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第一章その7 ~あなたに逢えて良かった!~ 鶴の恩返し編

過小評価していたようです

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「話……ですか」

 モニターに映る岩凪姫の真剣な顔に、誠は思わず姿勢を正した。

「そう、お前のこれからについてだ。鶴が戻ったら、あやつには日の本奪還の任が待っている。だがその道には、幾多の危険と苦難が待ち受けるだろう」

「だから僕に、守れとおっしゃるのですか」

「そうだ。身勝手な申し出で悪いが、ど直球に言わせてもらう。あの子を守り、共に日の本を立て直してくれ。これは命令ではなく願いである。断るも何もお前の自由だ」

 ……言葉は自然に、口をついて出た。

「男子として弓矢とる家に生まれ、身に余る光栄です」

 誠は深々と頭を下げる。いや、頭を下げる鎧姿の自分が見えた気がした。

 あまりに古風で、そしてあまりに唐突で。自分が言った言葉ではないようにさえ思えたが、誠はその発言に納得した。

 遠い昔、まだこの体ではなかった頃の思いが、どこかに残っていたのかもしれない。そんなふうに感じたのだ。

「そうか。それではしばし体を休めよ。鶴が戻ってくるまでの間、己を労われ」

 女神は安堵した表情でそう言った。



 機体から降りた誠の前には、鳳や神使達が待っていた。キツネや狛犬が誠に飛び乗り、嬉しそうにじゃれついて来る。

「よう生きとったな! ぽっと出の割には、まあまあようやったと思うで!」

「けどなあ、ワシらはまだ認めてないぞ。これからの頑張り次第なんじゃい!」

「そ、それはどうも……」

 誠はそう言いつつも、緊張の糸が切れたのか、足元がよろけてしまう。

 そこで意外にも、鳳が肩を貸してくれた。

「あ、す、すみません」

 誠は恐縮したが、鳳はゆっくり首を振った。

「……私も、謝るべきかも知れません」

「鳳さんが?」

 不思議そうに問う誠に、鳳は頷く。

「どうも私は、過小評価していたようですから」

「何をです?」

「何でしょうね。さあ行きましょうか」

 鳳はおかしそうに微笑んだ。

 うなじで結んだ長い髪が、誠をからかうように風に舞った。
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