上 下
30 / 112

第30話 広島県② 宮島、アナゴ飯、もみじ饅頭

しおりを挟む

「ほう、これがこちらの世界の船なのじゃな!」

「これは宮島、別名厳島いつくしままで行くためのフェリーだね。片道10分くらいだから小さめの船だよ。この世界にはこの船の何十倍も大きな船があったりするね」

「何十倍!? それは想像もできないのじゃ……」

 ここは宮島へ行くためのフェリー乗り場でもある。もちろんミルネさんの転移魔法なら、フェリーを使わず直接宮島にある厳島神社いつくしまじんじゃへと行けるのだが、せっかくならフェリーにも乗ってもらったほうが良いと思ったのだ。

 宮島へのフェリーターミナルからは往復で500円もかからず、10分程度の道のりだ。

 ミルネさんも異世界で船に乗ったことはあるらしいが、向こうの世界はまだ帆船らしいから、エンジン動力の船には驚いたようだ。



「ここは美しい島なのじゃな」

「本当ですね。海に囲まれた島ですか。沖縄を思い出しますね」

 沖縄にはたくさんの島があるからな。そういえば喜屋武さんは沖縄のどこ出身なんだろうな。やはり那覇のある本島かな?

「フェリーでくる島って本当にいいよね。それぞれの離島には本当にいろいろな特色があるからなあ」

 まあ宮島を離島というかは微妙なところであるが、フェリーで移動するだけで特別な場所に来たという感覚がある。特に九州や四国には離島が多く、旅中はいろいろな島を巡ったりもした。
 
 身近なところでは東京からでもフェリーで伊豆諸島に日帰りで行けたりするからな。一度伊豆大島に行ったことがあるが、ご飯もおいしくて本当に楽しかった。普通の観光だけでなく、離島を巡る旅行もおすすめだぞ。

 宮島の中央には弥山という山があり、ロープウェーで登ったりもできる。

「おお、ここにも鹿がおるのか」

「そうだね。奈良公園と同じで、この島にもたくさんの鹿がいるよ」

 奈良公園と同じで、この島にもたくさんの鹿が生息して街中を歩いている。

「これはなんとも巨大なしゃもじですね」

「しゃもじ?」

「日本だと昔からご飯をよそうときにしゃもじを使っているんだ。ほら、あっちに普通のサイズのしゃもじがあるよ」

 厳島神社へと向かう商店街の途中には日本一大きなしゃもじが展示されている。ここ宮島ではしゃもじが有名だ。宮島は昔から木製のしゃもじの有名な生産地で、しゃもじの起源もここ宮島だと言われている。

「こんな感じでしゃもじに文字が書いてあって、縁起物として売られているよ」

 もちろん普通に使用するしゃもじも売られてはいるが、他にも『必勝』、『商売繁盛』みたいな文字が書かれた縁起物のしゃもじも販売されている。宮島のお土産としてはちょうどいいかもしれないな。



「おお、すごいぞ! 海の上に社や鳥居が立っているのじゃ!」

「赤色の社がとても綺麗ですね」

「厳島神社は日本三景のひとつで、世界遺産でもある場所だからね」

 松島や天橋立あまのはしだてと並ぶ日本三景のひとつで、日本の文化遺産のひとつでもある。

 『神をいつまつる島』という厳島の語源のように、古くから島そのものが神として信仰されており、この社はかなり昔に建てられた。

 わざわざ潮の満ち引きがある海上に建てられたのは、島全体が神と崇められていたため、島の木を切ったり、土を削ることがないようにするためだといわれている。

「そしてこれが一番有名な大鳥居だ!」

 厳島神社の社も有名だが、一番有名なのは海上に浮かぶこの巨大な大鳥居だろう。海の中に荘厳とたたずむ大きな赤い鳥居は、島の対岸からでも見ることができるらしい。

「干潮時には歩いて鳥居をくぐることができるんだよ」

「それは面白いですね」

 今は海の中にたたずんでいるが、潮が引けば歩いて鳥居の場所まで行けるから面白い。景色としては潮が満ちているときのほうが綺麗だから、どの時間帯に行くかは迷うところなんだよな。

「今日はミルネさんがいるおかげで、夕日が沈む綺麗な時間帯を見ることができるからね」

「ほう、それはさぞ美しいのじゃろうな!」

 そう、この大鳥居の一番の見どころは夕日が沈む時間帯や朝日が昇る時間帯なのだが、実はその時間には始発のフェリーはまだなく、最終便のフェリーはすでにないのだ。

 そのため、本来なら夕日や朝日を見るためには宮島に一泊しなければならないのだが、ミルネさんの転移魔法があるため、帰りのフェリーの時間は気にしなくてもよいのである。本当に転移魔法って素晴らしい!



「これは愛知県で食べたうなぎじゃな!」

「おしいね。これはアナゴといって、うなぎとは少しだけ違うんだ。でもかば焼きにして食べることは一緒かな」

 厳島神社で夕日の沈む美しい大鳥居を見たあと、広島県の名物であるアナゴ飯を出しているお店に来ている。

 アナゴ飯とはアナゴの頭や骨、昆布などで取った出汁に醤油を混ぜたものでご飯を炊いて、そのご飯の上にアナゴのかば焼きを乗せた料理である。

「うなぎと違って少しタンパクな味ですね」

「うん。うなぎは脂が乗っているけれど、アナゴはタンパクでさっぱりとした味かもしれないね」

 見た目はかなり似ているが、味は結構違う。うなぎの方が脂が乗っていてこっちのほうがおいしいという人のほうが多いかもしれないが、その分お値段もお高いからな。とはいえアナゴはアナゴでとてもおいしい。

 そして夜のおやつには広島県銘菓のもみじ饅頭を買ってきた。広島県のお土産と言えばこれだろう。

 また、最近ではもみじ饅頭という、皮に米粉と餅粉を使ったモチモチとした食感が特徴の新商品もある。ミルネさんはどちらも気に入ってくれたようでよかったな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

滅びる異世界に転生したけど、幼女は楽しく旅をする!

白夢
ファンタジー
 何もしないでいいから、世界の終わりを見届けてほしい。  そう言われて、異世界に転生することになった。  でも、どうせ転生したなら、この異世界が滅びる前に観光しよう。  どうせ滅びる世界なら、思いっきり楽しもう。  だからわたしは旅に出た。  これは一人の幼女と小さな幻獣の、  世界なんて救わないつもりの放浪記。 〜〜〜  ご訪問ありがとうございます。    可愛い女の子が頼れる相棒と美しい世界で旅をする、幸せなファンタジーを目指しました。    ファンタジー小説大賞エントリー作品です。気に入っていただけましたら、ぜひご投票をお願いします。  お気に入り、ご感想、応援などいただければ、とても喜びます。よろしくお願いします! 23/01/08 表紙画像を変更しました

転移したらダンジョンの下層だった

Gai
ファンタジー
交通事故で死んでしまった坂崎総助は本来なら自分が生きていた世界とは別世界の一般家庭に転生できるはずだったが神側の都合により異世界にあるダンジョンの下層に飛ばされることになった。 もちろん総助を転生させる転生神は出来る限りの援助をした。 そして総助は援助を受け取るとダンジョンの下層に転移してそこからとりあえずダンジョンを冒険して地上を目指すといった物語です。

ねえ、テレジア。君も愛人を囲って構わない。

夏目
恋愛
愛している王子が愛人を連れてきた。私も愛人をつくっていいと言われた。私は、あなたが好きなのに。 (小説家になろう様にも投稿しています)

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

離縁してほしいというので出て行きますけど、多分大変ですよ。

日向はび
恋愛
「離縁してほしい」その言葉にウィネアは呆然とした。この浮気をし、散財し、借金まみれで働かない男から、そんなことを言われるとは思ってなかったのだ。彼の生活は今までウィネアによってなんとか補われてきたもの。なのに離縁していいのだろうか。「彼女との間に子供ができた」なんて言ってますけど、育てるのも大変なのに……。まぁいいか。私は私で幸せにならせていただきますね。

ダンマス(異端者)

AN@RCHY
ファンタジー
 幼女女神に召喚で呼び出されたシュウ。  元の世界に戻れないことを知って自由気ままに過ごすことを決めた。  人の作ったレールなんかのってやらねえぞ!  地球での痕跡をすべて消されて、幼女女神に召喚された風間修。そこで突然、ダンジョンマスターになって他のダンジョンマスターたちと競えと言われた。  戻りたくても戻る事の出来ない現実を受け入れ、異世界へ旅立つ。  始めこそ異世界だとワクワクしていたが、すぐに碇石からズレおかしなことを始めた。  小説になろうで『AN@CHY』名義で投稿している、同タイトルをアルファポリスにも投稿させていただきます。  向こうの小説を多少修正して投稿しています。  修正をかけながらなので更新ペースは不明です。

さようなら、私の初恋。あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。

ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。 彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。 「誰も、お前なんか必要としていない」 最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。 だけどそれも、意味のないことだったのだ。 彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。 なぜ時が戻ったのかは分からない。 それでも、ひとつだけ確かなことがある。 あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。 私は、私の生きたいように生きます。

拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~

志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、ひょんなことで死亡した僕、シアンは異世界にいつの間にか転生していた。 とは言え、赤子からではなくある程度成長した肉体だったので、のんびり過ごすために自給自足の生活をしていたのだが、そんな生活の最中で、あるメイドゴーレムを拾った。 …‥‥でもね、なんだろうこのメイド、チートすぎるというか、スペックがヤヴァイ。 「これもご主人様のためなのデス」「いや、やり過ぎだからね!?」 これは、そんな大変な毎日を送る羽目になってしまった後悔の話でもある‥‥‥いやまぁ、別に良いんだけどね(諦め) 小説家になろう様でも投稿しています。感想・ご指摘も受け付けますので、どうぞお楽しみに。

処理中です...