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第48話 面倒な上司

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「ふむ、量はちと足りないが、今日のまかないもうまかったのじゃ!」

「うん、このラーメンって料理は初めて食べたけれど本当においしいね!」

「ええ、この複雑なスープの味は素晴らしいです。それにこちらの麺は不思議な食感ですね。これほど細いのになめらかで噛むと弾力があります」

 晩ご飯の時間になったとこころでちょうどポエルも戻ってきた。今日の晩ご飯はラーメンである。さすがにいきなり豚骨ラーメンは少しハードルが高いと思って、シンプルな醤油味のラーメンにした。

 もちろんいくら俺でもラーメンのスープや麺などは作ったことがないので、茹でるだけの麺やスープをストアで購入した。基本的に休みの日のご飯は簡単なものかつ、普段は温泉宿で出さないような料理を出していこうと思っている。

 元の世界で食べていたラーメンとかカレーとかはたまに食べたくなる味なんだよね。あと単純に休みの日には普段のようにいくつも料理を作りたくないというのもある。

「このラーメンは俺の故郷だとかなり人気のある料理だからね。違う味もあるから、今度は違う味で食卓に出ると思うよ」

「おおっ、違う味もあるのか! それは楽しみじゃな!」

 やはりラーメンの味は異世界でも十分通用するみたいだ。最近では外国でもラーメンの人気が出ていると聞いていたから、異世界でも受け入れられると思っていたぞ。

「ヒトヨシ様、ひとつご連絡があります」

「んっ、何かあったのか?」

 醤油ラーメンを食べ終わったところで、ポエルから何か連絡があるらしい。そういえばさっきまで天界に行って報告をしていたらしいから、あの駄女神に何か言われたのだろうか?

「明日の夕方ごろ、駄女神がこの温泉宿へ来ることになりました」

「……はあ、マジで?」

 えっ、あの幼女の神が温泉宿に来る? そういえば別れ際にいつか遊びに来ると言っていたけれど早すぎん? まだこの温泉宿の営業が始まってから1週間しか経っていないぞ……

「だめがみ?」

「おかしな名前をしておるのう」

「ああ、え~と、ダメガ・ミさんだ。ポエルの上司で、この温泉宿の大元を作った偉い人なんだよ」

 そういえばフィアナとロザリーには天使や天界のことについてはまだ話していなかった。ポエルもそのことについて忘れていたのは内心焦っているのかもしれない。どこの国の人だという名前になってしまったがまあいいか。

「それでその……ダメガさんは視察をしにやって来る感じなのか?」

「いえ、視察というわけではなく、本当にただ単純にちょっと遊びに行こうみたいなノリでしたね」

「………………」

 ああ、うん……簡単に想像ができてしまったな……

「というか、一応明日は休日なんだけれど、本当にこっちの都合は考えていないな……いや、でも他のお客さんがいない時に来るのはある意味で助かると言えば助かるのか……」

「一応明日はこの宿が休みであるとも伝えたのですが、やはり駄女神……ダメガさんは聞いてくれませんでしたね」

 ……まったく、休日手当くらいはもらわないと割に合わないぞ。まああの駄女神には思うところもあるが、元の世界で事故に遭って死んだ俺を別の世界に転生させてくれたわけだし、ちゃんとこの温泉宿のオーナーとして迎えるとしよう。

「了解だ。一応は俺たちのさらに上司となるわけだから、みんな失礼のないように頼むぞ」

「ヒ、ヒトヨシさんの上司なのかあ……うう、お腹が痛い」

「何か粗相をしたらクビされたりせんかのう。もうあの森にに戻るのは嫌なのじゃ……」

「基本的には俺とポエルが対応するから大丈夫だよ。休みの日に2人には悪いけれど、最初の挨拶と最後の見送りだけは一緒に頼む。まあ、そこまで激昂する人じゃないと思うから、あんまり気を張らなくても大丈夫だよ」

 むしろ楽観的過ぎるところに問題はあると思うけれどな。

「あまり気にし過ぎても振り回されるだけなので、常に平常心でいることをお勧めしますよ。あとは仮にも偉い人なので、どんなにイラついても手だけは出さないよう気をつけてくださいね」

「了解。気を付けるよ……」

 元部下からのありがたいアドバイスだ。あんな幼女でも一応は神様で恩人だし、さすがに手まではあげたりしないからそこは大丈夫だろう。

「来るのは明日の夕方からだし、まだ時間はあるからいろいろと準備ができるな。とりあえず1週間営業をしてみていろいろ見えてきたところもあるし、あとでこの宿のことについて相談させてくれ」

「うむ、今日は1日ゆっくりと休んだから大丈夫じゃ!」

「僕も休みは1日もあれば十分過ぎるほどだよ!」

 休みの日に仕事なんてみんなには本当に申し訳ないが、明日だけは我慢してもらおう。もちろんあの駄女神が毎週休みを削って接客をしろというのなら、断固として戦うからな! この温泉宿をブラックな環境にはさせないぞ!

「みんなありがとうな。おっと、そういえば今日は約束していたお菓子を作っていたんだった。ちょっと待っていてくれ」

「おお、そういえば約束しておったぞ!」

「ヒトヨシ様の故郷のお菓子ですか、どのようなものか気になりますね」

「まあ一応味は見たけれど、そこまで過度な期待はするなよ。うちの故郷だと温泉と言えば、この温泉まんじゅうだ」
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