ふとんがふっとんだ

らろぱ

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翌朝、普段通り学校に行った。
しかし、昨日の一件もあってか、妙にやる気が起きず、ただただ何も考えずにぼーっと授業を受け、チャイムが鳴り、飯田が「飯食おうぜ」と隣の席に座って来たので「もう昼休み?」と問いかけると飯田は困惑しながら「そうだけど」と答えた。

俺が深いため息をつくと、飯田は「さては…」とクスクス笑っていた。その事にいつもなら腹が立つが、今は感情の高ぶりは感じられなかった。

「お前と俺って小学生の頃からの付き合いだよな?」

「あぁ、そうだけど」
飯田の紙パックを啜る音が聞こえた。
いつも飯田は昼休みになると紙パックのオレンジジュースのを飲んでいる。
毎日飽きないのだろうか。

「小学校の時にアキって子いなかった?」

飯田は紙パックを啜りながら考えていた。
最後まで飲みきり「いない」と答えられた。

「昨日なんかあったの?」と飯田に問われたので事情を話すと、「それ夢だろ」と笑われた。

「夢じゃないから、落ち込んでるんだろうが…」

飯田は何かを閃いた。
「前にお前の家でアルバム見てたとき幼稚園の時にお前がずっと遊んでた子と撮った写真あったよな…ワンチャンそれがアキって子なのかもな」

「まぁ一応調べとくわ」

そして学校が終わり、急いで家に帰った。
飯田と話していたときは平常心を保っていたが、あの時本当は滅茶苦茶気になっていた。

家に付くと、制服も脱がずに、部屋の奥からアルバムを取り出そうとしたが、埃と昔の物が溜まっており、出すのも一苦労だった。

「あった!」
アルバムを手に取り、幼稚園の頃のページをめくったが、あまり思い出せず、アルバムをすぐにしまった。

「うまくいかないよなぁ」
寝転がり、漫画を読んでいると母の「ただいまー」という声が聞こえた。

その瞬間、母なら何か昔のことを知っていると思い急いでリビングに向かった。

「あのさ、俺が幼稚園の時によく遊んでたアキちゃんって子覚えてる?」

「アキちゃん…あ!」
母はリビングにあるアルバムを持ってきた。

「ここにもアルバムあったんだ」

「お父さんが写真好きだったからね」
母がアルバムのページをめくると、俺の部屋にはなかった写真が入っていた。

「確かこのページ…あれ?」
そのページの写真が抜き取られていた。

「ここにアキちゃんとあんたの写真があったはずなんだけど…」
母は困惑していた。

「そのアキちゃんと俺って仲良かったの?」
そう尋ねると母は答えた。

「幼稚園の頃毎日のようにアキちゃんと公園で遊んでたでしょ?それでアキちゃんが引っ越しするってなって、それ以来会ってないはず…」

アキのこと以外の記憶はうっすらだが覚えているのに対しアキとの記憶は思い出せなかった。

それが何故かわからないまま、部屋に戻った。

「アキという人は本当に存在したのだろうか?」
その疑問の答えは考えても思い付くことはなかった。
だご、アキという女性が本当に存在するのならば先ほどの発言は本当に失礼である。

床に置きっぱだった漫画を棚に片付けているとスマホが鳴った。

「堂円寺さんからか…」
恐る恐るメール開いてみると、いますぐ公園に来いと書かれてたので、急いでジャンパーを羽織り、下に降りた。
玄関のドアを開けると冷たい風が全身を覆った。走っていると、冷たい風が喉を突き刺し、心臓が痛くなり、すぐに息があがってしまう。

なんとか、公園に着いたときはもう、疲れきっていた。息を整えて公園の中を見渡した。

するとベンチにガラの悪いおじさんが座っているのが見えた。堂円寺さんだ。

「どうしたんですか?」
「まずは座れ座れ」と手招きされた。
そして「彼女とはどうよ?」とニヤニヤしながら聞かれたので、逆に堂円寺さんを問いただした。

「彼女が堂円寺さんの姪っ子さんって言うのは嘘だったんですね」

「ま…そういうのは気にしなくて良いんだよ、それで会えたか?」

その態度に少し腹が立ち、口調が荒くなった。

「会えるわけ無いじゃないですか、あんたの嘘でこっちはまともに会話すら出来なかったのに…」

すると堂円寺さんは「そうか、そうか」とケラケラ笑っていた。
堂円寺さんは笑い疲れたように、「ふぅー」と息を吸い込むと空を見上げた。

「彼女も気の毒だな、というよりか臆病なせいで、なーんにも出来ないんだな」

「もう少し勇気でも出して、行動しないと、一生そのまま、誰にも存在を認められずに…
すまん!泣かないでくれよ!俺ももう少し協力できたら良かったな」

「堂円寺さん…誰に言ってるんですか?」
先程から俺と堂円寺さんしかこの公園にいないのに、俺から視線を外して話しかけたり、俺が泣いてもいないのに、立ち上がって慰めたり、何をしているんだろうか?

「ごめんな、これだけ言わせてもらう」
堂円寺さんは俺の方に視線を向けた。

「お前が昔この公園で一緒に遊んでいて、俺が昨日電話をかけさせたアキという子は、見えないかもしれないけど、ずっとお前の後ろにいるんだよ」

状況がつかめなかった。
俺には見えずに堂円寺さんは、アキという女の子が見えている。
となれば…
「アキは、死んでしまい、守護霊みたいな感じで、俺に憑いているということですか?」

「いや違う、というかそれアキちゃんに失礼だろ」

堂円寺さんの即答に困惑していた。
俺に見えないのだから、アキは幽霊で堂円寺さんは霊能者という俺の勘は外れていたので、ますますややこしくなった。

「アキちゃんは生きてる、だけれど俺を除く他の人には見えないんだよ
それがなぜだかわかるか?」

なぜなのかわかったらここまで困惑しないんだが…とは思ったが口に出すのは申し訳なく思った。

「わからないです」
そう答えると、「そうか」と口に出して、胸ポケットからだした煙草を吸おうとした。

煙草を1本取り出そうとしていたが、何者かが、そっと箱の中に戻した。

「そうか、禁煙中だったもんな…」
堂円寺さんは渋々胸ポケットに煙草をしまった。

「今のって…」

「これがアキちゃんがここにいる証拠だよ」

非現実的な事が目の前に起こってしまった。
起こり得ないことが起こると人間は思考が停止し、頭が真っ白になる。そして、行動が出来なくなる。

「驚くのも無理はないだろうな…
でも、物事の本質が何かを信じないと見抜くことが出来ないもんなんだよ、
非現実的だが、幽霊を信じないやつは、幽霊が見えないし、
日常的なことで言えば、夢が叶うと信じているやつはいつかは叶う
アキちゃんだって同じさ、お前がアキちゃんのことを信じてやれば、見えるはずだ」

目を凝らして後ろの方を見たがアキの姿は見えなかった。

「今は俺の後ろに立ってるよ
まぁ時間をかければ、声くらいは聞こえるようになるんじゃないか?」

堂円寺さんが立ち去ろうとした。
「アキが堂円寺さん以外の人に見えないのはなぜなんですか?」

すると、堂円寺さんは俺の方を向き、答えた。
「アキちゃんはこの世界の人間から必要とされないから、存在を消されてしまったんだよ
本当はもう少し詳しいことを話したいんだが、俺にもここにいる期限がある。アキちゃんはそれが無いが見えないし俺にはあるからもうここから立ち去らないといけないだからまた会える時になったら、連絡するからな」

「堂円寺さんは何者なんですか?」
やっぱり堂円寺さんにしかアキが見えないのは堂円寺さんは普通の人間じゃないからなのかもしれない。

「俺は…テツやアキちゃんとは別の世界にいる…お前らの世界で言う天使?いや、死神?
まぁどっちでも良いんだけど、俺は人じゃないから、それだけは覚えてろよー」

そして堂円寺さんは公園から出ると姿が見えなくなった。
死神と天使じゃ極端に違うよな…

「一体…何が起きているんだ…?」
風は未だに寒かった。
その寒さが冷静さを保もさせてくれたのかもしれない。
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