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満たす
しおりを挟む泊まりにくるのは週に2回程度だと言っていたのが、あれから週3、週4と頻度が上がっていき、今ではほぼ毎日になっている。花井が他の誰のところにも行かないのは、なんとなく気分が良かった。
『今日も泊まらせて!』
昼休憩中、花井から届いたメッセージに了承を示すスタンプを送り、やれやれと息を吐いた。
「やっぱり彼女ができたんじゃないか」
「渡辺?!」
後ろから突然声をかけられ、斎賀の肩が飛び上がる。
「最近毎日眠そうなのはそういうことか、全く」
「いや、違ッ」
わたわたと慌てる斎賀の隣に座り、渡辺が恨めしそうに顔を覗き込んできた。花井との関係を見透かされたようで、ぶわ、と顔が赤くなる。
「あーあ、俺なんて結婚式の準備で彼女とギスギスしてるっていうのに」
「あ、そうなのか?」
「そう。今からこんなんで結婚生活やっていけるのかと思うよ」
「そんな・・・」
「斎賀、今夜飲みながら話を聞いてくれないか」
「いい、けど」
渡辺の困った顔を見て頷く。花井に連絡しなければ、とスマホを取り出す斎賀を、渡辺がじっと見つめた。
「結婚式は、やっぱり彼女の好きなようにさせてやりたいと思ったんだ。それが、俺がまるで挙式に興味がないように見えたらしくて」
「あー。"あなたは何も考えてくれないの?!"みたいな?」
「そうそう。俺にこだわりがないのはその通りなんだが」
「せめて招待状のリスト作成とか、配席とかはやった方がいいんじゃないか?」
「それは俺が主体でやってる」
頭を抱える渡辺に、斎賀は気負うなよ、と声をかけた。
「彼女さん、プレッシャーとか焦りとかがあるのかもな。渡辺だって式を成功させたいんだって、彼女さんの思うようにやってほしくて口出ししなかったんだって、ちゃんと気持ちを伝えろよ」
「斎賀・・・」
「渡辺は、仕事でも他の人に丸投げするような人間じゃないだろ。式の準備もちゃんと自分のできることを考えてやってる。彼女さんも本当はわかってると思うよ。ただ神経質になってるだけじゃないかな。ちゃんと2人でコミュニケーションを取って、思ってることを伝え合う方がいいと思う」
「斎賀、ありがとうな」
斎賀の口からは自然と渡辺へのアドバイスが湧き出てくる。あれだけ失恋したと泣いていたのに。
「斎賀はいつも俺のことを一番わかってくれてるよな。お前が女性だったら、俺は・・・」
「ブーーー!!!」
口に含んでいたビールを盛大に吹いた。咳き込む斎賀に渡辺が綺麗なおしぼりを差し出す。
「おま、急に、何、ゲホッ」
「ごめん」
「今のはさすがに失言だぞ、彼女さんに謝れ」
「・・・うん」
「渡辺もちょっとマリッジブルーになってんのかもな。ほら、飲もうぜ」
わたわたとテーブルにこぼれたビールを拭きながら、新しくドリンクを注文する。俯く渡辺を元気づけるように、斎賀はあえて声を大きく張り上げた。
「なあ、斎賀の彼女ってどんな子?」
「いや、だから彼女じゃないんだって」
ハイボールのジョッキで乾杯すると、唐突に渡辺が切り出す。斎賀は大きくため息を吐いた。
「そいつ男だから。たまに泊まりにくんの」
「男・・・」
「そうそう。だから変な勘繰りはすんな」
「じゃあ斎賀はゲイなのか?」
「へぁッ?!なんでそうなる!」
「そこ、キスマークついてる」
「うぇっ?!?!」
渡辺が指差したところを慌てて手で押さえると、渡辺が小さく笑った。カマをかけられたのだと気付いてももう遅い。斎賀が真っ赤な顔で俯いた。
「渡辺、性格悪い」
「ごめん。そっか、斎賀ってそうだったのか」
「・・・俺が男を好きで気持ち悪いか?」
「そんな偏見ないよ」
「そうか」
そこからは花井の話になった。酔い潰れたところを介抱してもらってから、たまに家に泊めてあげていることと、恋愛関係ではないことを伝えると、渡辺が眉を顰める。
「でも斎賀はそいつのこと気になってるんだろ?いつも嬉しそうにメッセージ返してるし」
「はぁっ?!いや、そん、違っ」
「違うのか?体も許してるのに。斎賀、あんまりそういうタイプじゃないだろう」
体だけの関係は嫌悪する方だろうと言われると、確かにそうだった。ただ、今回は長いこと片思いしていた渡辺の結婚というショックのせいで、自分の何かが揺らいでしまっただけで。
「一回きりじゃなくて、今も関係を続けてるんだろ?それってやっぱり」
「やめてくれ」
もうやめてくれ。これ以上、自覚させないでくれ。他の誰でもない、ずっと好きだったはずのお前に、言われたくない。それでなくともあいつは、斎賀以外の女や男のところに泊まりに行くのだ。この関係だって単なるギブアンドテイクであって、好きになっても、報われない。失恋は、しばらくしたくない。
「・・・俺の話はいいから、渡辺のこと聞かせてくれよ」
「斎賀」
そこから斎賀は浴びるように酒を飲んだ。渡辺が止めようと、目の前がぐるぐると回ろうと、渡辺の声も自分の声も遠くなろうと、ただただ飲んだ。朦朧とする意識の中で、渡辺の声が聞こえる。
「なあ斎賀、お前、俺のことを少しでも好きだったことはあるか」
何を言っているのか。出会った時からずっと、ずっと好きだったのに。結婚すると聞いて心が潰れてしまうほどに、焦がれていたのに。それを声に出せないまま、意識が闇の中に溶けた。
「君が花井くんか」
「はい。渡辺さんっすよね」
「ああ。斎賀が見ての通り、こうなってしまって・・・」
「連絡ありがとうございます。あとは俺がやりますんで」
斎賀の近くで2人の声がした。肩を預けていた姿勢が崩れ、嗅ぎ慣れた花井の香りに包まれる。いつものように、首に腕を回した。
その腕が強く掴まれる。
「斎賀っ」
「んぁ、渡辺?痛いってぇ・・・」
「渡辺さん、離してください」
痛みを振り払おうと腕を上げると、すぐに掴まれていた手が離れた。そのまま花井に抱き上げられる。
(これ、お姫様抱っこ?!)
「花井!落ちるって、こわい!」
「大丈夫、大丈夫。しっかり首に手を回しといてー」
「ひぃっ、落ちるうう」
「渡辺さん、ありがとうございました。じゃ」
「あ、ああ。じゃあな、斎賀」
ぶんぶんと渡辺に笑顔で手を振る斎賀を抱え直し、花井がアパートへと連れていく。その顔にいつもの笑顔はなかった。
部屋に戻ると、斎賀の服が全て剥ぎ取られ、水をたらふく飲まされた。いつもと違う花井の様子に、斎賀の酔いが少しずつ醒めていく。
「花井・・・?」
呼びかけても返事をしてくれない。それどころか目も合わせてくれない。何かしてしまったのだろうか。いや、酔い潰れたのを介抱させている時点で、しでかしてはいるのだが。
ベッドにうつ伏せにされると、これまでの条件反射で斎賀の後孔がひくついた。両脚をもじもじと擦り合わせる。
「・・・よかったっすね」
「へ?」
突然聞こえてきた冷たい声に、斎賀がびくりと震えた。
「渡辺さん、脈アリでしょ、あれ」
「な、にを」
「斎賀さんを俺に渡したくないって顔してた。腕まで掴んじゃってさ」
「花井、おれ」
「黙って」
泊めてもらう日はセックスする約束だよね、と耳元で囁かれ、尻たぶを両手で広げられる。中身の少なくなったローションボトルの口を後孔に差し込まれ、一気に注がれた。
「ああッ!つめたい!!」
「ごめんね、もう入れるから」
すぐに猛った陰茎を押し当てられ、奥まで貫かれる。慣らさなくともほぼ毎日花井を受け入れていた後孔は、悦んで陰茎を食い締めた。
「あああああッ!!」
「・・・っぐ」
いつもとは違う性急で独りよがりな行為に、これまでどれほど花井が斎賀を優しく抱いていたかがわかる。
「斎賀さん、斎賀さんッ」
「ああっ、やめて、やめて・・・っ」
「俺とじゃ、嫌なんだ?あんなに、したのにっ」
「違う、花井っ、やああッ」
「これから渡辺さんにしてもらうの?ねえ、斎賀さんっ」
「あああああッ!」
花井がガツガツと最奥を抉り、そのまま射精した。すっかり花井に仕込まれた斎賀は、最奥に受けた射精の快感によって押し上げられるように達する。後孔が精液を吸い上げるように絞った。
「ゔ・・・」
「花井、おれ、おれ、ん゙あ゙あ゙あ゙ッ」
「煩い」
話そうとする斎賀の口に花井がタオルを突っ込み、塞ぐ。そのまま腰をゆっくりグラインドさせ、前立腺から最奥までをゆっくりと擦り上げた。
「ふ、あ、あ、あ、ううッ」
「は、は、斎賀さん・・・っ」
鈍い斎賀にもわかったことだ。確かに、なぜか渡辺は斎賀を意識していた。斎賀と結婚したいというようなことを言って、食事の時もじっと見られていた。酔い潰れた斎賀の肩を抱く時、脇腹を支える手はなぞるように動いていた。
なんで今更。結婚も決まっているのに。そして、斎賀にはもう、花井がいる。皮肉なことに、見て見ぬふりをしていた気持ちをはっきりと自覚させたのは渡辺じゃないか。
「んん、んん、んんいっ」
そして、どう考えても花井は渡辺に嫉妬して暴走している。その熱情は嬉しいが、きちんと気持ちを伝えて繋がりたい。口を塞がれているのがもどかしく、一生懸命腰をくねらせる。容赦なく突き込まれる陰茎に朦朧となりながら、必死で花井に好意を伝えようと身を捩った。
「俺は渡辺さんじゃない。ちゃんと俺を感じて」
「ん゙ーーー!んんっ、んんっ」
わかっているのに。花井しか見ていないのに。伝わらない。悲しくて涙があふれる。
「泣いちゃった。ごめんね」
「ん゙ーーーーー・・・」
そのまま意識を失うまで揺さぶられ続けた。意識を取り戻した時には花井の姿はなく、「ごめんなさい」と書かれたメモと合鍵だけが残されていた。
「渡辺、おはよ」
「斎賀・・・おはよう」
「昨日は酔い潰れて面倒かけたな、ごめん」
「いや、いいんだ」
翌日、やや顔色の悪い渡辺に挨拶をする。何か言いたそうな渡辺に、努めて明るい声を出した。
「式のことは、彼女としっかり話し合えよー?」
「斎賀、俺は」
「結婚式、楽しみにしてる。お互い幸せになろうな」
「・・・っ、ありがとう」
苦しそうに眉根を寄せた渡辺に、思うところがないわけではない。ただ、その苦しみを取り除くことは、今の斎賀にはできないのだ。あれほど好きだったのに。何の運命の悪戯なのか、と斎賀は自嘲気味に笑った。
『話があるから、一度家に来てくれ』
初めて自分から花井に送ったメッセージは、3日経った今も既読がつかないままだ。あれほど渡辺に嫉妬してめちゃくちゃに斎賀を抱いたくせに、このまま姿を消すというのか。
今頃誰の家にいるのだろう。「失恋のショックはセックスで忘れよう」なんて斎賀に言うくらいだ。誰かと情事に耽っているのだろうか。
「お前が俺を失恋させてどうする・・・」
この苦しみを癒してくれるのではなかったのか。短い期間に立て続けにショックを受けた心臓が、キリリと痛んだ。
花井と会わなくなって1か月。相変わらず何の連絡もない。
仕事を終え帰る途中、吸い寄せられるようにショッピングモールに入った。高級ブランドショップが立ち並ぶそこを、ぼうっと眺めながら歩く。肩を寄せ合いながら歩くカップルたちにとって、とぼとぼと一人歩く自分はどう見えているのだろうか。
「翔ちゃん、これ似合いそうね!買ってあげるわ」
「いらねえ」
「んもー!こっちの方がよかった?」
「いらねえ、離れろ」
明らかに金持ちのマダムが男の腕にしがみついてしなだれかかっている。鬱陶しそうにその女を見る目が斎賀を捉え、見開かれた。
「斎賀、さ・・・」
花井だった。
斎賀が思わず踵を返してその場から逃げ出す。ショッピングモールの中を泣きながら全力疾走するサラリーマンなんて、動画で撮られてSNSに上げられそうだな、なんて場違いなことを考えながら一心不乱に走った。
今はあの女性の家に住んでいるのだろうか。鬱陶しそうにしていたが、求められればセックスするのだろうか。逃げておきながら、今足を止めて後ろに花井がいなかったらと想像すると、体が引き裂かれそうなほど辛い。久しぶりに走ったから肺が悲鳴を上げている。足を止めたいが、止まるのが怖い。
突然後ろから手を掴まれ、そのまま抱きしめられる。久しぶりにその香りに包まれ、乱れた呼吸に嗚咽が重なる。苦しい。でも嬉しい。斎賀を追いかけてきてくれたのだ。
「斎賀さん、俺」
口を開いた花井に、自分のそれを重ねる。そのまま舌を入れ、激しく絡めた。身を捩る花井の首の後ろに腕を回し、必死に引き寄せる。周囲の視線も、隣にいたあの女性のことも、今の斎賀の頭の中からは消えていた。
「斎賀さん、ちょっと、待って!」
「嫌だ、花井、花井、離れんな」
「わわ、わかったから、家に行こ、ね!」
「ん・・・」
まさに今逃げていたのが自分だということも忘れて、斎賀が花井の胸に顔を埋めた。そのまま引きずられるようにどこかに連れて行かれる。
見知らぬ高級そうなアパートに連れてこられ、ポケットから鍵を出す花井に斎賀が震え始めた。この部屋にあの女性と住んでいるのか、それとも別の人のなのか。
「ここ、誰の家だ、嫌だ、嫌ッ」
「俺が借りてる部屋だから」
「花井の・・・?」
鍵を開けられた先には広い部屋があり、そこには誰もいなかった。家具のあまりない殺風景なその部屋からは花井の匂いがする。
斎賀がほっと息を吐くと、花井に手を引かれた。そのまま見慣れない部屋に入り、ベッドに腰掛ける。向き合った花井が苦しそうに顔を俯けた。
「斎賀さん、本当に、ご」
「花井が好きだ」
花井がハッと顔を上げる。その目から視線を逸らさず、斎賀がもう一度同じ言葉を重ねた。
「謝んなくていい。まあ、連絡なかったこの期間は辛かったけど」
「あ、ご、ごめん・・・」
「それより、俺はまた失恋か?」
「違ッ!俺も斎賀さんのこと、好きだ!」
ぎゅうと抱きしめられ、大好きな花井のぬくもりに包まれる。嬉しくて嬉しくて、花井の首筋に顔を埋め、ちゅ、ちゅと吸い付いた。
「あ、でも渡辺さんとは・・・?」
「もう、同僚としてしか、見てない。お互い幸せになろうって言った」
「そっか。俺あんな格好いい人から斎賀さんを奪ったんだ」
「ん、花井が、好き」
「ゔ~~~」
花井が手で顔を覆い、天を仰ぐ。目の前に曝け出された首を斎賀がぺろぺろと舐めた。
「ちょ、待って、久しぶりの斎賀さんがこんな、とか、俺、死ぬ・・・」
「や、花井、キスしろぉ」
斎賀のおねだりに、花井が応える。花井が気を遣って、ずっと唇にキスしないようにしているのには気がついていた。唇が重なり花井の舌が差し込まれると、斎賀の体がびりびりと痺れる。
「ん、ふ、んんッ」
花井の手がワイシャツの中に忍び込み、肌に触れるか触れないかくらいで撫で上げた。触れられたところからぞわりと快感が湧き出て腰に溜まっていく。シャツを脱がされ、ズボンと下着を下ろされた。キスを続けながら花井も全裸になり、2人で抱き合って舌を絡める。
「ん、はない、んん」
「翔太って呼んで、守さん」
「んっ!あ・・・翔太ぁ」
「はぁっ、最高ッ」
花井が斎賀を押し倒し、両脚を担ぎ上げた。ローションに手を伸ばし、指にとって後孔に埋める。
「ん゙ん゙ッ!はぁっ」
「狭くなってる。あんまり触ってなかった?」
「ん、花井のじゃなきゃ、いや・・・」
「はぁ~~~っ!」
ぐちゅぐちゅと指でかき混ぜられ、斎賀の腰が反った。震える内股にキスマークを散らしながら、花井が指を増やしてほぐしていく。
「あ、あ、んああ!」
「俺も誰ともしてない、守さんの部屋、出ていってから。むしろその前からだけど」
「は、は、ほんと?ほんとに?」
「うん。嬉しい?」
「ん゙ん゙ッ!うれ、し、あ゙あ゙あ゙ッ!!」
花井の指が前立腺を抉り、斎賀の脳内がスパークした。花井がずっと自分だけを想っていてくれたのが堪らない。頭も体も気持ちよくて、内股に挟まれた陰茎から精液がぽたぽたと垂れた。
「は、守さん、ゆっくりするからもう入れていい?」
「ん、ん、翔太、入れて・・・」
「うあ~~!!とろとろの守さん可愛すぎてやばいッ」
花井がはち切れんばかりに膨らんだ陰茎を斎賀の後孔に当て、ゆっくりと沈めていく。あまりの質量に斎賀の目が見開いた。
「あ、あ、おっきすぎる、入らないってぇ・・・」
「これ以上煽んないで、もっと入んなくなる、ぅ゙」
じゅぶ。
なんとか一番太い傘のところまでを埋め、2人が荒い息を吐いた。逃げようとする斎賀の腰を押さえて花井がゆっくりと腰を進める。
「あ、あ、あ、あ゙あ゙、あ゙あ゙あ゙!」
「キ、ツ・・・ッ!」
「あ゙あ゙、そこ、だめ、ッ!!あ゙ー!!」
前立腺のしこりの上を通過すると、斎賀の腰が痙攣し陰茎から精液が飛び出した。花井は激しく収縮する後孔に射精を堪えながら、恥ずかしそうに手で顔を覆っている斎賀に優しくキスを落とす。空いた手でまだ脈動している陰茎を緩く扱くと腰をくねらせて悦んだ。
「あ、あ、今、だめだってぇッ!んん!」
「はぁ、守、かわいい・・・出ちゃいそー」
斎賀の陰茎を扱きながら花井が腰を押し込んでいく。前と後ろ両方からの快感に、斎賀の頭が真っ白になった。
「は、は、は、ああ、ッんあ゙あ゙!!」
「ゔ・・・」
最奥の壁に亀頭が届くと、2人の腰が同時に震えた。目が合い、自然と唇が合わさる。しっとりと舌を絡ませ、花井に流し込まれる唾液を斎賀がこくりと飲み込んだ。嬉しくて、気持ちよくて、思考が溶ける。
しばらく夢中でキスしていると、花井がゆるゆると腰を揺すり始めた。性感を高めるためというよりも、自然と動いてしまうというように。
キスがどんどん深くなる。口が犯されていると思うほど、花井の舌が縦横無尽に動き回った。飲みきれない唾液が口の端から垂れる。
「っあー、ごめん、っ、もう我慢できない・・・動かすね」
「は、は、翔太、っんん!」
そう言った花井が腰を引き、ずるずると陰茎が抜けていく。切なくなって斎賀が後孔を引き締めると、狭まった中を一気に貫かれた。
「あああああッ!!」
「ん゙、っはぁ!」
最奥の壁をゴリゴリと抉られる。快感で目が閉じそうになるのを堪え目の前の花井を見ると、眉根を寄せ口から荒い息を吐きながら腰を振っているのが見えた。
「あ、あ、っ、翔太、格好いい、好き・・・っ」
「ぐ、う・・・ッ、はぁ、やば、ん゙ん゙ん゙」
斎賀がぼやけた思考で花井にしがみついて甘える。途端に花井の陰茎が一回り固くなり、大きく腰を使い始めた。前立腺も最奥も、全て花井のもので擦り上げられる。
「あ゙!あ゙!翔太、おれ、イキそ、ああッ、もう、イく、イく!」
「ごめ、俺もイく、から、はぁっ、守・・・ッ」
斎賀が全身を硬直させ達する。大きく跳ねる太ももを抱え直し、花井が射精に向かって激しく腰を振り立てた。絶頂で収縮する中を責められ、斎賀が泣きながら絶叫する。
「あ゙ーーー!イ゙ッてる、イ゙ッてる!だめ、だめ、あ゙あ゙あ゙!!!」
「は、っあ゙!出る、ッ」
「あ゙・・・っ?!は、ーーー・・・ッ!ッ!」
斎賀を体重で押しつぶし、花井がぐん、と大きく腰を突き上げる。亀頭が最奥の壁を突き破り、そのままそこで精液を吐き出した。花井が何度も押し込みながら、射精のたびに短く息を漏らす。
腹の奥に爆発したような衝撃を受けた斎賀は、わけもわからぬまま達していた。花井の精液がかけられるたび、自身の陰茎からもだらだらと精液が垂れる。勝手に腰が上下するのを花井に押さえられ、思い切り体重をかけられた。本来入ってはいけないところで射精されるのをしっかりと味わされる。
「は、ぁ、何、ここ、動いてないのに、やばい・・・っ」
「結腸、気持ちいい?俺も、ッ、結腸に、カリのところ扱かれて、はぁッ、気持ちいい」
ぐ、ぽ。ぐぷ。ぐぷ。
花井が結腸に亀頭を出し入れし始めた。斎賀の体が勝手に暴れ、両脚が何度も空を蹴る。
「あ゙ーーー!!!あ゙あ゙!!があああああ!!!」
「ゔ、ゔ、はあっ」
蜜壺全体が痙攣し、何度もきつく花井を絞り上げた。花井は結腸口にカリのくびれを扱かせるのに夢中になり、必死に出し入れを繰り返す。最初は斎賀を気遣ってゆっくりしていたはずが、次第に遠慮がなくなっていった。
斎賀の意識は途中から蕩けており、時折り数回大きく痙攣し、腹筋を波打たせてはぐったりと力を抜いている。
「ぁ・・・ッ、んーー・・・」
「は、は、守さん、好きッ、ゔー、守さんッ、出る!!」
花井は一度大きく腰を引き、勢いをつけて結腸まで埋めた。そのまま腰を震わせ、大量の精液を吐きかけていく。射精の快感に腰が抜け、斎賀に覆い被さると、斎賀が一生懸命唇に吸い付いてきた。花井もそれに応え、甘いキスが始まる。
「・・・立てない」
「やりすぎちゃったね」
朝になり、斎賀がベッドから起きあがろうとして固まった。一晩中抱き潰された体は持ち主の思うように動かない。ベッドから出るのを諦め、斎賀が花井の腕の中にもう一度おさまる。心地いい。このまま離れたくない。花井はくすくすと笑いながら斎賀を優しく抱きしめた。
「・・・翔太、一緒に住も」
「わ、それ俺が言いたかったのに」
「ほんと?」
「ほんと」
斎賀が腕の中から花井を見上げると、蕩けるように甘い笑顔を向けられる。嬉しいのと恥ずかしいのとで赤くなった顔を花井の胸に埋めた。
「そういえば、この部屋、どうしたんだよ」
「んー、守さんとこ行き始めてから部屋探して、借りた」
「金は?」
「親の会社で働いてる。ちょっとの間だけにしようと思ってるけど」
「お前社長息子かよ!なんでこんな生活してたんだ・・・てか、親と縁切りたいって言ってたろ」
「・・・でも部屋借りるのに保証人は必要だし、仕事もしないで守さんのこと奪いに行けないし・・・。あんなに親の力は頼りたくなかったのに、結局こんなんで情けないけど」
あれだけ嫌がっていた親に連絡してまで、自分との未来を考えてくれていた。斎賀は花井の胸に擦り寄り、ぐりぐりと額をこすりつける。
「でも、連絡しろよ、寂しかった」
「うん、ごめん・・・連絡したら会いに行っちゃいそうだし、会ったら絶対抱いちゃうし、毎日ずるずる入り浸っちゃいそうで。自分で部屋借りるまでは一人で頑張ろうと思ってた。本当にごめん」
「ん」
謝る口を唇で塞ぐ。そのまま深くなりそうなのを抑え、もう一つだけ気になっていたことを尋ねた。
「ん、あの時一緒にいた女の人は?」
「あー・・・あれが母親」
「あ、そういう」
「うん。俺の部屋に置く家具を一緒に探すって聞かなくて」
「ふふ、愛されてんじゃん」
笑う斎賀の口を今度は花井が塞いだ。花井の手が斎賀の体をなぞり始める。
「ん、もう、むりだって、はぁっ」
「一回だけ、お願い、守・・・」
「それ、ずるい、んん」
耳元で名前を呼ばれ腰を撫で上げられると、斎賀の小さな抵抗はすぐに止んだ。輝く日差しの中で、2人の体が重なり合っていく。
その日本当に立てなくなった斎賀は、花井に甲斐甲斐しく世話をしてもらいながら、一緒に家具のカタログを眺めた。これからこの部屋が2人の色になっていくのかと思うとわくわくする。
「なぁ、テーブルは木目調のと、黒いの、どっちがいいかな?」
「守さんの好きな方でいいよ」
このシチュエーション、どこかで聞いた気が。少し意地悪をしたくなって、斎賀が口を尖らせた。
「翔太は一緒に考えてくれないのか?」
「違うよ。俺はこの部屋を守さんの好きなようにしてほしいの。それで、守さんがここにずっといたいって思ってほしい」
「ふ、ふーん」
「テーブル木目調だとあったかい雰囲気になるし、黒だとかっこよくなるけど、守さんはどっちが好み?」
「・・・ふふ」
「何その顔ー!」
花井はあの日からきちんと言葉で気持ちを伝えてくれる。これからの未来に、何も不安もなかった。
終わり。
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