いじめられて死のうとしていた俺が大魔導士の力を継承し、異世界と日本を行き来する

タジリユウ

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第104話 昼休憩

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「おらあ!」

「うら!」

「ニャ!」

 いよいよダンジョン攻略が始まった。疾風迅雷パーティがダンジョンの中に入っていってから10分後、俺達も遅れてダンジョンの中に入っている。

 すでにシルビアの街に来る馬車の中でダンジョンをどのように進むかはみんなで話してある。基本的にはリリスさん、ノノハさん、ネネアさんが前に出て戦闘を行っていく。そしてルルネさんが後衛で魔法を使いみんなのサポートをしていく。

 俺はというとみんなのサポートくらいである。今回の依頼はもともとリリスさん達が受けたということもあって、できる限りは自分達で進めていきたいとのことだ。

 更には疾風迅雷パーティと勝負をすることもあって、基本的には俺の力は借りないつもりらしい。今のところは収納魔法でみんなの荷物を持つくらいだな。とはいえせっかくのダンジョン探索なので、多少は下級魔法を使って魔物の数を減らしていく。

「やっぱり出てくる魔物は強くはないが、とにかく数が多いな。ルルネ、魔法は何かあった時のために節約しておいてくれよ」

「ええ、わかっておりますわ!」

 やはり昨日と同じようにかなりの数の魔物がフロアを進むたびに出てくる。ルルネさんの魔法は最小限にして温存しておくようだ。

「……次のフロアに入っても問題なさそうニャ」

「ネネア、少しだけ待ってください。今マッピングをしておりますわ」

 感覚の優れたネネアさんが先頭を進み、先のフロアの状況を確認したり、罠がないかを確認する斥候の役割を担っている。ルルネさんは迷ったりしないようにダンジョンのフロアをマッピングしている。

 さすがAランク冒険者パーティ、普通の依頼とは異なるダンジョン攻略も手慣れたものだった。うん、俺がいる必要もまったくなさそうだ。

 途中までは疾風迅雷パーティが倒したと思われるネズミやコウモリ型の魔物の死骸がフロア内に放置されていた。

 向こうのパーティもこちらと同じで倒した魔物の素材は剥ぎ取らないで先に進むようだ。放っておくとこの魔物達の死骸は自然にダンジョンに吸収されるらしい。

「……前に魔物の死骸がなくなったな。どうやらあいつらとは違う道を進んでいるようだな」

「マッピングは問題ありませんわ。下の階層へ続く階段を見つけるのは、各パーティの運次第のところもありますからね」

「おっ、ようやく下の階層への階段があったみたいだぞ」

 ダンジョンに入ってから1時間ほど時間が過ぎたあと、ようやく初めて下の階層へ繋がる階段が現れた。

 最初の階層という割にはかなり広く、各フロアや通路に魔物が多くいるため、なかなか時間が経ってしまっていた。戦闘に関してはまったく問題がなく、4人のチームワークで、すでに何十体もの魔物を倒してきている。

 みんな戦闘もダンジョン攻略に対しても冷静に対処している。よかった、攻略を焦って怪我をするみたいなことはこの4人に限ってはないようだな。

「今のところ問題なさそうだな。この調子で進んでいくぞ」



 そして続く2階層も問題なく進み、3階層へと進んできた。

「このフロアに魔物はいないニャ」

 今まで進んできたフロアには必ず数体~数十体の魔物がいたのだが、なぜかこのフロアには魔物がいないようだ。

「どうやらここは安全地帯のようですわね。ダンジョンの中にはところどころに魔物が入ってこられないフロアがありますわ」

 おお、探索している者にとってはありがたい仕様だな。ダンジョンが人を誘い込んでいるから、ある程度は探索する者が休めるスペースもあるわけか。

 しかし考えれば考えるほど、ダンジョンはすごい仕組みになっている。こんな地中深くにこの規模の大きな施設を作ることは元の世界の技術でも難しそうだ。

 これで小さなダンジョンというから驚きだ。ここよりも大きなダンジョンでは、ダンジョンの中に森の階層があったり、暑い階層や寒い階層まであるらしい。

「よし、ここで少し休憩するとしよう。この安全地帯なら、ある程度は警戒を緩めることができるからな」

「そうだな。一度武器のほうも手入れしておきたいし、腹ごしらえもしておいたほうがいいぜ」

「いっぱい運動したから、お腹すいたニャ!」

 どうやらこの安全地帯で一度休憩を入れるようだ。すでにダンジョン攻略を始めてから4時間ほどが経過している。確かにお腹も空いてきた。

「マサヨシ、昼食と武器の手入れ道具を出してもらってもいいか?」

「ええ、もちろん」

 収納魔法で収納しておいた昼食と武器の手入れ道具を取り出す。ダンジョンの中で収納魔法を使用できることはすでに確認している。

 さて、今日のお昼は昨日の夜のうちに作っておいたサンドイッチだ。今日の朝にリリスさん達にはダンジョン内の食事は任せてほしいと伝えている。

 ダンジョン内での昼食は手軽食べられるものがよいということで、サンドイッチにしてみた。おにぎりと少し迷ったのだが、この異世界ではあまり米は見かけていないのでパンのこちらにした。

 中身はたまご、ハム野菜、ツナ、カツの4種類だ。サンドイッチを自分で作るのなんて久しぶりだった。昔は小学校の遠足とかで、母さんが楽しそうに作っているのを見て自分から手伝ったりしていたな。

「へえ~色とりどりで綺麗だな。全部マサヨシが作ってくれたのか?」

「ええ。いろんな味を作ってみたので試してみてください」

「こんなにいっぱい作るのは大変だったのではないですか?」

「いえ、それほど時間はかからなかったですよ」

 実際サンドイッチは具材さえ作ってしまえば、あとは挟んで半分に切ればいいだけだから、他の料理と比べて比較的簡単だったりする。

「お、これは茹でた卵か! 少し酸味があってまろやかなソースと一緒になっていてうまいな!」

「こっちは薄いお肉と野菜だニャ! それにパン自体も柔らかくてとっても美味しいニャ!」

「こっちはなんだ? 魚のような味だがそうでもないような。なんにしてもうまいな」

「こちらは以前にいただいたカツという料理をパンに挟んだのですね! ソースがパンにしみていてとても美味しいですわ!」

「ホー!」

 うん、簡単に作った割にはどれも好評でよかった。たまには手作りのサイドイッチもいいものだな。
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