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第五章 幸せに向かって

第六話 後説 考察勢のお知らせ

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 小休憩も終り、いよいよ奥さんの方の動画を見る事に、旦那さんでアレなら奥さんも騒がしいのでは?
 そんな期待と不安が混ざった顔の長谷川、対して荒野原は目を輝かせていた。

「なかなか凄かったねぇ~で、奥さんはどんな感じなのさ」
「では早速……これだ、ちなみに見ているシーンは同じだ」
「ほほう、あ、活動の名前は?」
「ああ、クラユリって名前だ」
「よしよし、では私のファンとやらの実力を見せてもらおうか」

 斬摩はパソコンを操作して2人の前に置いた。
 画面には地べたに座っている女性と、ふせんだらけのノートが何冊かある。
 旦那と同じく自分のリスナーと同時視聴をしているようだ。

『お、なんだなんだ? 斬銀とやりあう――ば、バカな! 私の推しが一撃だと!? 何故だ!? 私の考察ノートを出すときが来たな!』

 動画はスファーリアがやられたシーン、クラユリは積み上げられているノートを開いた。

『ふむ……そうか、スファーリアと風月に今は分かれているからな、元の状態なら負けんか、ヨシ!』
「え? あれって考察ノート?」
「いや……かなりのふせんと大量のノートだぞ?」
「結びの考察ガチ勢か、面白いじゃん……私が忘れてる設定も書かれてそう」
「ありうるな」
『盆踊りで封じられる神様ってなんやねん……は?』

 動画は縁がスファーリアに告白するシーンなのだが……

『おいまてぇい! 告白するとは聞いてへんでぇ!? 私の考察ノートに刺激与えるとはやるじゃねーか! って! 威勢が良い事言っといて死んどるぞ! 根性見せろ……は? 推しが告白に返事をした!? どうゆうこっちゃ!? おお!? 何か立ち上がったぞ? ここらへんは彼氏に聞いとこー……んんんんんんんんんんん!? 縁と推しが昔会っていただと!? 初情報じゃねーか!? つまり私のノートがまるまる書き換わる可能性が!? ふっははははは! ええぞええぞ! まるで石版を解読しているような楽しみだ! ほほう、界牙流二代目の技を使うとな? なるほど縁結びの神なら凄まじい威力だろう……うんうんなるほどな、これは情報が更新される』

 長谷川と荒野原が何か言う前にクラユリの情報量が多く、2人が何か言う暇が無かった。
 早口言葉の様に喋り、自作の考察ノートとにらめっこをしながら新しいノートに書く。
 事典を見ながら勉強する学生のようだ、やっている事はキャラクターの考察な訳だが。

「クラユリさんは考察勢なのね~」
「いやいや、すげぇ人だな……」
「で? この人達に何をすればいいの? 私達を好きだという熱意は伝わった、自キャラ好きと言われたらねぇ、長谷川君は?」
「俺も同じ意見だよ、まあ俺達が出来る事は少ないが……」
「いや、やってもらう事は簡単だ、サプライズでゲーム内のイベントに出でくれないかとな」
「ほうほうどんなのさ」
「運営が用意したささやかな五周年記念配信ってやつだ、シナリオは運営が用意する」
「ははん? おもしろそうじゃん」
「いいね」
「ってもまだ企画の企くらいしか決まってないがな……ってもこの企画自体半年後くらいなんだけどな」
「ならもうちょい先だね~」
「ああ、詳しい事はまた今度な」

 斬摩はお酒に手を付けると、長谷川君も手を付けた。
 これで運営としてのお願いが終わったからか、少しゆるい顔付きになる。

「ああそうだそうだ、今日のシナリオ誘ってくれてありがとうよ」
「どったのさ?」
「いや……普段の斬銀は殺伐としているんだよ」
「どゆこと?」
「傭兵だから基本的に血生臭い事が多い、大小はあるがな」
「今回は若者達に囲まれて楽しかった?」
「そうそう、簡単に言えば年寄りポジションというか……」
「ああ! つまりは強者感を出しつつ、誰かの助けになりたかったの?」
「……あれ? 斬銀は傭兵の育成にも力を入れてませんでした?」
「ああだが……学生キャラと基本的に交流しないからな」
「ああー基本的に依頼受けて、解決して報酬を貰うから?」
「そうそう、こう未来ある若者と絡む機会がね」
「お、だったら私にいい考えがある」
「んん? 何だ何だ」
「それはね~」

 こうして次に向けての話し合いが続くのだった。
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