某国の皇子、冒険者となる

くー

文字の大きさ
上 下
66 / 142
第5章 砂漠の国の錬金術師

1. 友との再会

しおりを挟む
「ニケ!」
居間のソファで寛いでいるニケに駆け寄った。ニケはソファから立ち上がって、俺を迎えた。
「ひさしぶりだね、ノア」
ニケは俺の一個下だ。だからなのか、弟ができたように感じていた。

「ひさしぶり!今日はどうしたんだよ?」
「急にノアの顔が見たくなっちゃって。来ちゃった」
「ずっと待っててくれたの?」
日はもうとっくに落ちている。こんな時間まで待たせてしまって、申し訳ない……

「まあね。また明日出直そうかなって、そろそろ帰ろうかと思ってたら、ノアたちが帰ってきたんだ。少しでも顔が見れてよかった」
「あっちゃー……ふだんは毎日この師匠の屋敷に引きこもって、修業してばっかりなんだけどな。今日は仕事で遺跡探索に出かけてたんだ。予定って重なるもんだなぁ」
「だね。もう遅いし、また出直すよ」
せっかく来てくれたのに……あっ、そうだ!

「明日、四人でブラウフォンスに夕食に行こうって話してたんだけど、ニケもどう?」
「……いいの?」
「もちろん!遺跡探索おつかれ会&ウィル激励会なんだけど、よかったらぜひ」
「激励会?」

ウィルが帝都の冒険者ギルドに修行に行くことをニケに話した。
「ふーん……帝都の冒険者ギルドにそんなツテがあるなんて、ウィルってすごいね…」
「え…!?ま、まあね……」
そういえば、ニケには俺が帝国の皇子だってこと、明かしてなかったなぁ……
「それじゃ、また明日、冒険者ギルドで」

転移魔法の呪文を唱えようとしていたニケに、エトワールが声をかけた。
「ニケ。こんばんは」
「えっと…エトワール?」
「はい。あなたが治療薬をホルデウム殿と煎じてくださったと聞きました。その節はありがとうございました」
「すっかり元気になったみたいだね。よかったよ」
「はい、おかげさまで。それではまた明日」
「うん、またねー」




翌日――

俺たちはブラウフォンスの冒険者ギルドにて、兄上からの依頼の報酬を受け取った後、ニケが来るのを待っていた。
「ニケ、遅いな~」
「アイツ遅れるって。掲示板にこれが……」
ウィルが渡してくれたそれは、ニケからの伝言メモだった。

『ごめん、仕事が長引いちゃって、少し遅れそう。先に始めといて。あと、店の場所のメモをここの掲示板に貼ってくれると助かる』

スマホないの不便だなぁ……まぁ、その代わり転移魔法や異次元生成魔法があるからトントンか……
「仕事なら仕方ない。先に店を探しに行こう」

俺たちは冒険者ギルドを後にした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夫に隠し子がいました〜彼が選んだのは私じゃなかった〜

白山さくら
恋愛
「ずっと黙っていたが、俺には子供が2人いるんだ。上の子が病気でどうしても支えてあげたいから君とは別れたい」

【完結】今更そんな事を言われましても…

山葵
恋愛
「お願いだよ。婚約解消は無かった事にしてくれ!」 そんな事を言われましても、もう手続きは終わっていますし、私は貴方に未練など有りません。 寧ろ清々しておりますので、婚約解消の撤回は認められませんわ。

愛されなければお飾りなの?

まるまる⭐️
恋愛
 リベリアはお飾り王太子妃だ。  夫には学生時代から恋人がいた。それでも王家には私の実家の力が必要だったのだ。それなのに…。リベリアと婚姻を結ぶと直ぐ、般例を破ってまで彼女を側妃として迎え入れた。余程彼女を愛しているらしい。結婚前は2人を別れさせると約束した陛下は、私が嫁ぐとあっさりそれを認めた。親バカにも程がある。これではまるで詐欺だ。 そして、その彼が愛する側妃、ルルナレッタは伯爵令嬢。側妃どころか正妃にさえ立てる立場の彼女は今、夫の子を宿している。だから私は王宮の中では、愛する2人を引き裂いた邪魔者扱いだ。  ね? 絵に描いた様なお飾り王太子妃でしょう?   今のところは…だけどね。  結構テンプレ、設定ゆるゆるです。ん?と思う所は大きな心で受け止めて頂けると嬉しいです。

よくある婚約破棄なので

おのまとぺ
恋愛
ディアモンテ公爵家の令嬢ララが婚約を破棄された。 その噂は風に乗ってすぐにルーベ王国中に広がった。なんといっても相手は美男子と名高いフィルガルド王子。若い二人の結婚の日を国民は今か今かと夢見ていたのだ。 言葉数の少ない公爵令嬢が友人からの慰めに対して放った一言は、社交界に小さな波紋を呼ぶ。「災難だったわね」と声を掛けたアネット嬢にララが返した言葉は短かった。 「よくある婚約破棄なので」 ・すれ違う二人をめぐる短い話 ・前編は各自の証言になります ・後編は◆→ララ、◇→フィルガルド ・全25話完結

所詮は他人事と言われたので他人になります!婚約者も親友も見捨てることにした私は好きに生きます!

ユウ
恋愛
辺境伯爵令嬢のリーゼロッテは幼馴染と婚約者に悩まされてきた。 幼馴染で親友であるアグネスは侯爵令嬢であり王太子殿下の婚約者ということもあり幼少期から王命によりサポートを頼まれていた。 婚約者である伯爵家の令息は従妹であるアグネスを大事にするあまり、婚約者であるサリオンも優先するのはアグネスだった。 王太子妃になるアグネスを優先することを了承ていたし、大事な友人と婚約者を愛していたし、尊敬もしていた。 しかしその関係に亀裂が生じたのは一人の女子生徒によるものだった。 貴族でもない平民の少女が特待生としてに入り王太子殿下と懇意だったことでアグネスはきつく当たり、婚約者も同調したのだが、相手は平民の少女。 遠回しに二人を注意するも‥ 「所詮あなたは他人だもの!」 「部外者がしゃしゃりでるな!」 十年以上も尽くしてきた二人の心のない言葉に愛想を尽かしたのだ。 「所詮私は他人でしかないので本当の赤の他人になりましょう」 関係を断ったリーゼロッテは国を出て隣国で生きていくことを決めたのだが… 一方リーゼロッテが学園から姿を消したことで二人は王家からも責められ、孤立してしまうのだった。 なんとか学園に連れ戻そうと試みるのだが…

生徒会長親衛隊長を辞めたい!

佳奈
BL
私立黎明学園という全寮制男子校に通っている鮎川頼は幼なじみの生徒会長の親衛隊長をしている。 その役職により頼は全校生徒から嫌われていたがなんだかんだ平和に過ごしていた。 しかし季節外れの転校生の出現により大混乱発生 面倒事には関わりたくないけどいろんなことに巻き込まれてしまう嫌われ親衛隊長の総愛され物語! 嫌われ要素は少なめです。タイトル回収まで気持ち長いかもしれません。 一旦考えているところまで不定期更新です。ちょくちょく手直ししながら更新したいと思います。 *王道学園の設定を使用してるため設定や名称などが被りますが他作品などとは関係ありません。全てフィクションです。 素人の文のため暖かい目で見ていただけると幸いです。よろしくお願いします。

兄がいるので悪役令嬢にはなりません〜苦労人外交官は鉄壁シスコンガードを突破したい〜

藤也いらいち
恋愛
無能王子の婚約者のラクシフォリア伯爵家令嬢、シャーロット。王子は典型的な無能ムーブの果てにシャーロットにあるはずのない罪を並べ立て婚約破棄を迫る。 __婚約破棄、大歓迎だ。 そこへ、視線で人手も殺せそうな眼をしながらも満面の笑顔のシャーロットの兄が王子を迎え撃った! 勝負は一瞬!王子は場外へ! シスコン兄と無自覚ブラコン妹。 そして、シャーロットに思いを寄せつつ兄に邪魔をされ続ける外交官。妹が好きすぎる侯爵令嬢や商家の才女。 周りを巻き込み、巻き込まれ、果たして、彼らは恋愛と家族愛の違いを理解することができるのか!? 短編 兄がいるので悪役令嬢にはなりません を大幅加筆と修正して連載しています カクヨム、小説家になろうにも掲載しています。

噂好きのローレッタ

水谷繭
恋愛
公爵令嬢リディアの婚約者は、レフィオル王国の第一王子アデルバート殿下だ。しかし、彼はリディアに冷たく、最近は小動物のように愛らしい男爵令嬢フィオナのほうばかり気にかけている。 ついには殿下とフィオナがつき合っているのではないかという噂まで耳にしたリディアは、婚約解消を申し出ることに。しかし、アデルバートは全く納得していないようで……。 ※二部以降雰囲気が変わるので、ご注意ください。少し後味悪いかもしれません(主人公はハピエンです) ※小説家になろうにも掲載しています ◆表紙画像はGirly Dropさんからお借りしました (旧題:婚約者は愛らしい男爵令嬢さんのほうがお好きなようなので、婚約解消を申し出てみました)

処理中です...