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第四章その5 ~さあ反撃だ!~ やる気満々、決戦準備編

対魔王作戦会議1

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 間もなく一同は、ブリーフィングルームの1つに集合していた。

 室内には誠に鶴、カノンに難波、鳳やコマ。

 あとは第3船団のエースパイロット達と、ケガを治療した白衣の筑波。

 雪菜を含めた神武勲章レジェンド隊の面々は、増援部隊との打ち合わせや事務連絡で来られなかったが、船団長の伊能がしれっと座っている。

 正式な軍議ではないため、参謀方も不在なのに、伊能が来てくれたのには誠もさすがに驚いた。

 誠は近寄って頭を下げるも、伊能は「いいってことよ」と手を上げる。

「俺ぁ見学だし、好きにやってくれたらいいや。若ぇ衆がアイディア出すのはいい事だぜ?」

 伊能はそう言うが、やはり船団長がいるためか、第3船団のパイロット達はガチガチだ。

 鶴が早速ウトウトするのを眺めながら、難波は困った顔で腕組みした。

「……にしても、うちも驚いたわ。ディアヌスがあの八岐大蛇やまたのおろちやったなんてな。須佐之男命すさのおのみことでも、真っ向勝負じゃかなわんかったんやろ?」

「よく誤解されますが、実はそうではありません」

 そこで鳳が首を振った。

「日本神話をご覧下さい。建速須佐之男命たけはやすさのおのみこと様は、ひげと爪を抜かれて高天原たかまがはらを追放されました。ひげは男性の象徴、手や爪は腕力を意味しますから、霊的懲罰ペナルテイを受け、力を封じられた状態だったのです」

 ペナルテイ……と繰り返しながら難波は頷く。

「なるほどなあ、だから酒を使ったってわけや」

「そうなります。そもそも須佐之男すさのお様は、永津ながつ様……あ、いえ、お弟子様に戦いを教えた方でもあられますし、万全であれば大蛇おろちにひけはとりません。今は封印を……あっ! その、事情があるため動けませんが……」

 全神連の機密が混じった内容なので、鳳はしどろもどろになりながら語った。

「……と、とにかく、ディアヌスとて無敵の存在ではありません。わずかながら、倒す手立てはあるはずです」

 鳳は口元に拳をよせ、咳払いするようなポーズで誤魔化した。

「わずかか。でもそれを変態・鳴っちが考えるわけやろ?」

「いや、お前も一緒に考えてくれよ」

 誠は思わずツッコミを入れたが、おしゃべりの合間に機材の準備は完了している。

 誠は自機の録画映像をモニターに映した。邪気のせいでかなりノイズがかかっているが、至近距離で撮影したディアヌスの姿である。

「こ、これもう理不尽の塊やん……」

 映されたディアヌスの戦闘力は凄まじかった。人間側こちらのあらゆる攻撃を弾き、片手間の魔法が大災害を集めたような連続攻撃。

 誠は映像を巻き戻し、カメラを拡大した。丁度誠の機体がディアヌスに斬りかかった瞬間である。

「この場面……ヒメ子の魔法で強化した刀でも、魔王の電磁バリアは揺らいでいません。普通ならどんな強い餓霊のそれでも、わずかながら減殺げんさいするんですが」

「……根本的にエネルギーが桁外れなのか、もしくは質が違うんだろうな」

 白衣の筑波が、珍しく真剣な顔でそう言った。筑波は指を動かし、空中にあれこれ書いて思案している。

「うーん……何をどうつないでも、並大抵の兵器じゃあれをぶち抜くのは難しいな。多分、『きょう』や『摩州ましゅう』でも……」

「おっしゃる通りです。魔王を覆う特殊なバリア……やみ叢雲むらくもとでも呼びましょうか。これがある限り、ディアヌスにまともにダメージは与えられません」

 誠の発言に、ブリーフィングルームは重苦しい空気に包まれる。

「…………ただ、ただですね。解析してみたところ、ディアヌスのバリアには、表面から分かりにくいひずみがあるんです」

 誠が映像を拡大し、処理を重ねてノイズを取り除いていくと、ディアヌスの右肩に近い辺りだけ、電磁バリアが乱れているのだ。

「ここは永……ディアヌスのライバルが攻撃したところで、そのダメージが残ったままなんです。表面の傷はふさがってますけど、完治してません」

「なるほどな、その付近を狙って攻撃するって事か。さっき言った、『きょう』や『摩州ましゅう』といったデカブツで」

「その通りです、筑波さん。このバリアのエネルギーは横に巡ってるんで、実際には右でも左でも、とにかく肩ぐらいの高さで攻撃すればバリアの組成は乱れます」

 筑波はいちいち察しが良く、誠は内心感謝した。

 筑波が端末を接続すると、モニターには巨大な属性添加・調律機の『京』……そして長距離砲の『摩州ましゅう』が映し出された。

 人跡未踏じんせきみとうの凄まじいエネルギーを生み出す属性添加機と、それに耐え得る巨大砲だ。

 だが筑波はそこで渋い顔をする。

「ただし問題がある。京は実際には未完成で、エネルギー量は不十分。それに攻撃までにかなりのチャージ時間が必要だ」

「……ま、実戦で魔王を目の前にして、そんな悠長に待ってくれねえわな」

 伊能はぽつりと感想を述べ、一同は押し黙った。

 こういう時、いつもならカノンが的確な事を言ってくれるのだが、彼女は今は黙っていた。

 難波の隣に座り、やや内股にしたももの間に両の手を挟んでいる。

 寒いのか、それとも不安を示す仕草なのかは分からないが、表情はどこか寂しげである。

 まるで誠の一挙手一投足いっきょしゅいっとうそくを目に焼き付けるかのように、カノンは黙ってこちらを見つめている。

 誠はその無言を信頼だと受け止め、再び口を開いた。
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