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第45話 今後の対応
しおりを挟む「ふう~今日もお疲れさま」
無事に2日目の営業が終わった。今日この宿を利用している4組のお客さんたちは食事を終えて、今は自分たちの部屋に戻っている。フロントにはロザリーの召喚したゴーレムの四郎が控えているので、なにかあったらすぐに俺たちを呼んでくれるはずだ。
「とりあえず晩ご飯を食べたあとに、今日のことについて話そうか」
「うむ、今日はなかなか疲れたのじゃ!」
「うん。1組お客様が増えただけで結構忙しくなったね!」
「まあ今日はどちらかというと、途中でやってきた盗賊みたいなやつらのこともあったからな。フィアナも本当にご苦労さま」
「ううん、全然大したことないやつらでよかったよ。たぶんあの腕くらいだと、そのあたりにいる盗賊レベルかな。古代竜くらいの腕を持っている相手じゃなければ問題ないよ」
「そ、それは頼りになるな」
俺にとってはあの盗賊レベルで足が震えるほど怖かったぞ。だけど古代竜とか変にフラグになりそうなことは言わなくていいからな……
「ロザリーもあのくらいの盗賊だと問題なく対処できそうな感じ?」
「うむ、あのレベルのやつらだったら100人来ても問題ないのじゃ」
「ロザリーも頼もしいな」
どうやらこの2人にとっては4~5人くらいの盗賊たちごとき大した敵ではないらしい。やはり俺かポエルが接客するときは2人と一緒にしたほうがよさそうだ。
「………………」
「ああ、悪かった。話はあとにして先に食べよう。だから睨むなって……」
料理を目の前にお預けを食らっていたポエルが先ほどから睨んできていることに気付いた。一応俺はポエルの上司のはずなんだけどな……
「この野菜の揚げびたしという料理はおいしいですね。普通に野菜を茹でたり煮たりするのとは違った食感と味です」
「揚げびたしはどんな野菜でも大体おいしくなるよ。それにさっぱりしているから暑い時期でもおいしく食べられるんだよね」
個人的に素揚げと揚げびたしは大体の食材をおいしく食べられる調理法だと思っている。特に揚げるという調理法があまり広まっていないこの異世界ではお客さんにとっても新鮮な味だろう。
「こっちの魚もおいしい! 昨日の煮付けっていう料理とは味が全然違うけれど、脂が乗っていて柔らかい魚にこの味付けがとっても合っているね! みそ煮ってことはあの味噌汁と同じ味噌を使っているのかな?」
「そうだぞ。昨日の煮付けは醤油をベースに味をつけていたけれど、今日のみそ煮は味噌をベースに味を整ているんだ」
今日の魚料理はサバの味噌煮だ。煮付けと同様にこの味付けはうちの温泉宿で働いていた板長の味を基にしている。味噌煮のほうもご飯が良く進むんだよな。
今日泊まっていたお客さんたちもサバのみそ煮をおいしそうに食べていたみたいだし、どうやら味噌の味は問題なく受け入れてもらえそうだ。
「この味噌や昨日使った醤油や豆腐も大豆という同じ種類の豆からできているんだよ」
「へえ~そうなんだ! 大豆ってすごいんだね!」
そう、元をたどれば味噌や醤油や豆腐はすべて大豆が材料である。日本料理で一番大事な素材は何かと聞かれたら、間違いなくこの大豆という素材になるだろうな。
「ちなみに納豆もこの大豆からできているぞ」
「へ、へえ~」
「もうあの変な臭いのする豆はいらんのじゃ……」
納豆もおいしいんだけどなあ。まあ、納豆独特の香りが駄目な人も多くいるから仕方がない。それに誰だって味の合わないものはある。お客さんたちの中でも苦手な料理同士を交換していたもんな。
「さて、食べながら聞いてほしいんだけれど、とりあえず今日来た盗賊みたいなやつらが来たらフィアナとロザリーに対応してもらう。この温泉宿で人が死ぬのは嫌だから、可能ならば生かしておいてほしい。とはいえ、みんなの安全が最優先だから無理はしないようにな」
最近ではそうでもないが、温泉宿といえばミステリーで人が死ぬ場所の筆頭に挙げられる。ミステリーなら良いが、実際に人が死んだ温泉宿に誰が泊まりたいかという話である。物騒な世界のようだから、あまり気にしない人のほうが多いかもしれないが、俺は気にしてしまう。
できる限りは宿を汚したくはないので、基本的には今日と同じように拘束したあとで眠らせてから、前にロザリーがいた誰も人がいない場所に放置という方法でいいだろう。
あちらも殺す気できているわけだし、容赦をする気はない。そのまま解放してしまえば他の人が不利益を被る可能性が高いわけだし、それが一番良い方法だろう。
とはいえ、さすがにこの温泉宿の物を窃盗しようとした場合については出禁という処置くらいでちょうどいいかな。さすがにあの森に放置するのはほぼ死刑と同じようなものだし、魔が差すということもあるだろう。
「了解だよ」
「わかったのじゃ」
「頼りにしているぞ。あと今日はお客さんが1組増えたけれど、みんな問題はなさそうだったな。昨日よりはみんな接客がうまくなっていたし、あとは経験を積むだけだと思うから、このままの調子で続けてほしい」
「わかりました」
嬉しい誤算というべきか、この3人の接客やお客さんへの対応は昨日よりも良くなっていた。正直に言って、練習期間を含めてもこれだけ短い期間でこれだけの接客ができていれば十分である。
……あとは面倒なお客さんが来た時だけが唯一の不安点かな。
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