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第五章その8 ~邪神が出ちゃう!~ 大地の封印防衛編
岩凪姫の単独行動
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柱を停止させようとしていた神々も、事態の変化に気付いていた。
はるか南で膨大な邪気が噴出し、その余波を受けて大地が激しく鳴動している。
「黄泉の軍勢の気配だ。封印が裂けて、冥府の気が溢れ出ているのか……!」
岩凪姫が呟くと、佐久夜姫も焦りの表情で頷く。
「……困ったわね。あれを塞がなければ、どんどん封印が綻びるわ」
常に優しく気配りの出来る妹。そんな彼女の、いつになく不安げな顔だ。
その表情を見た時、岩凪姫は決断した。
「妹よ、私が行って塞いでこよう」
「なっ……!?」
佐久夜姫は思わず目を丸くした。
「だっ、駄目よお姉ちゃん! 私達は神族よ? あんな濃い邪気の中じゃ、力もろくに使えないわ!」
「平気だ、私は頑丈だからな」
岩凪姫は首を振った。
「永津殿は名うての武神、お前は鎮座地に近く、柱を縛るにも力が出よう。私が一番役立たずだ」
「そ、そんな言い方…………」
口ごもる妹だったが、岩凪姫は尚も言った。
「私が行って敵を倒し、裂け目を塞いで戻ってくる。それまで苦しいだろうが、永津殿と耐えてくれ。頼む……!」
そこで永津も口添えしてくれた。
「姉神様を信じましょう。他の神々は封印を押さえておられる。他に手がありませぬ」
「んっ……」
佐久夜姫はまだ何か言いたげだったが、何とか言葉を飲み込んだようだ。
今にも泣きそうな表情であるが、それでもこちらを見つめて言った。
「……分かったわ。でも必ず帰ってきてね。私の大事なお姉ちゃんなんだから……!」
「無論だとも……!」
岩凪姫は身をひるがえす。
全身を光に包むと、南に向かって空を駆けたのだ。
上空に色濃い邪気が立ち込める中、岩凪姫は飛び続けた。
全身を光の霊気で覆ってはいるものの、肌を刺すような邪な気が、絶え間なく体を叩きつけていく。
(邪気がどんどん濃くなっている。神族にはこたえるな)
岩凪姫は顔を歪めた。
力の消耗がかなり激しく、ずっと息を止めて水の中を進んでいるようなものだ。時間とともに霊力は目減りし、どんどん不利になるだろう。
清浄な神は邪気の中では消耗し、邪神は清い気の中にいられない。当たり前の理屈だった。
もし空間転移などしようものなら、刃物の中を高速で移動するようなものであり、大ダメージを受けるだろう。
(遅かれ早かれ限界が来る。それまでに戻らなければ……!)
もちろん1つだけ奥の手は存在する。
力を使い果たした時のため、周囲の気の影響を受けない転移方法が……特殊な神器の腕輪があるのだ。
普通の転移は霊気を使った高速移動……単なるスピードアップであり、邪気が濃いとそれにぶつかりながら移動する事になる。
だがあの腕輪は理屈が違う。空間に穴を開けて移動するため、周囲の気の影響を受けない。
日本奪還の任を受けた際、父が授けてくれた護身の神器である。
転移できるのは腕輪をつけた1人だけだったし、直近で記憶させた地点間でしか使えない。
そのため逃げ戻る時にしか使用出来ないのだったが、それでも最後の切り札であった。
不意に岩凪姫は、先程の光景を思い浮かべた。あの全神連の東国本部での事だ。
崩れ落ち、呆然とする台に対し、妹は優しく慰めていた。
慈愛に満ちたその様は、絵画として残してもおかしくない神々しい姿だった。
(……あれが本当の神だ。余裕の無い自分とは違う)
つくづく思い知った。いや、何千年も前から知っていたが、妹は自分とは違うのだ。
桜花のように美しい姿と、謙虚で優しい、澄んだ心根。
生きとし生ける者への深い愛情を持ち、常に気配りを欠かさない。人々を導く最高の女神だ。
先ほどの別れの時も、彼女は必死に引き止めてくれた。
(こんな姉のために必死になって。妹がいれば、この日の本は大丈夫だ。ならば私は盾になるのみ……!)
もちろん命を無駄にするつもりはない。
だけどもし、魂を天秤にかけるならば……間違いなく彼女が生き残るべきだし、少なくとも岩凪姫はそう思うのだ。
かつて嫁入りに失敗し、内心で彼女を妬んだ事もある。
どうして自分だけがこんな目に。そんなふうに世を恨んだ時期もあった。
なのに妹は、いつの日もこちらを案じ、幸せを願ってくれた。
その後ろめたさはずっと心に残っていたし、今回こうして体を張ったのも、罪滅ぼしの意味があったのだろう。
「……!」
そこで思索を打ち切り、岩凪姫は目を凝らした。
地表を行軍する黄泉の軍勢を発見したのだ。
岩凪姫は体勢を整えると、虚空から刺々しい金棒を取り出す。
かつて水軍達が使った『ヤガラモガラ』と呼ばれる武器で、非常に威圧感がある凶悪な見た目だ。
霊力を固めた武器のため、見た目にこだわる必要はなかったが、こうして怖い形に仕立てたのは、無意識に心の弱さが出たのかも知れない。
臆病で不完全な自分が、父に代わって日本奪還の戦いを導く。
その重責への不安が、せめて敵を威圧しようと、禍々しい形になって現れたのかもしれない。
「ぬううううっ!!!」
全身に光を漲らせると、岩凪姫は金棒を振るう。
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
上空から放った光の弧は、輝きながら地を襲った。地表が砕け、黄泉の軍勢は瞬く間に消滅していく。
「く……っ!」
敵軍を蹴散らしはしたが、予想以上の消耗に、岩凪姫は顔をしかめた。
背を曲げ、荒い息をつく。
(……反魂の術をかけ続けているわけではない。攻撃すれば倒せるが……消耗が激しすぎるな)
目をやると、あちらにもこちらにも、黄泉の軍勢の姿が見えた。
岩凪姫は唇を噛んだ。
(……全てを倒すのは無理だ。穴を塞いで戻って、柱を止めて……それから黒鷹達と協力すれば何とか……!)
きつい算段ではあったが、それしか手立てがないのである。
それまで被害が拡大しない事を祈りながら、岩凪姫は再び飛んだ。
…………だがその時だった。
「な……何だあれは…………!?」
そこで岩凪姫は目にした。
凄まじい邪気を帯びた黒い雲が、竜巻のように渦巻きながら地表へと伸びていく様を。
「あれだけの邪気が、地に降りようとしているだと……!?」
そして同時に、ある人物の思念も感じ取った。
最早間違えようが無いほど接してきた、黒鷹こと誠少年の思念である。
この日本奪還の戦いにおいて、鶴とともに駆け抜けてきた彼は……
いかな困難でも音を上げず、身を盾にして人々を守り続けた日の本一の兵は……今は凄まじい憎悪の念を発していた。
「これは……黒鷹の思念か! 激しい怒りだ、何があった!?」
上空の邪気はますます強く渦巻いて、地表へと下っていく。だとするなら敵の狙いは……!
「このままではまずい……!」
岩凪姫は一瞬迷ったが、黒鷹の方に向かって進んだ。
封印の綻びを塞ぐのも大事だが、あの少年が敵の手に落ちれば、最早どうする事も出来なくなる。
善神達と違って、邪神の与える加護はストレートで劇的だ。
それは当人の体がどうなろうが知った事でなく、使い捨ての駒にするから。
あの鳳天音だってそう、無理やり大量の聖者の魂を合体させて、ボロボロになるまで使い潰すつもりだったのだ。
もしあの黒鷹が敵に操られれば、命と引き換えに爆発的な力を生むし、そうなった場合、人の軍勢で彼を倒すのは不可能だろう。
それにその場合、何より悲しむのは鶴であった。
今にも命が消えようとしている鶴が、あの少年が闇に染まるのを見れば、どんなに悲しむ事だろうか。
神らしからぬ私情を交えた決断だったが、そう考えた時、体が勝手に動いていたのだ。
「頼む、間に合え……!!!」
岩凪姫は懸命に空を駆ける。
吹き付ける邪気が頬を叩き、切り裂かれるような痛みすら覚えたが、そんな事に構っている暇は無かった。
はるか南で膨大な邪気が噴出し、その余波を受けて大地が激しく鳴動している。
「黄泉の軍勢の気配だ。封印が裂けて、冥府の気が溢れ出ているのか……!」
岩凪姫が呟くと、佐久夜姫も焦りの表情で頷く。
「……困ったわね。あれを塞がなければ、どんどん封印が綻びるわ」
常に優しく気配りの出来る妹。そんな彼女の、いつになく不安げな顔だ。
その表情を見た時、岩凪姫は決断した。
「妹よ、私が行って塞いでこよう」
「なっ……!?」
佐久夜姫は思わず目を丸くした。
「だっ、駄目よお姉ちゃん! 私達は神族よ? あんな濃い邪気の中じゃ、力もろくに使えないわ!」
「平気だ、私は頑丈だからな」
岩凪姫は首を振った。
「永津殿は名うての武神、お前は鎮座地に近く、柱を縛るにも力が出よう。私が一番役立たずだ」
「そ、そんな言い方…………」
口ごもる妹だったが、岩凪姫は尚も言った。
「私が行って敵を倒し、裂け目を塞いで戻ってくる。それまで苦しいだろうが、永津殿と耐えてくれ。頼む……!」
そこで永津も口添えしてくれた。
「姉神様を信じましょう。他の神々は封印を押さえておられる。他に手がありませぬ」
「んっ……」
佐久夜姫はまだ何か言いたげだったが、何とか言葉を飲み込んだようだ。
今にも泣きそうな表情であるが、それでもこちらを見つめて言った。
「……分かったわ。でも必ず帰ってきてね。私の大事なお姉ちゃんなんだから……!」
「無論だとも……!」
岩凪姫は身をひるがえす。
全身を光に包むと、南に向かって空を駆けたのだ。
上空に色濃い邪気が立ち込める中、岩凪姫は飛び続けた。
全身を光の霊気で覆ってはいるものの、肌を刺すような邪な気が、絶え間なく体を叩きつけていく。
(邪気がどんどん濃くなっている。神族にはこたえるな)
岩凪姫は顔を歪めた。
力の消耗がかなり激しく、ずっと息を止めて水の中を進んでいるようなものだ。時間とともに霊力は目減りし、どんどん不利になるだろう。
清浄な神は邪気の中では消耗し、邪神は清い気の中にいられない。当たり前の理屈だった。
もし空間転移などしようものなら、刃物の中を高速で移動するようなものであり、大ダメージを受けるだろう。
(遅かれ早かれ限界が来る。それまでに戻らなければ……!)
もちろん1つだけ奥の手は存在する。
力を使い果たした時のため、周囲の気の影響を受けない転移方法が……特殊な神器の腕輪があるのだ。
普通の転移は霊気を使った高速移動……単なるスピードアップであり、邪気が濃いとそれにぶつかりながら移動する事になる。
だがあの腕輪は理屈が違う。空間に穴を開けて移動するため、周囲の気の影響を受けない。
日本奪還の任を受けた際、父が授けてくれた護身の神器である。
転移できるのは腕輪をつけた1人だけだったし、直近で記憶させた地点間でしか使えない。
そのため逃げ戻る時にしか使用出来ないのだったが、それでも最後の切り札であった。
不意に岩凪姫は、先程の光景を思い浮かべた。あの全神連の東国本部での事だ。
崩れ落ち、呆然とする台に対し、妹は優しく慰めていた。
慈愛に満ちたその様は、絵画として残してもおかしくない神々しい姿だった。
(……あれが本当の神だ。余裕の無い自分とは違う)
つくづく思い知った。いや、何千年も前から知っていたが、妹は自分とは違うのだ。
桜花のように美しい姿と、謙虚で優しい、澄んだ心根。
生きとし生ける者への深い愛情を持ち、常に気配りを欠かさない。人々を導く最高の女神だ。
先ほどの別れの時も、彼女は必死に引き止めてくれた。
(こんな姉のために必死になって。妹がいれば、この日の本は大丈夫だ。ならば私は盾になるのみ……!)
もちろん命を無駄にするつもりはない。
だけどもし、魂を天秤にかけるならば……間違いなく彼女が生き残るべきだし、少なくとも岩凪姫はそう思うのだ。
かつて嫁入りに失敗し、内心で彼女を妬んだ事もある。
どうして自分だけがこんな目に。そんなふうに世を恨んだ時期もあった。
なのに妹は、いつの日もこちらを案じ、幸せを願ってくれた。
その後ろめたさはずっと心に残っていたし、今回こうして体を張ったのも、罪滅ぼしの意味があったのだろう。
「……!」
そこで思索を打ち切り、岩凪姫は目を凝らした。
地表を行軍する黄泉の軍勢を発見したのだ。
岩凪姫は体勢を整えると、虚空から刺々しい金棒を取り出す。
かつて水軍達が使った『ヤガラモガラ』と呼ばれる武器で、非常に威圧感がある凶悪な見た目だ。
霊力を固めた武器のため、見た目にこだわる必要はなかったが、こうして怖い形に仕立てたのは、無意識に心の弱さが出たのかも知れない。
臆病で不完全な自分が、父に代わって日本奪還の戦いを導く。
その重責への不安が、せめて敵を威圧しようと、禍々しい形になって現れたのかもしれない。
「ぬううううっ!!!」
全身に光を漲らせると、岩凪姫は金棒を振るう。
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
上空から放った光の弧は、輝きながら地を襲った。地表が砕け、黄泉の軍勢は瞬く間に消滅していく。
「く……っ!」
敵軍を蹴散らしはしたが、予想以上の消耗に、岩凪姫は顔をしかめた。
背を曲げ、荒い息をつく。
(……反魂の術をかけ続けているわけではない。攻撃すれば倒せるが……消耗が激しすぎるな)
目をやると、あちらにもこちらにも、黄泉の軍勢の姿が見えた。
岩凪姫は唇を噛んだ。
(……全てを倒すのは無理だ。穴を塞いで戻って、柱を止めて……それから黒鷹達と協力すれば何とか……!)
きつい算段ではあったが、それしか手立てがないのである。
それまで被害が拡大しない事を祈りながら、岩凪姫は再び飛んだ。
…………だがその時だった。
「な……何だあれは…………!?」
そこで岩凪姫は目にした。
凄まじい邪気を帯びた黒い雲が、竜巻のように渦巻きながら地表へと伸びていく様を。
「あれだけの邪気が、地に降りようとしているだと……!?」
そして同時に、ある人物の思念も感じ取った。
最早間違えようが無いほど接してきた、黒鷹こと誠少年の思念である。
この日本奪還の戦いにおいて、鶴とともに駆け抜けてきた彼は……
いかな困難でも音を上げず、身を盾にして人々を守り続けた日の本一の兵は……今は凄まじい憎悪の念を発していた。
「これは……黒鷹の思念か! 激しい怒りだ、何があった!?」
上空の邪気はますます強く渦巻いて、地表へと下っていく。だとするなら敵の狙いは……!
「このままではまずい……!」
岩凪姫は一瞬迷ったが、黒鷹の方に向かって進んだ。
封印の綻びを塞ぐのも大事だが、あの少年が敵の手に落ちれば、最早どうする事も出来なくなる。
善神達と違って、邪神の与える加護はストレートで劇的だ。
それは当人の体がどうなろうが知った事でなく、使い捨ての駒にするから。
あの鳳天音だってそう、無理やり大量の聖者の魂を合体させて、ボロボロになるまで使い潰すつもりだったのだ。
もしあの黒鷹が敵に操られれば、命と引き換えに爆発的な力を生むし、そうなった場合、人の軍勢で彼を倒すのは不可能だろう。
それにその場合、何より悲しむのは鶴であった。
今にも命が消えようとしている鶴が、あの少年が闇に染まるのを見れば、どんなに悲しむ事だろうか。
神らしからぬ私情を交えた決断だったが、そう考えた時、体が勝手に動いていたのだ。
「頼む、間に合え……!!!」
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