」

 また頬が赤かった。本当にどうしたんだろう。

 誠は内心穏やかでない物を感じながら、取りつくろうように言った。

「……そ、それじゃ降下するぞ。餓霊の対空呪詛とは違うけど、揺れるかもしれないから……掴まっててくれ」

 カノンはそっと誠の肩に手を置いた。前回戦いの邪魔になった事を気にしているのだろうか?

 遠慮がちに、けれどきゅっと指先に力を込めて。誠には、それがなぜか助けを求めているように思えた。

 それでも後ろを振り向けない。今あの目を見たら、もう戻れなくなる気がしたからだ。

「……………………」

 誠は黙って機体を降下させる。

 青く渦巻くその気に触れると、機体が激しく振動した。

 空の上のはずなのに、青い海に潜っているかのような不思議な光景だった。白く細かい泡のようなものが周囲に流れ、時折何かが目の前で光った。

 やがて空の海原を突き抜けた時、誠は再び声を発した。

「何だよ、これ……!?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

地獄の手違いで殺されてしまったが、閻魔大王が愛猫と一緒にネット環境付きで異世界転生させてくれました。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作、面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 高橋翔は地獄の官吏のミスで寿命でもないのに殺されてしまった。だが流石に地獄の十王達だった。配下の失敗にいち早く気付き、本来なら地獄の泰広王(不動明王)だけが初七日に審理する場に、十王全員が勢揃いして善後策を協議する事になった。だが、流石の十王達でも、配下の失敗に気がつくのに六日掛かっていた、高橋翔の身体は既に焼かれて灰となっていた。高橋翔は閻魔大王たちを相手に交渉した。現世で残されていた寿命を異世界で全うさせてくれる事。どのような異世界であろうと、異世界間ネットスーパーを利用して元の生活水準を保証してくれる事。死ぬまでに得ていた貯金と家屋敷、死亡保険金を保証して異世界で使えるようにする事。更には異世界に行く前に地獄で鍛錬させてもらう事まで要求し、権利を勝ち取った。そのお陰で異世界では楽々に生きる事ができた。

新説・鶴姫伝! 日いづる国の守り神 PART3 ~始まりの勇者~

朝倉矢太郎(BELL☆PLANET)
キャラ文芸
いよいよ魔王のお膝元・本州に上陸した鶴と誠。 だけどこっちの敵は、今までより随分ずる賢いみたい。 きりきり舞いの最中、魔王ディアヌスの正体が明らかに!?  この物語、どんどん日本を守ります!

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

処理中です...