いじめられて死のうとしていた俺が大魔導士の力を継承し、異世界と日本を行き来する

タジリユウ

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第105話 フルーツサンド

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「ふう~ご馳走様。どれも全部うまかったな!」

「ええ、ひとつひとつがとても美味しかったですわね。これでこの後のダンジョン探索もはかどりますわ!」

「お口にあって何よりです。それじゃあ最後にこれをひとつずつどうぞ」

 用意していたサンドイッチのほとんどを食べ終えたあと、最後にひとつずつ先程までの4種類とは別のサンドイッチをみんなに渡す。

「あ、甘いニャ!!」
 
「っ! すごいな、こんな甘い食べ物を食べたのは初めてだ!」

「ホー!」

 最後にひとつずつ渡したサンドイッチの中身は生クリームとフルーツのいわゆるフルーツサンドだ。

 俺も最初はフルーツサンドなんてサンドイッチとは呼べない邪道なものだと思っていたのだが、実際に食べてみると、クリームとフルーツとパンのすべてが合わさって本当に美味しかったのだ。

 唯一の欠点としては材料に果物や生クリームを使っているので、他のサンドイッチよりもだいぶ高価になってしまうということだな。

 そのため今回のお昼休憩ではひとりひとつだけになる。まあ最後のデザートにはぴったりだろう。

「……あの、これはひとつしかないのでしょうか?」

 ルルネさんがおかわりをご所望とは珍しい。ルルネさんはこのパーティの中では一番少食で、結構遠慮するタイプだったのに。よっぽどフルーツサンドが気に入ったのだろうか。

「一応まだあるんですけど、そっちは明日と明後日の分なんですよね。夜も食後にフルーツサンドよりも甘いお菓子を出しますので、お昼はこれくらいにしておきましょうか」

「っ!! これよりも甘いお菓子があるのですか!? わかりました。午後は十分に運動をして、お腹を減らせておきますわ!」

「ルルネは甘いものが大好きだニャ。でもこれは本当に甘くて美味しかったニャ!」

「よし、マサヨシ兄さんのおかげでやる気も出たし、午後も頑張るとするか!」
 
「「「おー!!」」」



 昼休憩を終えてダンジョン探索を再開する。午後はルルネさんが張り切ってくれたおかげでダンジョンの進み具合がだいぶ早くなった。

 張り切りすぎて魔力切れにならないか少し心配になったが、いざとなったら魔力の回復を早める高価なポーションを使うから大丈夫だと言っていた。いや、なにもそこまでしなくても……

 階層を降りるにつれて魔物も少しずつ強くなってきたが、リリスさん達にはまだまだ余裕がありそうだった。とはいえここはダンジョンの中、一瞬の油断で命を落とす危険もあるから油断は禁物だ。

 ダンジョンの中に出てくる魔物も、階層を降りるにつれてネズミやコウモリ型の魔物の他に、蛾やイモムシやクモ型の魔物などが出てくるようになった。

 ……微妙に気持ち悪い魔物ばかりなんだよな。それにどの魔物も食用にもならないし、たいした素材にもならない。このダンジョンの人気がないわけだよ。

「うわ! ク、クモの魔物だけは苦手なんだ! 頼むから近付けさせないでくれ!」

「ノノハはクモが苦手なんですよ」

「へえ~。ちょっと意外ですね」

 大きな盾を持ち、常に前に出てパーティメンバーを守っているノノハさんにも苦手なものがあるらしい。

 リリスさんと同じでいつもは強気な性格であるノノハさんにも苦手なものがあるというのは驚きだ。いつも凛とした態度で前に出ているノノハさんがクモ型の魔物に怯えてみんなの後ろに隠れている姿はちょっと可愛らしい。



「……ちょっと待つニャ。この奥に罠があるニャ!」

 順調に探索が進み、5階層にまでやってきた。先程までと同じようにフロア内の魔物を倒して次のフロアに進む通路で、先頭を進むネネアさんがみんなを止めた。

 ……確かによく見ると通路の奥の床が少し盛り上がっているようにも見える。すごいな、ちゃんと見ないと見逃してしまう。

「……すごいな、よくわかりますね」

「罠察知系のスキルを持っているニャ!」

 なるほど、罠を看破するようなスキルもあったのか。大魔導士から継承したスキルにはなかったな。もしかしたら踏む直前に危機察知スキルは発動するかもしれない。
 
「このフロアから罠も出始めたか。より慎重に進まないといけないぞ」

「ええ、気をつけて進まないといけませんね」

「ちなみに罠って踏むとどうなるんですか?」

 少し気になったので聞いてみた。さすがに即死系の罠とかはないよね?

「そういえばマサヨシ兄さんはダンジョン初めてだったか。このレベルのダンジョンだとトラバサミや木の弓矢、上から石が落ちてくるとかそのレベルが多いかな。

 もっと下の階層があるダンジョンだと周囲の魔物を呼び出す警報、麻痺や毒ガス、その階層のどこかにバラバラに転移させる凶悪な罠とかもあるな」

 なにそれ怖い……

 某ダンジョンゲームの罠よりも酷いかもな。後衛がひとりだけ転移させられたら結構絶望的な状況だぞ。



 ダンジョン自体も階層を降りる度に広くなっていき、罠の警戒もするようになったため、最初の階層と比べてだいぶ探索のペースが落ちてきた。

「よし、この安全地帯で食事と睡眠を取ろう。この規模のダンジョンならおそらく15階層くらいだろ。最短で10階層がボスの可能性もあるが、一度休憩を入れておいたほうがいい」

「賛成だ」

「賛成ですわ」

「疲れたニャ」

 ダンジョンの攻略を始めてから7回階段を降りたので、現在は8階層目にいるはずだ。ちょうどこの階層にも魔物がいない安全地帯があったので、ここで長めの休憩を取るらしい。どうやらダンジョンの最下層は5階層区切りになっているようだな。

 相変わらず仕組みはわからないが、ダンジョン内は一定の明るさに保たれているので、今の時間がわからない。こっそりスマホの時計を見たが現在の時刻は19時過ぎだった。

 数日だったら問題ないが、ダンジョンに1週間以上いると時間感覚がおかしくなりそうだな。

 幸い今日の探索では誰も大きな怪我をしていない。魔物の数は多いが、Aランク冒険者であるリリスさん達にはまだ余裕があるように見えた。とはいえ一瞬の油断が命取りになるダンジョンだ。しっかりと身体を休めることも必要だな。
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