某国の皇子、冒険者となる

くー

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第3章 定めに抗う者たち

11. 対策

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ブラウフォンスから俺たちは再戦の地、マントデア平野へと魔法で降り立った。
前回よりも人は減っている。100名にも満たないだろう。
「……今回はさすがに、ザコはいないか」
「ああ、精鋭揃いってかんじだな…」
今回集められた冒険者たちと協力者たちは、みな引き締まった顔をしていた。前回のアルゴグ討伐では参加者総勢153名中、55名が死亡、67名が重傷を負い、現在も治療中だった。
この甚大な被害により討伐対象モンスターには、絶死のアルゴグという通称が付けられ、懸賞金額は跳ね上がっていた。

「ノア、エトワールのために…っていう気持ちはわかるけど、ムリだけはするなよ」
ウィルの手に肩を軽く掴まれる。緑の目は、厳しい光を湛えている。
「わかってる…ウィルも気をつけて」
「ああ……」
ウィルは剣の他に、弓矢を携えていた。前回のモンスターとの対峙で冒険者たちが得た情報は、ギルドを通して今回の参加者全員に周知されていた。あまりに巨体すぎるため、不用意に近づくのは危険であり、遠距離からの攻撃が有用であると。

「ジンも……頼んだぞ」
「ああ。ふたりの血、大切に使わせてもらうよ」
数日前に俺とウィルは献血し、血を瓶に詰めてジンに渡していた。魔法を使えるようにするために。
ジンの目は真紅に輝き、頭からは角が出ていた。角を他の冒険者に見咎められたときは、痛アクセ大好きおじさんで通す算段だ。
翼はさすがに目立つので、出ないように抑える訓練をさせていた。
魔族虐待だとわめかれたが、これもすべてエトワールのためだ。ジンにもがんばってもらわないと……

「おっさん…このたたかいが終わったら覚悟しときなよ。ノアにしたことを償わせてやるから」
「その話は…終わってから……」
「ニケ…ジンのやる気を削がないでよ。今は猫の手も借りたいんだから」
「……猫?もっと他にたとえはないの……」
「ごめんノア……ノアのことになると僕、周りが見えなくなっちゃうんだ。ノアは僕にとって、特別だから……」
「ニケ…」
潤んだ目でじぃっと見つめられる。

「痛っ!…ウィル!?」
ウィルがニケの後ろ頭を小突いた。ていうかけっこうな音がしたけど、大丈夫か……
「いい加減にしろよ、このクソガキ……ノアを困らせるな」
「ちっ……たったの二個上なだけで、年上ヅラすんなっての……」


「みなさーん!本日はアルゴグ討伐のためお集まりいただき、ありがとうございます!これより痕跡を辿り、アルゴグの住処へと向かいます!」

冒険者ギルドお抱えの魔術師たちによって、討伐参加者たち全員に気配を極力薄くする魔法がかけられた。
夜明け前の薄明の中を、俺たちはできるだけ足音を抑えて進んでいく。
「寝起きで動きが鈍ってるところを狙うってことか……」
前回の反省が活かされ、しっかりと対策が立てられているようだった。


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