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ドライブでもしませんか?
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『元気?』
「うん、げんき……」
やっぱり彼の言葉をそのまま返すだけの私に、彼がほんの少し笑った音が耳に届く。
ふふ、と言う、彼のいつもの笑み。その表情を思い出してしまって、なぜだか急に顔が熱くなる。
『亜矢さん、今から、ヒマ……?』
「……え、っと……」
つき合っていた人とは一か月前に別れた。いまは残業にさえならなければ、毎日毎晩がヒマだ。けれどそんな恥ずかしい事情を自分から暴露できるはずもなく、見栄を張って言い淀んでみたりする。
『予定とかないなら、ドライブでもしませんか?』
「ドライブ……」
『うん』
この時間から……? きみの仕事は……? 今からが稼ぎ時だったりするんじゃないの……? それとも今日は、お休みなの……?
疑問ばかりが頭に浮かぶけれど、言葉には出来ずに全てを飲み込む。
『……イヤ?』
彼の言葉を聞くと同時に、悲しそうに眉尻を下げてシュンとしている彼の姿が脳裏に浮かんだ。
飼い犬の方のメープルも、私の体調が悪くて散歩に連れて行ってあげられない時とても悲しそうな表情をしていたっけ……。もっとも、弟に連れて行ってもらえると分かった途端、ブンブンと激しく尾っぽを振って喜んでいたけれど。
「えっと、……イヤじゃ、ない」
私が行くと言わなければ、もしかすると他の女性を誘ったりするんだろうか。私に尋ねたのと同じように、可愛い声音で小首を傾げて「イヤ?」なんて聞いたりするんだろうか……。犬のメープルみたいに、私じゃなくても、誰でも良かったりするんだろうか……。
そんな風に思ってしまって。そう思った次の瞬間には「イヤじゃない」と返事をしてしまっていた。
……どうかしてる。
五つも年下で、しかもチャラくて、もしかしてホストで……。全然、私の好みじゃない。そんな男の誘いに乗るなんて、本当にどうかしてる。
分かってるのに……。
夕飯も済ませて、なんならお風呂も済ませてた。テレビでニュースでも見ながら適当に時間を潰して、あとは寝るだけ。そんな状態で、これから外出……?
ほんと、どうかしてる。
まだ少し半乾きの髪を慌てて乾かして、念入りにブロー。さすがにこの時間からフルメイクをするのはイヤだから、ほんの少しだけ粉をはたいて、唇に淡めの色のリップをのせる。
私のこの派手な顔なら、目元メイクをしなくても結構ちゃんとメイクをしたように見えてしまうのがコワイ。
まじまじと鏡を見つめたあと、ビューラーで睫毛をくるんとカールさせた。たったこれだけでますます派手な顔になって、自分の顔が心底キライになりそうだ。
出来ればもっと可愛げのある顔が良かった、例えば後輩の若月ちゃんみたいな顔とか、同期の美紀みたいな。けれどもそれは無い物ねだりにしか過ぎなくて、私はこの派手な顔と一生付き合っていくしかない。
どうやっても彼女たちみたいにはなれない、整形する以外には。整形なんて現実的じゃないし、だからと言ってもうどうしようもないから本当に嫌になる。
「うん、げんき……」
やっぱり彼の言葉をそのまま返すだけの私に、彼がほんの少し笑った音が耳に届く。
ふふ、と言う、彼のいつもの笑み。その表情を思い出してしまって、なぜだか急に顔が熱くなる。
『亜矢さん、今から、ヒマ……?』
「……え、っと……」
つき合っていた人とは一か月前に別れた。いまは残業にさえならなければ、毎日毎晩がヒマだ。けれどそんな恥ずかしい事情を自分から暴露できるはずもなく、見栄を張って言い淀んでみたりする。
『予定とかないなら、ドライブでもしませんか?』
「ドライブ……」
『うん』
この時間から……? きみの仕事は……? 今からが稼ぎ時だったりするんじゃないの……? それとも今日は、お休みなの……?
疑問ばかりが頭に浮かぶけれど、言葉には出来ずに全てを飲み込む。
『……イヤ?』
彼の言葉を聞くと同時に、悲しそうに眉尻を下げてシュンとしている彼の姿が脳裏に浮かんだ。
飼い犬の方のメープルも、私の体調が悪くて散歩に連れて行ってあげられない時とても悲しそうな表情をしていたっけ……。もっとも、弟に連れて行ってもらえると分かった途端、ブンブンと激しく尾っぽを振って喜んでいたけれど。
「えっと、……イヤじゃ、ない」
私が行くと言わなければ、もしかすると他の女性を誘ったりするんだろうか。私に尋ねたのと同じように、可愛い声音で小首を傾げて「イヤ?」なんて聞いたりするんだろうか……。犬のメープルみたいに、私じゃなくても、誰でも良かったりするんだろうか……。
そんな風に思ってしまって。そう思った次の瞬間には「イヤじゃない」と返事をしてしまっていた。
……どうかしてる。
五つも年下で、しかもチャラくて、もしかしてホストで……。全然、私の好みじゃない。そんな男の誘いに乗るなんて、本当にどうかしてる。
分かってるのに……。
夕飯も済ませて、なんならお風呂も済ませてた。テレビでニュースでも見ながら適当に時間を潰して、あとは寝るだけ。そんな状態で、これから外出……?
ほんと、どうかしてる。
まだ少し半乾きの髪を慌てて乾かして、念入りにブロー。さすがにこの時間からフルメイクをするのはイヤだから、ほんの少しだけ粉をはたいて、唇に淡めの色のリップをのせる。
私のこの派手な顔なら、目元メイクをしなくても結構ちゃんとメイクをしたように見えてしまうのがコワイ。
まじまじと鏡を見つめたあと、ビューラーで睫毛をくるんとカールさせた。たったこれだけでますます派手な顔になって、自分の顔が心底キライになりそうだ。
出来ればもっと可愛げのある顔が良かった、例えば後輩の若月ちゃんみたいな顔とか、同期の美紀みたいな。けれどもそれは無い物ねだりにしか過ぎなくて、私はこの派手な顔と一生付き合っていくしかない。
どうやっても彼女たちみたいにはなれない、整形する以外には。整形なんて現実的じゃないし、だからと言ってもうどうしようもないから本当に嫌になる。
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