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第24話 子供たちのこと
しおりを挟む「あっ、ジンおじさん!」
「ジンさん」
「……おっはん」
とりあえず明日からのことを相談したあと、ルトラとビーネとアレクのいる部屋を訪れた。
「ちゃんとご飯は食べさせてもらったか?」
「うん! とってもおいしかったよ!」
「はい。それにみなさんとても優しくしてくれました」
「……飯はうまかった」
どうやらリーベラの部下達はちゃんと3人の面倒を見てくれていたらしい。
「それはよかった。明日から俺はここで働くことになったんだけど、みんなはどうしたい。ここで今日のように保護してもらうことも可能だし、別の魔族の村に送ってやることもできるぞ」
魔王軍の者には3人のことを話して、このままここで保護をしてもらう許可をもらっている。この子達の村はすでに人族によって滅ぼされているので別の魔族が暮らしている安全そうな村や街に送ってやることもできる。
もちろんたとえ別の村や街に行くことを選んだとしても、頻繁に様子を見に行ってあげるつもりだ。転移魔法があればすぐ会いに行くことができるからな。
「ビーネ、ジンおじちゃんの手伝いがしたい!」
「んん、手伝い?」
「私もジンさんのお手伝いをしたいです! ジンさんに命を救ってもらいましたし、綺麗なお洋服やおいしいご飯をいただきました。少しでもジンさんの力になりたいです!」
「……そうか。俺の仕事を直接手伝うのは難しいけれど、別の仕事がないか聞いてみるよ。ありがとうな、でも自分達のやりたいことを見つけたらすぐに言うんだぞ」
確かにここで何もせずにただ過ごしているだけよりも、何かしらの作業をしていたほうがいいかもしれない。考えることが多いと村のことや亡くなってしまった家族のことを考えてしまうだろうからな。
もちろん人族の村や街へ行くことの手伝いをさせるつもりはないので、魔王城での仕事がないか聞いてみるとしよう。
「おっさん、俺は身体を鍛えたい! 人族に復讐するために強くなりたいんだ!」
「………………」
アレクはまだまだ人族を恨んでいるようだがそれも当然か。今の状況で人族への復讐心を捨てろなんて言っても無理な話だろう。
それに今は復讐心であろうとも、生きる気力があることは大切だ。それにこんな世界なら身体を鍛えて強くなっておくに越したことはない。
「わかった、俺が直接鍛えることはできないが、他の人に頼んでみる」
「本当か、おっさん!」
「ああ。だけど働かざる者食うべからずだからな。ビーネとルトラと同じようにしっかりと仕事はしてもらうぞ。余った時間で戦闘の指導してくれる人がいないかを探しておいてやる。それでいいな?」
「ああ、それでいいぜ!」
この子達のためにも早く人族と魔族との戦争を終わらせてあげたいところだ。とりあえずこの子達の仕事や面倒を頼むのと一緒に、もしも俺が死んでしまった時は3人の面倒を見てもらうよう頼んでおくとしよう。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
さていよいよ今日からオッサンは魔王として動くわけだ。……嫌だなあ、全人族の一番の敵になるってことだもんな。
「「「おはようございます、魔王様!」」」
「うむ、おはよう」
昨日の会議室のような部屋へはいると、すでに四天王の4人がいた。結構早く起きたつもりだったのだが、まさか全員がいるとはな。
ちなみに俺には魔王城の中に俺専用の個室がある。さすがに魔王の威厳として共同の部屋で寝るのはまずいそうだ。
寝る際は障壁魔法を張った上で寝ているから暗殺もできないに違いない。あと鎧はつけたままでも眠れたぞ。そもそも鎧の重さはほとんどないようなものだったし、関節部分も窮屈ではないので普通に眠ることができた。
「魔王様、昨日話していたとおり、魔族の領域の村や街に通達を送っております。数日以内には、魔族の領域内に新たなる魔王様が誕生したことは知れ渡るでしょう」
「そうか、引き続きよろしく頼むぞ」
魔族には空を飛べる種族がいたり、念話というスキルにより離れた場所にいても会話ができる。そのために元の世界のように電話などの連絡手段がなくても、かなりの速さで連絡をすることが可能だ。
そして魔王の誕生と合わせて、捕虜にしている人族に対する扱いを厚遇するようにということも伝えている。
きちんとした食事を提供し、暴力を加えたり性的な乱暴をすることを禁止し、破ったものには罰則を与えるとも明記しておいた。人族の捕虜を解放するまで、少しでも環境を改善しておきたい。
「それでは予定通り、現在戦闘中の場所に向かい、戦闘を止めることから始める」
「はっ! どうぞお気を付けください、魔王様」
「魔王様のお力、拝見させていただきますよ」
「すぐにくたばんじゃねえぞ!」
まずは現在人族と魔族が争っている戦闘地域へと向かい、戦闘を中断させる。魔族の捕虜を助けることも大事だが、現在戦闘中の場所では、一分一秒ごとに互いの命が失われていく。一刻も早く戦闘を止めなければならない。
「魔王様。妾の命、存分にお使いください!」
「うむ、期待しているぞ。だがその命を簡単に散らすことは断じて許さないからな」
「はっ!」
そう、今回はリーベラが俺に同行する。というのも転移魔法は俺が行った場所にしか転移することができない。
そのため戦闘地域に向かうためには一番近いところまで転移し、そこから風魔法で空を飛んで最速で向かう。それについて来られるのが空を飛べる竜族のリーベラが最適ということになった。
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