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第29話 広島県① 広島平和記念公園、お好み焼き

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 昨日は岡山県の名物を食べたあと、相変わらずちょっと高級なホテルにて就寝した。そして今日からは広島県へと突入する。本当は岡山県の美観地区にある倉敷に行ってもよかったのだが、あそこも少し古い町並みが有名で、ミルネさんにとってはそこまで興味がある場所ではないと思うからな。

 映画のロケ地になったり、昔の光景を見ながら渡し船で川下りなんかもできるから、岡山観光をするならおすすめだぞ。



「ここは平和記念公園だよ。人類の平和を願い、過去の過ちを繰り返さないことを目的に作られた公園だね」

 1945年8月6日、広島市に原子爆弾が投下された。原子爆弾の威力はすさまじいもので、たった一発の爆弾によりとてつもなく大きな被害が出てしまった。もう二度とこのような歴史を繰り返さないためにも、戦争の悲惨さを決して忘れてはいけない。

「たったの一撃でこれほどの威力があるのじゃな。妾の世界にある極大魔法のレベルではないのう……」

 公園を回って折り鶴や平和の池、祈りの泉、記念碑などを見て回ったあとに、広島平和記念資料館へとやってきた。ここでは被爆者の遺品や被爆の惨状を映す写真や資料を展示している。

 高熱により皮膚が焼けただれた人の姿の人形、人の影が映った壁、溶けてしまったビンなどといった資料が、原子爆弾という兵器の威力の凄まじいさを物語っている。

 極大魔法とかいう単語も恐ろしいが、それでも原子爆弾には敵わないようだ。それに原子爆弾で恐ろしいのは爆弾の威力だけではなく、そのあとの放射能の被害もだからな。

「異世界との扉がつながった時に、この世界の者と戦争にならなくて良かったのじゃ……」

「本当にその通りですね」

「うん。戦争なんてないのが一番だよ」

 こちらの世界と異世界への扉が繋がった際に争いごとへと発展しなかったのは本当に僥倖であった。下手をしたら、魔法文明と科学文明との大戦争が勃発していてもおかしくはなかったからな。

 こうやって交換留学としていろんな場所を巡ったり、おいしいものを食べるだけで充分だよ。

 小学生のころは学校の図書館に原子爆弾の悲惨さを描いた『はだしのゲン』という漫画が置いてあったが、子供ながらに本当に考えさせられる漫画だったので、読んだことのない人はぜひとも読んでほしい漫画である。

「う~む、こちらの世界の丈夫な建物がこうまでなるとはのう……」

「元々は物産展なんかを行っていた場所らしいよ。驚くことにほとんど当時のままの状態で保存されているんだって。大きな建物でもこのありさまだから、普通の家なんてバラバラに吹っ飛ぶわけだよ」

 広島平和記念資料館を出て、原爆ドームへとやってきた。ここ原爆ドームは日本の世界遺産にも登録されている。他の家などは粉々に吹き飛んで周囲は瓦礫の山となっていたそうだ。

 日本を一周するなら、日本の素晴らしい文化や綺麗な観光名所を回るだけではなく、こういった勉強をすることも大事である。





「さて、しっかりと勉強もしたことだし、腹ごしらえをするとしよう!」

「「………………」」

 俺が以前ここに来た時もそうだったのだが、こういった戦争の悲惨さを目の当たりにすると、なんとなくだが少し気落ちしてしまう。

 戦争の悲惨さを学ぶことも大切だが、今を楽しむことも大切である。

「これが広島風お好み焼きですか」

「はい、喜屋武さんダウト! 広島焼きとか広島風お好み焼きとかいうのは広島県民にはよく思われないからね!」

「そうなんですか?」

「広島県で出てくるお好み焼きはこっちのほうが基本だから、なんでお好み焼きの前に広島風を付けるんだと怒る人もいるらしいよ」

 今は隠密魔法があるからいいが、もしも聞こえていたらいい顔はされないと思う。店の人はそれくらいで怒ったりはしないと思うが、地元の人はあまりいい気がしない可能性もあるからな。

「うむ、それだけ自分の生まれ育った故郷を愛しているということじゃな!」

「そういうことだね。他にも地元のスポーツチームの熱狂的なファンがいたりもするよ」

 広島と言えば、広島東洋カープの野球チームが有名だが、昔からこのチームの熱狂的なファンが多くいるらしい。嘘か本当か分からないが、担任の先生が大のカープファンで、昨日カープが勝ったから今日は宿題なし、負けたから今日は宿題倍なんてこともあったりするとか。

「ほう、大阪のお好み焼きとは違って麺が入っているのじゃな!」

 広島のお好み焼きと大阪のお好み焼きでは結構違う点がある。生地の違い、キャベツの切り方の違い、麺の有無、焼き方の違い、ソースの違いなど様々だ。特に大きな違いは麺の有無だ。広島のお好み焼きには基本麺が入っている。

「大阪で食べたものとはまた違っていておいしいですね。ソースは少し甘口みたいです」

 大阪は辛口のソースを使うのに対して、広島は甘口ソースを使用する。広島もソースにはこだわりがあって、有名なオタフクソースだけでなく、カープソース、ミツワソース、テングソース、広島ぢゃけんといった様々なソースがある。

 広島県民はソースが好きで、ハンバーグや天ぷらにまでソースをかけると聞いたぞ。

「同じお好み焼きでも味が結構違うよね。俺はどっちも同じくらい好きかなあ」

 関東のほうだと広島のお好み焼きを出しているお店は少ないから、こっちのお好み焼きは貴重なんだよ。細かく切ったキャベツやなどを鉄板に押し当てて焼いていくため、1枚でも結構なボリュームがあるんだよね。

 うむ、歴史的な勉強も大事だが、食の勉強も大事である。
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