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四日目(その一)
しおりを挟む「錬! 起きてっ! ユリちゃんが、ユリちゃんがいない!」
「……うーん、なんだよ、環。ーー今、何時?」
「朝の七時だよ! すっかり寝ちゃったんだよ、僕たち」
「……トイレか、風呂だろ?」
「とっくに見たよ! いないよ! リビングにも! 下のお風呂も、トイレも、全部見たよ!」
「……落ち着けって、環」
「それから……バッグがない。服がない。靴もない。電話も、つながらないんだ……」
「……嘘だろ」
脱ぎ捨ててあったパンツを急いで穿くと、部屋から飛び出していく錬。
それを追いかける環。
「ほら、いないでしょ?」
「なんで……どこ行った? ユリ」
「あー、なんで? ユリちゃん。なにも言わずにいなくなるなんて……もしかして神隠し⁉︎」
「環ーーあれ」
錬が、ダイニングテーブルの隅に置かれたメモを見つける。
『錬、環くんへ
黙って出ていってごめんなさい
二度と会わない
さよなら ユリ』
メモの側には、商店街でユリが買った大小セットのスプーンが、可愛いラッピングでふたつ置かれていた。
「これは……どういうこと? 錬」
「さあな……」
「さあな、じゃないよ! なにカッコつけてんだよー」
「……」
* 四日目 終わり *
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