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第四章その2 ~大活躍!~ 関東からの助っ人編
雪菜、第3船団へ
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どこまでも広がる雲海を、機体は滑るように飛行している。
雪菜が乗るのは、第5船団の有するU114・超高速多用途輸送機である。
ジェット機を小型化・かつスリムにした形状であるこの機体は、双発式圧縮斥力場の推力により、超々音速の飛行が可能だったし、極めて静粛性の高い名機だった。
淡いベージュのゆったりしたVIPシートは、特に心配事さえ無ければ、快適な空の旅を約束してくれるのだろう。
…………そう、気がかりさえ無ければだ。
タイトスカートに乗せた端末の画面を見ながら、雪菜はぎゅっと手に力を込めた。
唐突に起きた魔王の復活、そして侵攻の開始。
生き延びた先遣隊の映像から、ほとんど無敵とも思える魔王ディアヌスに対し、まだ何が有効な攻撃手段なのかは分かっていない。
現在は光のドームに閉じ込められ、動きを止めているディアヌスだったが、再侵攻すれば東海から関東方面へ動く可能性が高い。
そうなった場合、関東への大幅な増援が必要となるため、第5船団……つまり瀬戸内海沿岸を管轄する地方政府は、指揮官の雪菜を関東に派遣したのだった。
「…………っ!」
緊張に耐えきれず、雪菜は大きく息をついた。
かつて日本最高のパイロット集団だった自分達『神武勲章隊』を、虫けらのように薙ぎ払った魔王との再戦だ。
何度落ち着こうとしても体に力が入ってしまうが、雪菜には他にも気がかりがあった。他ならぬ鳴瀬少年達の負傷である。
彼らを救助してくれた第3船団から、命に別状がない旨の連絡は入っていたが、だからと言って心配でないわけではない。
彼らの回復が少しでも早い事を願いつつ、雪菜は窓に目をやった。
ガラスに反射した自らの髪は、今は明るい金色である。
かつて魔王と対峙した際、強い邪気を受けて体質が変わった証であるが、その際に受けた雪菜のダメージを癒す術を、鳴瀬少年は必死に見つけてくれたのだ。
彼の真心に気付いた時、先輩やお姉さんパイロットとしてではなく、1人の女として体中が熱くなるのを感じた。
だから今度は、自分が返す番なのである。
(そうよ雪菜、ど根性よ! 今度は私が、鳴瀬くん達を守らなきゃ……!)
雪菜が無意味に拳を握り、気合を入れまくっている間に、航空機は既に降下を開始していた。
眼下に広がる、旧神奈川県の南に位置する相模湾。
その洋上に浮かぶ第3船団の旗艦『武蔵』の甲板に、機体は垂直に降り立った。
属性添加機の発達により、VTOL(※垂直離着陸)設計の航空機でなくとも、機体下部の斥力力場を調整するだけで、こうした離着陸が可能なのである。
雪菜が乗るのは、第5船団の有するU114・超高速多用途輸送機である。
ジェット機を小型化・かつスリムにした形状であるこの機体は、双発式圧縮斥力場の推力により、超々音速の飛行が可能だったし、極めて静粛性の高い名機だった。
淡いベージュのゆったりしたVIPシートは、特に心配事さえ無ければ、快適な空の旅を約束してくれるのだろう。
…………そう、気がかりさえ無ければだ。
タイトスカートに乗せた端末の画面を見ながら、雪菜はぎゅっと手に力を込めた。
唐突に起きた魔王の復活、そして侵攻の開始。
生き延びた先遣隊の映像から、ほとんど無敵とも思える魔王ディアヌスに対し、まだ何が有効な攻撃手段なのかは分かっていない。
現在は光のドームに閉じ込められ、動きを止めているディアヌスだったが、再侵攻すれば東海から関東方面へ動く可能性が高い。
そうなった場合、関東への大幅な増援が必要となるため、第5船団……つまり瀬戸内海沿岸を管轄する地方政府は、指揮官の雪菜を関東に派遣したのだった。
「…………っ!」
緊張に耐えきれず、雪菜は大きく息をついた。
かつて日本最高のパイロット集団だった自分達『神武勲章隊』を、虫けらのように薙ぎ払った魔王との再戦だ。
何度落ち着こうとしても体に力が入ってしまうが、雪菜には他にも気がかりがあった。他ならぬ鳴瀬少年達の負傷である。
彼らを救助してくれた第3船団から、命に別状がない旨の連絡は入っていたが、だからと言って心配でないわけではない。
彼らの回復が少しでも早い事を願いつつ、雪菜は窓に目をやった。
ガラスに反射した自らの髪は、今は明るい金色である。
かつて魔王と対峙した際、強い邪気を受けて体質が変わった証であるが、その際に受けた雪菜のダメージを癒す術を、鳴瀬少年は必死に見つけてくれたのだ。
彼の真心に気付いた時、先輩やお姉さんパイロットとしてではなく、1人の女として体中が熱くなるのを感じた。
だから今度は、自分が返す番なのである。
(そうよ雪菜、ど根性よ! 今度は私が、鳴瀬くん達を守らなきゃ……!)
雪菜が無意味に拳を握り、気合を入れまくっている間に、航空機は既に降下を開始していた。
眼下に広がる、旧神奈川県の南に位置する相模湾。
その洋上に浮かぶ第3船団の旗艦『武蔵』の甲板に、機体は垂直に降り立った。
属性添加機の発達により、VTOL(※垂直離着陸)設計の航空機でなくとも、機体下部の斥力力場を調整するだけで、こうした離着陸が可能なのである。
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