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第四章その6 ~いざ勝負!~ VS闇の神人編

私1人じゃ勝てないから…!

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 一方その頃。

 当然と言えば当然であるが、志布志しぶし隊も躍動していた。

「いよっし、ここも設置完了っ!」

 囮となる機器を配置すると、壮太は機体を振り返らせ、手早く次のポイントへ走る。

「俺達九州男児だからな、ここはバシっと決めるぜっ!」

「ちょっと壮太、九州女子もいるんですけど?」

 湯香里は画面上でツッコミを入れてきたが、そこでたまらず声を上げた。

「けどこの雲の海、なんか温泉の湯気みたい。ああたまんない、早くみんなで入りたいなあ……!」

 九州を奪還して以来、湯香里は再び温泉に入れる日を、今か今かと心待ちにしていた。最近では何を見ても思い出すようで、もはや末期症状である。

「湯香里は随分気が早いが……ま、想像すると楽しそうではあるな」

 メガネの位置を直しながら、画面上であきらも言った。クールな彼にしては口角が上がっているが、彼も最近機嫌がいいのだ。

 画面には他の隊員達の姿も映った。

「そーデス、早く日本を全部取り戻して、みんなで温泉入るデース!」

 キャシーが叫ぶと、ヘンダーソンも後を続けた。

「そりゃ楽しみだ。キャシー、ジャパニーズ温泉作法は知ってるか?」

「知ってマスよ、腰に手を当ててフルーツ牛乳飲むデスよね?」

 そこで日本人形のように愛らしい少女・八千穂が口を挟んだ。

「そ、それって、マンゴー牛乳じゃ駄目ですかね?」

「いいんじゃねえの、楽しけりゃ何でもさ!」

 壮太は自然と笑っていた。

 あの鎧姿のお姫様と協力し、大事な九州こきょうを取り戻せたし、隊員達も生き残った。復興を心待ちにしながら、こうして毎日、皆で楽しくじゃれ合っている。

 つい先日まで九州南端に追い詰められ、死の覚悟さえしていたのに……本当に魔法みたいな変わりようだ。

 だから薩摩隼人さつまはやとの名にかけて、この恩は絶対に返すのだ。

 魔王だろうが闇の神人だろうが、何が何でもぶっ倒してやる。

「絶対勝とうぜ。こんなんでへこたれてたら、俺らここにいないんだからな!」

 壮太の言葉に、隊の皆が一斉に答えた。



「……みんなほんとに元気だね」

 皆の映像を眺めながら、コマは感慨深そうに呟いた。

「すごいもんだよ。でっかい魔王が近づいて、闇の神人とも向き合ってるのに……ちょっと見ない間に、どんどん魂が強くなってる」

「そりゃそうよ、みんなとっても勇敢だもの。今更こんな事で負けたりしないわ」

 鶴は頷くが、そこで思いつき、わざとコマにふざけてみる。

「……でもコマ、一番すごいのはこの私よ?」

「……ああ、話を盛るのは直らないんだね」

 コマがツッコミを入れ、鶴もコマもたまりかねて笑った。

 そうこうするうちに、敵の邪気はじりじりと範囲を広げていた。

 雲海に潜む味方の重機も、そして新型の航空戦艦?も、今は後退するばかりだ。

 このまま下がり続けても、相手との距離が離れる一方。もう行動すべきだろう。

「十分注意を下に引き付けられたね。そろそろ頃合いだ、準備はいい?」

 コマは改めて鶴に言った。

「勝負はほんとに一瞬さ。あいつに見つからずに、一太刀浴びせればこちらの勝ち。その前に気付かれたらおしまいだよ」

「平気。私もパワーアップして出来る事が増えたし、みんなが助けてくれるから」

 鶴はそこで霊力を使い、仲間達に呼びかけた。

 虚空に映し出された小牧隊と志布志隊の面々は、じっと鶴を見つめている。

「作戦前にも言ったけど……みんな、来てくれてほんとにありがとう」

 鶴は一同を見渡し、心からの礼を言った。

「正直私も、黒鷹も凄くピンチだったの。あの闇の神人は、たくさんの聖者が集まってるから、私1人じゃ勝てないわ。だからみんなの力がいる。でも凄く危ないし、生きて帰れないかもしれない……」

 鶴はそこで言葉を切り……けれど真っ直ぐ皆を見つめた。

「それでも言うわ、力を貸して。ここで負けたら全部終わりなの。あいつを倒して、その後魔王をやっつけて、みんなで幸せになりたいの。だからお願い……!」

「任せとけよお姫様、俺らみんな同じ気持ちだからよ!」

 壮太はすぐに言ってくれた。他の皆も口々に同意してくれる。

「ありがとう。こんな心強い味方がいて、鶴ちゃんとっても幸せだわ」

「僕も幸せだよ。日本を守る狛犬に生まれて、こんな嬉しい事はないよ」

 コマも感極まったのか、映像に向けて前足を振っている。

「きっと、きっとみんなが幸せに暮らせる国になるよ。だから、最後まで頑張ろう……!」

「その意気よコマ! それじゃ、いよいよ決着だわ。合図を送るから、報せが来たら、みんなお願い!」

『応っ!!!』

 鶴の言葉に、一同は力強く答えた。

 相手は無敵の闇の神人、それでもこちらには仲間達がいる。

 何としてでもこの戦い、勝利を導いてみせるのだ。
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