地雷系は怖いですか?

アビト

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第1章

出会い

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「いらっしゃいませ~!」

今日も私はカフェで働く。でも、今日はいつもと違っていた。

「こんにちは。」
見たことがあるような顔だった。
…思い出した、イロハくんだ。
イロハくんというのは、大学と学部が同じで大人しそうな様子の人。いつも本を持っているイメージがある。

今は働いてるし、直接、大学で話したこともないし…。
いつもの対応をして、席に案内した。


飲み物を持っていくと、驚く光景があった。
なんと、絵本を読んでいるではないか。
手のひらサイズの絵本。珍しい。絵本ってだいたい大きいものが多いイメージがある。
それにしても、大学生にもなって?絵本?

「ありがとうございます。」
イロハくんは、にこりと笑って受け取った。

会計を済ませた後、イロハくんとは何もプライベートなことは話さずに終わった。

「…あれ?」
片付けようとしたとき、彼の荷物が置いてあった椅子に絵本があった。手のひらサイズ。

幼い女の子が描かれていて、ほっこりするような絵柄。可愛い。
とりあえず、マスターに相談しよう。

「スミカちゃんが、大学で聞いてみたらどうかな。でも、無理して話す必要はないからね。」
ニコニコの笑顔で言った。
「…わかりました。」
マスターはいい人だ。言われたら、そうする。

可愛らしい絵本。中身をちらりと見てみる。
どうやら女の子が戦う話らしい。おばけと。
ふわふわとした女の子が、鎧に身を包んで戦う。なんだか意外だった。


ということで。
「イロハくん。」
講義の終わり、一人で座っているイロハくんに声を掛ける。
ゆるりと顔を上げ、私の方を見る。よく見ると、綺麗な顔立ちをしていた。
メガネをかけていて、無造作な黒髪だから、芋っぽくは見える。

「昨日行ったカフェで私、働いているんだけど、絵本の忘れ物してない?」
「あー、そうだった。忘れてた。」
「汚しても悪いし、カフェで保管してあるよ。」
そうなんだ、ありがとう、というと少し間を置いて、

「…絵本の中身は見た?」探るような瞳で私を見てきた。

どうしよう、勝手に見たといったら怒るかな…。でも、感想を言いたい気持ちもある…。

よし。

「ご、ごめん、ちょっと見ちゃった。」
「どうだった?」
「なんか不思議だった。あの女の子がバリバリに剣もって戦うなんて意外。」
そういうと、少し噴き出すようにふふっと笑っていた。

「だよね。僕もそう思う。」
好きな絵本なんだ、後で取りに行くね、そういうと去っていった。

大学生にしては落ち着いた人だった。陽だまりのような笑顔が印象に残った。
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