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第一章その2 ~黒鷹、私よ!~ あなたに届けのモウ・アピール編
鮮血の英雄。もう帰らない人
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「……っ!!!???」
不意にガタン、と体がずれて、誠はそこで目を覚ました。
恐る恐る周囲を見回すが、あの邪悪な小動物どもはいない。
室内には、微かに灯る青いLEDの光と、林立する機材達。もう日が暮れており、時計は午後9時を回っていた。
「……夢……か……?」
それから跳ね起きるように身を起こし、測定結果を確認した。
UNKNOWN PATTERN CODE ; 00167
誠は力が抜けて、再び座席に座り込んだ。つい弱気な言葉が口をつく。
「……………………どうすりゃいいんだよ」
本当に、何度やっても分からない。
(細胞が増殖する時の固有電磁パターンを読み取る……ただそれだけのはずなのに、なんでこうも毎回違う結果が出るんだよ)
僅かな法則性が掴めたかと思えば、次の測定時には、その予想が根本から覆されてしまう。
細胞の分量、移植する位置、気温や体温、水分量、時間帯、明るさ、周囲の磁場などの影響……その他あらゆる条件を考慮しても駄目だった。
ただ毎回空しいビープ音と、無意味なデータが積み重なるだけだ。
(もしかしてあの細胞には、固有の電磁パターンなんか無いんじゃないか? だとしたら、あの人を助ける手段は……)
「……だから夢なんだよ」
誠はあの白々しい希望を謳った夢を思い出して毒づいたが、左手をだらりと下げて立ち上がった。安普請な床面が、微かな靴音を反響させている。
誠はドアに歩み寄ったが、そこでふと、何者かの人影を目にした。
……それは一人の青年だった。長身で髪を長く伸ばし、旧式のパイロットスーツに身を包んでいる。
青年は黙っていたが、やがて堰を切ったように、赤い鮮血が彼の顔を染めていく。血は瞬く間に床に溢れ、誠の足元まで包み込んだ。
「…………っ!!!」
誠は言葉にならない声を上げ、一歩、二歩と後ずさるが、その時。
「なんやの鳴っち、そんなとこでぼーっとして」
「!?」
不意にかけられた声に我に返ると、人影が見覚えのある姿に変わっていた。
「暗くてよお見えへんけど、何でつっ立っとるんや?」
そこに居たのは、栗色の髪をショートカットにした人物……隊員の難波である。彼女は片手でドアを開け、誠を不思議そうに見つめていた。
「ずっと変態ハウスに籠もりっきりやから、死んだんかと思ったけど。思ったより元気そうやんか」
「…………っ」
誠は全身の力が抜けて、思わず大きく息をついた。
それから取り繕うように、難波に言葉を返す。
「いつも思うけど、何で変態ハウスなんだよ。これと言っておかしなものは置いてないだろ」
「ウチにはちゃんと見えるけどな。金にもならんのに、毎度殊勝な事やっとる変態さんが」
難波は面白そうに言うと、誠の背中をはたいてくれる。
「あれ、汚れてた? ていうか、何かあったのか?」
難波はウインクして悪戯っぽく答える。
「降りたら分かるで。お客さんや」
不意にガタン、と体がずれて、誠はそこで目を覚ました。
恐る恐る周囲を見回すが、あの邪悪な小動物どもはいない。
室内には、微かに灯る青いLEDの光と、林立する機材達。もう日が暮れており、時計は午後9時を回っていた。
「……夢……か……?」
それから跳ね起きるように身を起こし、測定結果を確認した。
UNKNOWN PATTERN CODE ; 00167
誠は力が抜けて、再び座席に座り込んだ。つい弱気な言葉が口をつく。
「……………………どうすりゃいいんだよ」
本当に、何度やっても分からない。
(細胞が増殖する時の固有電磁パターンを読み取る……ただそれだけのはずなのに、なんでこうも毎回違う結果が出るんだよ)
僅かな法則性が掴めたかと思えば、次の測定時には、その予想が根本から覆されてしまう。
細胞の分量、移植する位置、気温や体温、水分量、時間帯、明るさ、周囲の磁場などの影響……その他あらゆる条件を考慮しても駄目だった。
ただ毎回空しいビープ音と、無意味なデータが積み重なるだけだ。
(もしかしてあの細胞には、固有の電磁パターンなんか無いんじゃないか? だとしたら、あの人を助ける手段は……)
「……だから夢なんだよ」
誠はあの白々しい希望を謳った夢を思い出して毒づいたが、左手をだらりと下げて立ち上がった。安普請な床面が、微かな靴音を反響させている。
誠はドアに歩み寄ったが、そこでふと、何者かの人影を目にした。
……それは一人の青年だった。長身で髪を長く伸ばし、旧式のパイロットスーツに身を包んでいる。
青年は黙っていたが、やがて堰を切ったように、赤い鮮血が彼の顔を染めていく。血は瞬く間に床に溢れ、誠の足元まで包み込んだ。
「…………っ!!!」
誠は言葉にならない声を上げ、一歩、二歩と後ずさるが、その時。
「なんやの鳴っち、そんなとこでぼーっとして」
「!?」
不意にかけられた声に我に返ると、人影が見覚えのある姿に変わっていた。
「暗くてよお見えへんけど、何でつっ立っとるんや?」
そこに居たのは、栗色の髪をショートカットにした人物……隊員の難波である。彼女は片手でドアを開け、誠を不思議そうに見つめていた。
「ずっと変態ハウスに籠もりっきりやから、死んだんかと思ったけど。思ったより元気そうやんか」
「…………っ」
誠は全身の力が抜けて、思わず大きく息をついた。
それから取り繕うように、難波に言葉を返す。
「いつも思うけど、何で変態ハウスなんだよ。これと言っておかしなものは置いてないだろ」
「ウチにはちゃんと見えるけどな。金にもならんのに、毎度殊勝な事やっとる変態さんが」
難波は面白そうに言うと、誠の背中をはたいてくれる。
「あれ、汚れてた? ていうか、何かあったのか?」
難波はウインクして悪戯っぽく答える。
「降りたら分かるで。お客さんや」
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