異種族キャンプで全力スローライフを執行する……予定!

タジリユウ

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第5章 いろんな客とトラブルがやってきた!?

第270話 吸血鬼

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 吸血鬼――あるいはヴァンパイア。

 元の世界の民話や伝承では生き物の血を吸い栄養源とし、蘇った死人または不死の存在だったはずだ。さすがに人の血を吸ったりする種族をキャンプ場へ向かい入れることはできないのだが……

「す、すみません。さすがに人の血を吸ってしまう種族はちょっと……」

「何を言っているのじゃ、ユウスケ? 吸血鬼は人の血なんて吸わんぞ?」

「えっ、そうなの!?」

「うむ、昔はそのような誤った情報が広まっておったらしいのう。吸血鬼は一部の魔物の血しか吸わないらしいぞ」

「オ、オブリさん!? いつの間に!」

「あっ、村長」

 俺たちが話していると、いつの間にかオブリさんが隣にいた。サンドラが友達を連れてきたと伝えていたから、様子を見に来たのか。オブリさんはいろんなことに興味深々だからな。

「うむ。オブリの言う通り、アンネルは人など襲わんぞ」

「ごめん、サンドラ。アンネルさんも申し訳ないです。俺の故郷だと吸血鬼は人の血を吸うと聞いていたもので……」

 なんなら人の血を吸って眷属にしたりするとも思っていた。ヴァンパイアと聞くと、人を害するようなイメージが強かったのだが、こちらの世界の吸血鬼は人を襲ったりはしないみたいだ。

 それに陽の光も大丈夫なようだな。今は昼過ぎで日光は強いが、外に出歩いていても問題はないらしい。……いや、もしかしたら吸血鬼の中でも高位の者だけとかいう話もありそうだ。

「……別に構わない」

 アンネルさんは特に怒った様子もなく、淡々とした表情をしている。なかなかアンネルさんの感情は読み取りにくいかもしれない。

「ユウスケやオブリやサリアはサンドラの友達?」

「そうですね。少し前から仲良くさせてもらっております」

「うむ。儂もサンドラ殿とは仲良くさせてもらっておるぞ」

「はい、サンドラさんは友達です!」

 アンネルさんの質問に俺や2人が答える。サンドラと出会ってからだいぶたったし、もう友達と言っても過言ではないだろう。

「な、なんじゃみんなして、改まって!?」

 はっきりと友達と言葉にするのは恥ずかしいのか、顔を赤くしながら照れているサンドラ。普段は堂々とした姿を見せようとしている古代竜だが、可愛いところもあるじゃないか。

「……サンドラに友達がいるって本当だったんだ」

「アンネル、お主は喧嘩を売っておるのか!」

 ガルルと口にしそうな感じでアンネルさんに詰め寄るサンドラ。

 ……すまん、実は俺もつい先日までサンドラは孤高のボッチだと思い込んでいたんだ。あれほどの力を持った古代竜と一緒にいられる者はそういないと思っていた。

「さあ、それでは中へどうぞ」

 人を襲わないようなら問題はなさそうだ。これ以上キャンプ場の入口で立ち話もなんだから、中へ案内するとしよう。



「サンドラから聞いているかもしれませんが、このキャンプ場という施設には結界というものがあり、暴力行為などはできなくなっております。他の人に攻撃をするようなら、このキャンプ場には出入り禁止にさせていただきますので、ご注意ください」

「サンドラから聞いてる。そんな能力は今まで聞いたことがない」

「こちらにこのキャンプ場の所有する丸太があります。結界の能力で傷ひとつ付けることができないので、あとで試してみてください」

 うちのキャンプ場で初見の腕自慢の人たちに試してもらっている試し切り丸太くん1号を横に置いておく。

 結界の能力については半信半疑――どころか9割方疑っている人の方が多いので、腕自慢の冒険者が来た時には、実際に試してもらうことにしているから、いつも通りキャンプ場の入り口の小屋の備品室から持ってきた。

 まあ、普通に考えたらそんな能力があると信じられないのも当然か。

「分かった、あとで試してみる。……それにしても、この椅子はとても座り心地がいい」

「ありがとうございます。アウトドアチェアといって当キャンプ場自慢の椅子なんですよ。横のレバーを操作すると、後ろに倒すこともできるので、自分の好みの位置で固定してください」

 サンドラとアンネルさんをいつもサンドラが泊まっている場所へと案内をした。アンネルさんはサンドラと一緒に一泊するらしい。アンネルさんはお金を持っていないようなので、サンドラがアンネルさんの分の代金を出してくれた。

 サンドラはものすごく高価そうな武器や宝石や装飾品などを持っており、以前に換金したお金がそうとうあるからな。

 いつも通りテーブルとアウトドアチェアをセットすると、アンネルさんは興味深そうにアウトドアチェアへと座って、リクライニング部分を操作している。アウトドアチェアの中でもリクライニング機能が付いているやつはそこそこお高いが、良いキャンプギアなのである。

「それではユウスケ、いつも通りうまい料理を頼むぞ。妾には日本酒を、アンネルにはジュースを頼む」

「了解だ。アンネルさんは嫌いな食べ物なんかあったりしますか?」

「特にない。何でも大丈夫」

 どうやらアンネルさんはお酒が駄目だが、嫌いな食べ物はないみたいだ。

 ……吸血鬼というからにはニンニクが駄目とかあるかと思ったら、そんなことはないらしい。
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こちらの作品もよろしくお願いします!(o^^o)
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キャンピングカーで往く異世界徒然紀行
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