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“そう言う女”
2.
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そんな皮肉な偶然は、私たち家族をバラバラにするのには十分だった。
母の不倫が分かり、すぐに両親は離婚することになった。
母は父と別れる間際まで、私のことを「泥棒猫」と罵ったし、父は私を引き取ったけれど、どこか私のことを疎ましく思っているような様子で、私に話しかけることはほとんどなかった。
父とふたりで暮らすようになって一ヶ月も経たないうちに父が恋人を連れて来て、一緒に住むようになった。
「この人と再婚を考えているんだ」
父の言葉に、私は言葉を失う。
そりゃあ、母は結構最低なことをしたけど、だからって離婚してすぐ他のひとと再婚なんて……。
そう思いはしたけど、口に出すことはなかった。
父に疎まれ始めていたけど、このときはまだ自分の居場所をなくすわけにはいかなかったから……。
再婚の話を聞かされた数日後、二人は本当に役所に結婚の届け出をしたらしい。
継母はとても若くて綺麗な人で、父との再婚後、すぐに妊娠が判明する。
すぐにお腹が目立ち始めたので、私が聞いた妊娠月数と実際とはおそらく違ったのだろう。
きっと父も、母との婚姻関係があるうちから今の継母と関係を持っていて、あの事件は父にとって渡りに船だったのかも知れない、と思う。
私は、と言うと――。
あの事件以来、男の人が極端に苦手になってしまった。
姿が見えるだけでもガタガタと震えるほどで、普通に授業を受けることも出来なくなって……。
学校を休むとお腹の大きい継母と二人きりになってしまうので、家に居づらくて――結果、保健室登校となった。
そんな私のことは、学校で随分噂されただろうと思う。
二年生の夏休み明け、明らかに様子がおかしい私のことを『暴漢に襲われた子』として扱う人が増えた。
具体的にどう言われていたのかは分からない。
影でこそこそと何かを囁く人たち、あからさまに私を挑発してくる上級生の男子、立場上は気にしていないように見せかけているけど私の身体を舐めるように見てくる年配の男性教師……。
ほんの一部の、そう言う態度をとる人だけが目についてしまう。
そして、私を見る誰もがそんな風に思ってるんじゃないかと、邪推してしまう……。
――本当に最低最悪な毎日だった。
その後、保健室の先生のすすめでカウンセラーの先生についてもらって話をするうちに、少しずつ、教室へも顔を出せるようになっていた。
だけどやっぱり普通に接することは出来なくて、ようやくほぼ毎日教室へ行けるようになったのは三年生になった頃。
仲の良い女友達が私を守ってくれるようになったからだ。
それが、以前に奥瀬くんから名前が挙がった、橋本香織と遠藤由里奈。
彼女たちが居なければ、私は未だにどこかに閉じこもっていたかも知れない。
どこへ行くにも二人が私を守ってくれて、相談に乗ってくれた。
彼女たちが居てくれたから、私の今がある。
二年生の時の担任が男性だったからずっとまともな進路相談ができなかったこともあって、志望校を共学の私立大学にしたままだった。
三年生になって、学校側の配慮で女性の担任になってやっと進路の相談が出来るようになったけれど、しばらくは共学の大学から変更せずにいたのは、そこに行きたい学部があったからだ。
それでもやっぱり男女共学の大学に進むのは心の負担が大きいだろうと先生から説得され、直前になって女子大の家政科へ行くことにした、と言うのが私の進路変更の真相だ。
当然、担任やカウンセラーの先生と、香織と由里奈しか事情を知らない。
母の不倫が分かり、すぐに両親は離婚することになった。
母は父と別れる間際まで、私のことを「泥棒猫」と罵ったし、父は私を引き取ったけれど、どこか私のことを疎ましく思っているような様子で、私に話しかけることはほとんどなかった。
父とふたりで暮らすようになって一ヶ月も経たないうちに父が恋人を連れて来て、一緒に住むようになった。
「この人と再婚を考えているんだ」
父の言葉に、私は言葉を失う。
そりゃあ、母は結構最低なことをしたけど、だからって離婚してすぐ他のひとと再婚なんて……。
そう思いはしたけど、口に出すことはなかった。
父に疎まれ始めていたけど、このときはまだ自分の居場所をなくすわけにはいかなかったから……。
再婚の話を聞かされた数日後、二人は本当に役所に結婚の届け出をしたらしい。
継母はとても若くて綺麗な人で、父との再婚後、すぐに妊娠が判明する。
すぐにお腹が目立ち始めたので、私が聞いた妊娠月数と実際とはおそらく違ったのだろう。
きっと父も、母との婚姻関係があるうちから今の継母と関係を持っていて、あの事件は父にとって渡りに船だったのかも知れない、と思う。
私は、と言うと――。
あの事件以来、男の人が極端に苦手になってしまった。
姿が見えるだけでもガタガタと震えるほどで、普通に授業を受けることも出来なくなって……。
学校を休むとお腹の大きい継母と二人きりになってしまうので、家に居づらくて――結果、保健室登校となった。
そんな私のことは、学校で随分噂されただろうと思う。
二年生の夏休み明け、明らかに様子がおかしい私のことを『暴漢に襲われた子』として扱う人が増えた。
具体的にどう言われていたのかは分からない。
影でこそこそと何かを囁く人たち、あからさまに私を挑発してくる上級生の男子、立場上は気にしていないように見せかけているけど私の身体を舐めるように見てくる年配の男性教師……。
ほんの一部の、そう言う態度をとる人だけが目についてしまう。
そして、私を見る誰もがそんな風に思ってるんじゃないかと、邪推してしまう……。
――本当に最低最悪な毎日だった。
その後、保健室の先生のすすめでカウンセラーの先生についてもらって話をするうちに、少しずつ、教室へも顔を出せるようになっていた。
だけどやっぱり普通に接することは出来なくて、ようやくほぼ毎日教室へ行けるようになったのは三年生になった頃。
仲の良い女友達が私を守ってくれるようになったからだ。
それが、以前に奥瀬くんから名前が挙がった、橋本香織と遠藤由里奈。
彼女たちが居なければ、私は未だにどこかに閉じこもっていたかも知れない。
どこへ行くにも二人が私を守ってくれて、相談に乗ってくれた。
彼女たちが居てくれたから、私の今がある。
二年生の時の担任が男性だったからずっとまともな進路相談ができなかったこともあって、志望校を共学の私立大学にしたままだった。
三年生になって、学校側の配慮で女性の担任になってやっと進路の相談が出来るようになったけれど、しばらくは共学の大学から変更せずにいたのは、そこに行きたい学部があったからだ。
それでもやっぱり男女共学の大学に進むのは心の負担が大きいだろうと先生から説得され、直前になって女子大の家政科へ行くことにした、と言うのが私の進路変更の真相だ。
当然、担任やカウンセラーの先生と、香織と由里奈しか事情を知らない。
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