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第1章
絵本を取りに
しおりを挟む「これから時間あるぅ~?」
駅に向かっていると、まったく面識のない男から声を掛けられた。どこにでもいそうな大学生みたいだ。
「バイトあります。」
「バイトの後は~?」
めんどうだなあ。
こういう奴は、可愛いとか関係なく、見た目の感じや女なら声を掛けてくる。
「時間ないので。」そう断ると、
「チッ、じゃあそんな服着んなよ」
何を思ったか、言葉を吐き捨てて去っていった。
またこの服のせいで勘違いをされてしまった。
気づけば、こぶしを握り締めていた。手のひらには、お気に入りのネイルが突き刺さっていた。
「…スミカちゃん、一杯飲んでから働くかい?」
いつも笑顔のマスターは、そういって紅茶を出してくれた。マスターは私の憧れ。だって、人の気持ちを察するのが上手い。すごいと思う。
「彼とは話せた?」カチャカチャとコーヒーカップの音が鳴る。
「はい。また来るそうです。」
そうか、といって、それきり黙ったまま。
この空間、雰囲気、落ち着く。
日も暮れて、少し寒くなったころ。
「こんばんは。」メガネの無造作ヘアがやってきた。
「いらっしゃいませ。」絵本を取りに来たかな。
「1名です。」
てっきり、忘れ物を取りにきただけかと思ったけど、お客さんとしても来たらしい。
「これ、忘れ物。」
「ありがとう。」
「遅くまで講義?」お客さんはイロハくんだけだった。
「そうだね、僕、学芸員過程も取っててさ。それが最終講義の時間なんだ。」
「なるほど」
「スミカちゃん、良ければ話していきな~。お客様は何を飲みますか?」
にこにことマスターがやってきて、紅茶をかちゃりと置いた。
「マスター!すみません。」
「バイト、そろそろ上がりの時間だから!紅茶でも飲みながら話しなれ」
「ありがとうございます。僕も紅茶でお願いします。」
「はいよ~」
少し気恥ずかしくて、顔から汗が噴き出した。
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