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【番外編】伊吹 side
10.
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――俺はかなりのショートスリーパーで、普段の睡眠時間は3~5時間だ。結麻さんと同時刻にベッドに入っても、眠れない。
それに、結麻さんの手料理を食べるためにかなり仕事をショートカットして帰宅しているので、その分の仕事をいつも寝る前にさばいていた。
ノートパソコンだとキーボードを叩く音がうるさい可能性があるから、隣で眠る結麻さんを起こしかねない。
その点、タブレット端末は優秀だ、多少効率は落ちるが、作業が出来ないわけではない。
結麻さんの可愛らしい寝息をBGMに仕事をする。
集中していくつかのタスクをこなし、結麻さんが動く気配で俺はタブレットから顔を上げた。
どうやら結麻さんが寝返りを打ったようだ。
はは、可愛い……。
思わず寝顔をじっくりと見てしまう。
少し寒いのか、こちら向きにコロリと転がった後、丸まるようにして眠っている。
「……結麻さん、寒いの?」
眠っている人に声を掛けるのは良くないと思いつつ、つい声を発してしまった。
俺の声に起きる様子はなく、更にキュッと丸くなる。
……猫みたいだ。
「寒いなら、こっちにおいで。暖かいよ……?」
懲りずに声を掛けると、「ん……」と可愛い声を出した結麻さんは、モゾモゾとこちらにすり寄ってくる。
ベッドの真ん中を少しこちらに過ぎたあたりで、再び背を向けて、丸くなってしまった。
「……」
可愛い。
思わず手が伸びる。
規則正しく寝息を立てている結麻さんを、そっと、後ろから抱き締める。
……暖かくて心地が良い。
「……おやすみ、結麻さん……」
彼女を抱き締めたまま、俺はゆっくりと、眠りに落ちた――。
――暖かい。
なぜだろう、と、まだ半分寝ている頭でぼんやりと考える。
……ああ、そうだ。
結麻さんと一緒に眠ったんだった……。
それも、寒そうに彼女が寝返りを打ったのを良いことに、後ろから抱き締めたまま。
良い匂いがする……。
昨夜は俺と同じシャンプーを使ったはずなのに、全く違う匂いに感じるのはなぜだろう。
まだ起きるには早い時間だ。
リビングの方で何か気配がして、ああそう言えば昨晩は母が泊まったのだった、と思い出す。
結麻さんを起こさないように気を付けて、ゆっくりとベッドから抜け出す。
リビングに母がいて、「邪魔するのは申し訳ないから、帰るわね」と言い残して帰って行った。
冬の日の出は遅いから、まだあたりは真っ暗だ。
寝室に戻ると、結麻さんがころりとこちらに転がった。まるで、こちらに寄れば暖かいと思ったのにそうでなかったことが不満だったかように、丸くなる。
俺はもう一度ベッドへ滑り込むと、再び結麻さんを後ろから抱き締めて、目を閉じた。
――少しだけうとうとしていただろうか。
結麻さんが動く気配で目が覚める。
身動きしようとして、抱き締められていることに気づいたのだろう、慌てているのが気配で分かる。
しばらく寝たふりをして様子を窺っていると、ふ、と笑うのが聞こえた。
「なにか、楽しい夢でもみた?」
訪ねると、ますます慌てる。
俺の腕からなんとか抜け出そうとするのを無視をし、もう少し眠ろう、と提案して狸寝入りをすると、彼女は諦めたのか、俺の腕にそっと手を添えた。
彼女から触れられることは、滅多にない。俺が本当に眠ってしまったと思っているのだろう。
「――出張、お疲れ様でした」
聞こえていないと思っているのだろうけれど、結麻さんにすっかりと密着した俺の耳は、彼女の可愛らしい声をちゃんと拾っていた……。
もう一度目覚めたあと、今後も一緒に眠ることをかなり強引にだが、了承してもらった。
毎朝、少し困ったように、恥ずかしそうにしている結麻さんが可愛くて仕方なくて、起きるのが心底嫌になったのは言うまでもない――。
それに、結麻さんの手料理を食べるためにかなり仕事をショートカットして帰宅しているので、その分の仕事をいつも寝る前にさばいていた。
ノートパソコンだとキーボードを叩く音がうるさい可能性があるから、隣で眠る結麻さんを起こしかねない。
その点、タブレット端末は優秀だ、多少効率は落ちるが、作業が出来ないわけではない。
結麻さんの可愛らしい寝息をBGMに仕事をする。
集中していくつかのタスクをこなし、結麻さんが動く気配で俺はタブレットから顔を上げた。
どうやら結麻さんが寝返りを打ったようだ。
はは、可愛い……。
思わず寝顔をじっくりと見てしまう。
少し寒いのか、こちら向きにコロリと転がった後、丸まるようにして眠っている。
「……結麻さん、寒いの?」
眠っている人に声を掛けるのは良くないと思いつつ、つい声を発してしまった。
俺の声に起きる様子はなく、更にキュッと丸くなる。
……猫みたいだ。
「寒いなら、こっちにおいで。暖かいよ……?」
懲りずに声を掛けると、「ん……」と可愛い声を出した結麻さんは、モゾモゾとこちらにすり寄ってくる。
ベッドの真ん中を少しこちらに過ぎたあたりで、再び背を向けて、丸くなってしまった。
「……」
可愛い。
思わず手が伸びる。
規則正しく寝息を立てている結麻さんを、そっと、後ろから抱き締める。
……暖かくて心地が良い。
「……おやすみ、結麻さん……」
彼女を抱き締めたまま、俺はゆっくりと、眠りに落ちた――。
――暖かい。
なぜだろう、と、まだ半分寝ている頭でぼんやりと考える。
……ああ、そうだ。
結麻さんと一緒に眠ったんだった……。
それも、寒そうに彼女が寝返りを打ったのを良いことに、後ろから抱き締めたまま。
良い匂いがする……。
昨夜は俺と同じシャンプーを使ったはずなのに、全く違う匂いに感じるのはなぜだろう。
まだ起きるには早い時間だ。
リビングの方で何か気配がして、ああそう言えば昨晩は母が泊まったのだった、と思い出す。
結麻さんを起こさないように気を付けて、ゆっくりとベッドから抜け出す。
リビングに母がいて、「邪魔するのは申し訳ないから、帰るわね」と言い残して帰って行った。
冬の日の出は遅いから、まだあたりは真っ暗だ。
寝室に戻ると、結麻さんがころりとこちらに転がった。まるで、こちらに寄れば暖かいと思ったのにそうでなかったことが不満だったかように、丸くなる。
俺はもう一度ベッドへ滑り込むと、再び結麻さんを後ろから抱き締めて、目を閉じた。
――少しだけうとうとしていただろうか。
結麻さんが動く気配で目が覚める。
身動きしようとして、抱き締められていることに気づいたのだろう、慌てているのが気配で分かる。
しばらく寝たふりをして様子を窺っていると、ふ、と笑うのが聞こえた。
「なにか、楽しい夢でもみた?」
訪ねると、ますます慌てる。
俺の腕からなんとか抜け出そうとするのを無視をし、もう少し眠ろう、と提案して狸寝入りをすると、彼女は諦めたのか、俺の腕にそっと手を添えた。
彼女から触れられることは、滅多にない。俺が本当に眠ってしまったと思っているのだろう。
「――出張、お疲れ様でした」
聞こえていないと思っているのだろうけれど、結麻さんにすっかりと密着した俺の耳は、彼女の可愛らしい声をちゃんと拾っていた……。
もう一度目覚めたあと、今後も一緒に眠ることをかなり強引にだが、了承してもらった。
毎朝、少し困ったように、恥ずかしそうにしている結麻さんが可愛くて仕方なくて、起きるのが心底嫌になったのは言うまでもない――。
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