104 / 189
第104話 昼休憩
しおりを挟む「おらあ!」
「うら!」
「ニャ!」
いよいよダンジョン攻略が始まった。疾風迅雷パーティがダンジョンの中に入っていってから10分後、俺達も遅れてダンジョンの中に入っている。
すでにシルビアの街に来る馬車の中でダンジョンをどのように進むかはみんなで話してある。基本的にはリリスさん、ノノハさん、ネネアさんが前に出て戦闘を行っていく。そしてルルネさんが後衛で魔法を使いみんなのサポートをしていく。
俺はというとみんなのサポートくらいである。今回の依頼はもともとリリスさん達が受けたということもあって、できる限りは自分達で進めていきたいとのことだ。
更には疾風迅雷パーティと勝負をすることもあって、基本的には俺の力は借りないつもりらしい。今のところは収納魔法でみんなの荷物を持つくらいだな。とはいえせっかくのダンジョン探索なので、多少は下級魔法を使って魔物の数を減らしていく。
「やっぱり出てくる魔物は強くはないが、とにかく数が多いな。ルルネ、魔法は何かあった時のために節約しておいてくれよ」
「ええ、わかっておりますわ!」
やはり昨日と同じようにかなりの数の魔物がフロアを進むたびに出てくる。ルルネさんの魔法は最小限にして温存しておくようだ。
「……次のフロアに入っても問題なさそうニャ」
「ネネア、少しだけ待ってください。今マッピングをしておりますわ」
感覚の優れたネネアさんが先頭を進み、先のフロアの状況を確認したり、罠がないかを確認する斥候の役割を担っている。ルルネさんは迷ったりしないようにダンジョンのフロアをマッピングしている。
さすがAランク冒険者パーティ、普通の依頼とは異なるダンジョン攻略も手慣れたものだった。うん、俺がいる必要もまったくなさそうだ。
途中までは疾風迅雷パーティが倒したと思われるネズミやコウモリ型の魔物の死骸がフロア内に放置されていた。
向こうのパーティもこちらと同じで倒した魔物の素材は剥ぎ取らないで先に進むようだ。放っておくとこの魔物達の死骸は自然にダンジョンに吸収されるらしい。
「……前に魔物の死骸がなくなったな。どうやらあいつらとは違う道を進んでいるようだな」
「マッピングは問題ありませんわ。下の階層へ続く階段を見つけるのは、各パーティの運次第のところもありますからね」
「おっ、ようやく下の階層への階段があったみたいだぞ」
ダンジョンに入ってから1時間ほど時間が過ぎたあと、ようやく初めて下の階層へ繋がる階段が現れた。
最初の階層という割にはかなり広く、各フロアや通路に魔物が多くいるため、なかなか時間が経ってしまっていた。戦闘に関してはまったく問題がなく、4人のチームワークで、すでに何十体もの魔物を倒してきている。
みんな戦闘もダンジョン攻略に対しても冷静に対処している。よかった、攻略を焦って怪我をするみたいなことはこの4人に限ってはないようだな。
「今のところ問題なさそうだな。この調子で進んでいくぞ」
そして続く2階層も問題なく進み、3階層へと進んできた。
「このフロアに魔物はいないニャ」
今まで進んできたフロアには必ず数体~数十体の魔物がいたのだが、なぜかこのフロアには魔物がいないようだ。
「どうやらここは安全地帯のようですわね。ダンジョンの中にはところどころに魔物が入ってこられないフロアがありますわ」
おお、探索している者にとってはありがたい仕様だな。ダンジョンが人を誘い込んでいるから、ある程度は探索する者が休めるスペースもあるわけか。
しかし考えれば考えるほど、ダンジョンはすごい仕組みになっている。こんな地中深くにこの規模の大きな施設を作ることは元の世界の技術でも難しそうだ。
これで小さなダンジョンというから驚きだ。ここよりも大きなダンジョンでは、ダンジョンの中に森の階層があったり、暑い階層や寒い階層まであるらしい。
「よし、ここで少し休憩するとしよう。この安全地帯なら、ある程度は警戒を緩めることができるからな」
「そうだな。一度武器のほうも手入れしておきたいし、腹ごしらえもしておいたほうがいいぜ」
「いっぱい運動したから、お腹すいたニャ!」
どうやらこの安全地帯で一度休憩を入れるようだ。すでにダンジョン攻略を始めてから4時間ほどが経過している。確かにお腹も空いてきた。
「マサヨシ、昼食と武器の手入れ道具を出してもらってもいいか?」
「ええ、もちろん」
収納魔法で収納しておいた昼食と武器の手入れ道具を取り出す。ダンジョンの中で収納魔法を使用できることはすでに確認している。
さて、今日のお昼は昨日の夜のうちに作っておいたサンドイッチだ。今日の朝にリリスさん達にはダンジョン内の食事は任せてほしいと伝えている。
ダンジョン内での昼食は手軽食べられるものがよいということで、サンドイッチにしてみた。おにぎりと少し迷ったのだが、この異世界ではあまり米は見かけていないのでパンのこちらにした。
中身はたまご、ハム野菜、ツナ、カツの4種類だ。サンドイッチを自分で作るのなんて久しぶりだった。昔は小学校の遠足とかで、母さんが楽しそうに作っているのを見て自分から手伝ったりしていたな。
「へえ~色とりどりで綺麗だな。全部マサヨシが作ってくれたのか?」
「ええ。いろんな味を作ってみたので試してみてください」
「こんなにいっぱい作るのは大変だったのではないですか?」
「いえ、それほど時間はかからなかったですよ」
実際サンドイッチは具材さえ作ってしまえば、あとは挟んで半分に切ればいいだけだから、他の料理と比べて比較的簡単だったりする。
「お、これは茹でた卵か! 少し酸味があってまろやかなソースと一緒になっていてうまいな!」
「こっちは薄いお肉と野菜だニャ! それにパン自体も柔らかくてとっても美味しいニャ!」
「こっちはなんだ? 魚のような味だがそうでもないような。なんにしてもうまいな」
「こちらは以前にいただいたカツという料理をパンに挟んだのですね! ソースがパンにしみていてとても美味しいですわ!」
「ホー!」
うん、簡単に作った割にはどれも好評でよかった。たまには手作りのサイドイッチもいいものだな。
24
お気に入りに追加
2,766
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】
その攻撃、収納する――――ッ!
【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。
理由は、マジックバッグを手に入れたから。
マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。
これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

職業・遊び人となったら追放されたけれど、追放先で覚醒し無双しちゃいました!
よっしぃ
ファンタジー
この物語は、通常1つの職業を選定する所を、一つ目で遊び人を選定してしまい何とか別の職業を、と思い3つとも遊び人を選定してしまったデルクが、成長して無双する話。
10歳を過ぎると皆教会へ赴き、自身の職業を選定してもらうが、デルク・コーネインはここでまさかの遊び人になってしまう。最高3つの職業を選べるが、その分成長速度が遅くなるも、2つ目を選定。
ここでも前代未聞の遊び人。止められるも3度目の正直で挑むも結果は遊び人。
同年代の連中は皆良い職業を選定してもらい、どんどん成長していく。
皆に馬鹿にされ、蔑まれ、馬鹿にされ、それでも何とかレベル上げを行うデルク。
こんな中2年ほど経って、12歳になった頃、1歳年下の11歳の1人の少女セシル・ヴァウテルスと出会う。凄い職業を得たが、成長が遅すぎると見捨てられた彼女。そんな2人がダンジョンで出会い、脱出不可能といわれているダンジョン下層からの脱出を、2人で成長していく事で不可能を可能にしていく。
そんな中2人を馬鹿にし、死地に追い込んだ同年代の連中や年上の冒険者は、中層への攻略を急ぐあまり、成長速度の遅い上位職を得たデルクの幼馴染の2人をダンジョンの大穴に突き落とし排除してしまう。
しかし奇跡的にもデルクはこの2人の命を救う事ができ、セシルを含めた4人で辛うじてダンジョンを脱出。
その後自分達をこんな所に追い込んだ連中と対峙する事になるが、ダンジョン下層で成長した4人にかなう冒険者はおらず、自らの愚かな行為に自滅してしまう。
そして、成長した遊び人の職業、実は成長すればどんな職業へもジョブチェンジできる最高の職業でした!
更に未だかつて同じ職業を3つ引いた人物がいなかったために、その結果がどうなるかわかっていなかった事もあり、その結果がとんでもない事になる。
これはのちに伝説となる4人を中心とする成長物語。
ダンジョン脱出までは辛抱の連続ですが、その後はざまぁな展開が待っています。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる
僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。
スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。
だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。
それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。
色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。
しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。
ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。
一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。
土曜日以外は毎日投稿してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる