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第一章その2 ~黒鷹、私よ!~ あなたに届けのモウ・アピール編

愚者は閉幕のベルを鳴らす

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「……そうか。分かった。約束? ああ覚えているとも」

 薄暗い室内で、男は手にした端末に語りかけている。あの研究所の主任であり、爪繰つまぐりと呼ばれていた男だ。

 室内には、もう1人背の高い青年がいて、黙って会話を見守っている。

「君の処遇と能力は約束しよう。全ては理想郷のためだ。それでは」

 爪繰つまぐりはそう言って通信を切った。端末を机に置き、振り返らずに青年に言う。

笹鐘ささがねか、早かったな。連中が最後の悪あがきをするそうだ。思った以上に馬鹿だったようだよ」

「今のお相手は?」

 笹鐘と呼ばれた男が口を開いた。細身の体を清潔感のあるスーツで包み、静かな口調にも鋭い意志を感じさせる。

「ああ、手なづけておいたんだ。都合良くひねくれたのがいたのでね」

 爪繰つまぐりはそう言って満足そうに笑みを浮かべた。

「不満を持つ人間ほど、騙しやすい者は無い。彼に閉幕のベルを鳴らしてもらおう」

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